昨日から始まったK-Balletの夏公演『トリプルビル』

http://k-ballet.co.jp/performances/triplebill 

昨日のキャスト表がアップされていますが、「ラプソディ」「ウォルフガング」☆休憩☆「真夏の夜の夢」の順で
上演されるようです
ももクロカラー!

最初に「ラプソディ」で、観客の気持ちを一気に高揚させ、「ウォルフガング」で演技力やコミカルな面も見せ、
そして「真夏の夜の夢」を見て、幸せな気持ちのまま幕を降ろす・・・・きらきら!!きらきら!!きらきら!!

熊川ディレクターは、おそらくそんな流れをイメージされてるのではないかと思いますが、この公演のメインプロである
「ラプソディ」と「真夏の夜の夢」の振付をされた、英国ロイヤルの素晴らしい振付家であり芸術監督でもあった、
フレデリック・アシュトンについて、今日は思いをはせています。
特に久しぶりに生で見られる『ラプソディ』が楽しみなせいかもしれませんが

フレデリック・アシュトン



エクアドルのグアヤキルで英国人の外交官の4男として生まれたフレデリック・アシュトン。
彼の転機は、13歳の時でした。
ペルーで見た、アンナ・パブロワの踊りを見て、バレエを志す事を決意されたそうです




ロンドンの貿易会社に就職しながらも、両親に内緒であの『バレエ・リュス』で活躍されたレオニード・マシーンの
レッスンに通いながら、ついにはバレエスクールに入学されたそうですが、それは凄い努力だったのではないでしょうか。


その後、現在のロイヤルにあたるバレエ団に入団され、芸術監督としても振付家としても活躍
彼の後を継いだ、ご自身も最終的には沢山の名作を残されたケネス・マクミランですらも、一時は
英国人のアシュトンへの人気の高さと功績に押しつぶされ、精神的に参る時期もあったそうです!
(とはいえ、マクミランはもともと神経の細いタイプだったそうです・・・・ただ、だからこそ、アシュトンとは違う、
人間の悲哀が舞台からあふれるような作品や、ある意味人間の心の猟奇的な部分をも描けたのではないか?とも思うのですので、2人とも英国ロイヤルにとってはかけがえない存在だと思います)

アシュトンの作品もまた別の意味で多彩で、個性的
アシュトンスタイルという踊り方の独特ものはあるようですが、全体として見た時には、やはり多彩な
作品を残されてる・・・・と感じます。

『ラプソディ』のようなダンサーの肉体の限界に挑戦されたような、特にストーリーのないようなものもありますが、
さすが演劇の国だと納得させられた、シェークスピアの原作の台詞が聞こえてくるような、妖精の世界から
戻ってきたものしか描けないような美しい『真夏の夜の夢』
それに改訂ではありますが、コミカルで楽しさも笑いも呼ぶようなチャーミングな『リーズの結婚』
可愛くて可憐さもあり、でもジプシーダンスも楽しめる『二羽の鳩』
そして、フォンティーンとヌレエフのために創られた『椿姫』もまた色合いがまるで違う作品です。

この写真は、ギエムとニコラ・ル・リッシュの「椿姫」から・・・

そういえば、熊川さんがローザンヌでゴールドメダルを取られた時に踊ったボールを操りながら踊る
『田園の出来事』もアシュトン作品でした

『ラプソディ』を私が生で見て忘れられない舞台は、熊川さんとヴィヴィアナ・デュランテお2人の舞台でしたキラキラ

熊川さんが次々に繰り出す、凄すぎる怒涛のパやステップに本気で息が止まりそうになりながらも
ただただ、見惚れていた時間を昨日のことのように思い出します・・・・
(途中、本当に熊川さんが、空から降りてきたように思えた時は、文字通り、衝撃でした
人間の身体能力、そして美しい音楽との調和の限界を見せつけられたような凄い踊りは、ダウエルさんの
言葉をお借りすると「アシュトン卿にお見せしたかったです

ソロでは超絶技巧を惜しみなく見せながらも、ヴィヴィとの踊りでは、美しいラフマニノフの旋律に合わせ、
情感豊かに踊られるので、まさしく激しく美しく・・・・の連続で、本当に「舞台」というひとときの幸せな夢を
見てるような時間を過ごした事を何度となく思い出しています。


発売されているDVDの方で、熊川さんと踊られるのは、あの吉田都さんです

ヴィヴィとのしっとりした情感とはまた違う、息が合った2人の踊りはまた、別の魅力を感じます。
見るたびに幸せになるような美しい都さんの足さばき、そしてラストの決めポーズでは(内心2人ともクタクタでしょうに
でも2人そろって、どや!!って感じに見える楽しそうなポーズになるあたりも大好きで、かなりリピして見ています。

このDVDにはアンソニー・ダウエルさんの貴重なインタビューや、K-Balletが2004年にNYのメトロポリタンハウスで、
アシュトン生誕100周年を祝ったガラ公演で踊られた経緯なども見せてくれる特典映像も入ってるいるので、
私にとっては宝物の一つです

この公演の貴賓席には、かつて熊川哲也の憧れであり、アイドルであり、この作品の初演を踊った
ミハイル・バリシニコフが見に来られてたそうなので、熊川さんにとっても忘れられない公演だったと思います


Rhapsody [DVD]/熊川哲也,吉田都,Kバレエカンパニー
¥8,190
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『ラプソディ』は、そもそも英国女王の生誕80歳を祝うためのガラ公演として、アシュトンがミハイル・バリシニコフに
振付けた作品なので、まさしく選ばれた超絶技巧が踊れるダンサーのための特別な作品だと思います。

40歳になった熊川哲也がどう踊ってくれるのかはもちろんですが、やはり楽しみの方が先立ちます。
(熊川さんの前回公演の、あの凄いアリを見る限り、もちろん彼の踊り方に多少の変化はあっても、
彼の素晴らしいオーラや技術、観客に訴える力は健在。もちろん、踊りの流れの中で、抑揚こそできたものの、
成長してきたダンサーの中にあっても群を抜いて輝いていますっキラキラ
その技術をキープする力はもちろん、素晴らしく気迫あふれる踊りがどんな努力によって支えられてるのかは、
とても私にはわかりませんが・・・・

そして熊川ディレクターが、必死で伝えたであろう、この難解な作品を橋本さんや伊坂さんが
どう踊られるのか??は、率直な気持ちとしては不安も伴いつつも興味深く見守る事になりそうです。

残念ながら、キャラクテールも踊れる幅の広いダンサーになりそうな、伊坂さんの方の「ラプソディ」は見られないのですが

ただ、宮尾俊太郎君が以前「なう」でつぶやいていらしたように、目の前で素晴らしい見本を見せてもらえるという環境が、
たとえ厳しくあろうとも、贅沢だと感じられる心を持ち、ついてゆく努力と精進ができるのであれば、
それぞれの歩みのスピードは違うとは思いますが、確実にご自身の個性を大事にしながらもそれぞれの
輝きを身に着けてゆかれるのではないか・・・・と、願っています。
もちろん、厳しい世界であり一瞬のアクシデントで運命も変わる場合もありますが、それでも踊れる瞬間を
ひたむきに大事にされた方の中には、かけがえのないものが残ると信じていますほし

そして今回、神戸里奈さんがヴィヴィアナさんからこの『ラプソディ』を直接教われたことの喜びをブログに
書かれていましたが、彼女の初ラプソディーが成功することも願っています

私達は25日、26日の公演を見てきますが、心からのエールを贈りながら楽しんできますっ