【読後録】現代語訳 暗黒日記: 昭和十七年十二月~昭和二十年五月 | お気楽りーまんの気まぐれブログ

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久々の読後録。

清沢洌の大戦末期の日記「暗黒日記」を、中国大使も歴任した元商社マンの丹羽宇一郎により編集、現代語訳と解説を付したもの。

1990年の岩波文庫版を読んで以来だから30年ぶり。文庫版を横に置きながら抄録の箇所や表現の違ひも見ながら行きつ戻りつ。

 

外電や新聞記事の引用を交へながら世相を描く。威勢のいい記事からは、強硬論を望む世論に迎合して拡販を実現した新聞社のスタンスがはつきりと読み取れ、外電からは国内での本土決戦の掛け声をよそに覆しやうのない日本の劣勢と進む戦後構想が読み取れる。

章ごとに付された氏の解説は、人々の意識の分断、強硬論になりがちなネット世論が優勢な今の社会について、当時の社会、メンタリティーとの共通面から、その危うさを描く。

 

権力の監視者としてのジャーナリズムの存在は、その暴走を防ぐうへできはめて大切であること、「世論」の持つ危うさは商業メディアにより増幅されること、その危険は時代を問はないことにあらためて気づかされる。

ちよつと前に読んだ井手孫六による「抵抗の新聞人 桐生悠々」や、

加藤陽子による「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」でも感じたこと。

 

一度底本も読んでみたくなつた。