90年代の始め頃から夢中になったダンサーの一人にルジマトフがいます。
彼の十八番と呼ばれた「海賊」での豹のように野生的な踊りはもちろんのこと、
特に心に染み入ったのは「アルビノーニのアダージオ」や「バクティ」ぴかぴか(新しい)
周りの目などを全く気にせず、思い切り涙したのを今も鮮烈に記憶しています。
(その頃はバレエは一人で行くのがほとんどでした)

ある意味、「神」を感じる演目で、あれだけ神聖というか独特の空気を感じさせてくれるダンサーは、ちょっと希少な存在のようにも思えたものでした。
ルジマトフの中に、舞踊の世界から降りてきた何か他のものが
彼に憑依しているかのような、そんな驚きと感動がその空間の中にあるように思え、
知らないうちに胸が痛くなってくる瞬間がいつもとてもとても大好きでしたぴかぴか(新しい)

そんなルジマトフとの久しぶりの再会は楽しみであり、でも過去に
大好きだっただけに、もう50歳も近づいたであろう彼の踊りがどう変化してるかと
不安でもありましたが、ルジマトフはルジマトフだと再度実感させられる、
胸に染み入る一夜になりました夜

そして、今年のロイヤル引退公演では見ることがかなわかった吉田都ちゃんの
変わらぬ素晴らしい踊りを観られたこと、これも心からの喜びでしたハート達(複数ハート)

「バレエの神髄」公演に行って来ました。


第一部:
「眠りの森の美女」よりローズ・アダージョ
音楽:P.チャイコフスキー 振付:M.プティパ
 ナタリヤ・ドムラチョワ
 4人の王子:セルギイ・シドルスキー
       イーゴリ・ブリチョフ
       オレクシイ・コワレンコ
       チムール・アスケーロフ


ごめんなさいm(__)m
ローズ・アダージョの醍醐味は、やはりバランスをキープしてる瞬間の美しさが
大きいのではないかと思うので、そういう意味ではかなりこの踊りには
魅力に欠けてしまってました。
手を離してる瞬間は、本当に本当に瞬間でした冷や汗
もっと別の演目を幕開けにした方がよかったかも・・・と
思ってしまったのが正直な感想です・・・あせあせ(飛び散る汗)


「侍」   
音楽:鼓童 振付:M.ラブロフスキー
 岩田守弘

なんとなく「侍」というタイトルから岩田さんが自分で振付けた作品だと
思っていましたが、ラブロフスキーが彼のために振付けてたのですね。

扇子を持って、和の音楽に乗せて踊る岩田さんを見てると、
彼のここまでの長くて厳しいバレエ人生に思いをはせてしまいます
先日のマキューシオがいかにミスキャストだったのか、彼に合っていなかったのが、
改めてわかりました。
切れと間をうまく使いながら、岩田侍!!の生き方の象徴のような作品は
とても心に残りました。


「海賊」よりパ・ド・トロワ
音楽:R.ドリゴ 振付:M.プティパ/V.チャブキアーニ
 エレーナ・フィリピエワ
 セルギイ・シドルスキー
 ヴィクトル・イシュク

これは、素直にとっても楽しかった!!
まず、これまた久々に見るフィリピエアは、以前の可愛らしさが印象の
強いダンサーでしたが、今回の舞台では成熟でノーブルで安定感のある美しい踊りを披露。
素敵な大人なメドーラでした乙女座

それにシングルだけで、でも軸がまるでぶれず足先まで美しく伸ばし、
綺麗に回りきるフェッテには、感動させられました。
最近は、無理にダブルやトリプルを入れて移動しまくったり、
「おっとっとバッド(下向き矢印)」なダンサーが多いような気がしますが、こういう美しい
模範のようなフェッテは、彼女の人柄にも通ずるようにも思えましたかわいい

アリを踊ったイシュク君は(ルジマトフが出演する公演でアリが
他のキャストなのは、時代を感じてしまいましたが・・・涙
まだまだ荒削りさも感じましたし、不安定さも否めませんし、
上半身の表現がまだアリとしては物足りないものの、でも跳躍力もあり、
時々、はっと人目を惹くものがある楽しみなダンサーに思えました。
コーダのピルエットでは、回りながらプリエを繰り返す(かつて
ミーシャやアンヘル、哲也君もやってたような台風)は圧巻でした。
フィリピエワのフェッテと彼の跳躍とこのピルエットにはお客様も大喜び!!
ガラ公演の醍醐味を感じる瞬間ですねーるんるん


「阿修羅」   ファルフ・ルジマトフ
音楽:藤舎名生 振付:岩田守弘
 ファルフ・ルジマトフ

その「海賊」のキラキラ感動を即座に呑みこんでいったのが、この作品。
この作品はTV番組で抜粋だけ見た時から気になって気になって仕方が
ありませんでしたが、生で見ると予想以上でしたぴかぴか(新しい)

ボレロの始まりのように小さくスポットライトが当たった特別な空間に
ただ、立ったままのルジマトフ・・・・
でも、もうその空間はこの世のものではなくなってるように見えました。
浮かび上がった彼は人間には思えません。
ダンサーでもブロンズアイドルではなく、日本の仏像のよう。
鼓や笛といった和楽器の音が、彼に何かの命を与えてるかのように
動き出すのですが、彼が腕を動かすだけでドキリとさせられるぴかぴか(新しい)

ふと、「本当に卓越したフラメンコダンサーは、ただ腕を動かしただけで
人を釘付けする」という言葉を読んだことを思い出す。

そして能のような音楽に合わせ、静と動を、そして自らの舞踊哲学を
体で表現してるような踊りが続いていきます。
バレエとか、能とか、武道とか、もうこの作品にはカテゴリは要らない。
「ルジマトフの舞踊の神髄」を見た気がした瞬間でした・・・

昔大好きだったムチのようにしなる彼の動きは健在だけど、
でも、やはりどこかが違う。
この作品の中では彼の獣のようなしなやかな肢体ですら、
重厚で厚みや深みを感じされられる。

そして私の中に、懐かしい胸の痛みがよみがえるたらーっ(汗)
ルジマトフはルジマトフだと、嬉しさがこみあげる。
気付くとダーリンが声を限りに「ブラボー!!」を叫んでいたのに、
それすら遠くに感じた自分に驚いてしまいました・・・


「ディアナとアクティオン」(”エスメラルダ”より)
音楽:C.プーニ 振付:A.ワガノワ
 ナタリア・ドムラチョワ
 岩田守弘

ドムラチョワは、この作品の方が生き生きしていたような気がします。
そして岩田さん、10年以上前も同じ作品を見た記憶がありますが、
上半身が多少斜めになったりしても、強引なくらいの勢いで
飛んで回って会場を沸かしていました。彼もこの年齢でここまで
頑張れるのは凄いと思いましたクローバー


「ライモンダ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
音楽:A.グラズノフ 振付:M.プティパ
 吉田 都
 セルギイ・シドルスキー
 キエフ・バレエ

キエフ・バレエのコールドを従えての都ちゃん、直前に本来のパートナーの
ロバート・テューズリーが怪我で降板されたので、ちょっと心配でしたが、
身長あるシドルスキーは都ちゃんを大事にサポートしてくれてるようでしたハート

そして圧巻は都ちゃんのソロ!!
美しい、本当に美しパ・ド・ブレ。
手をたたきながらの独特異国情緒を感じるライモンダのポーズも
清潔感があるのに、どこから見ても美しいんだろうと思われる精錬な美を
感じさせる。
そして切れがあるのに品があふれる動きにはうっとりさせられまくり。
ラストのコーダで盛り上がっていくと見てる私達の心も躍る!!
都ちゃん、できればまた関西に来て下さいね・・・と願わずにはいられないハート達(複数ハート)

カテコでは、コールドのダンサー達よりも一番深く深く頭を下げていた都ちゃん、
「あなたの顔を見たくてオペラグラスをのぞいていたのに」と思いつつ
でもそんな彼女だからこそ、また心惹かれる。


第二部:
「シェヘラザード」
音楽:N.リムスキー=コルサコフ 振付:M.フォーキン
 エレーナ・フィリピエワ
 ファルフ・ルジマトフ

こちらもかなり久しぶりの「シェヘラザード」王冠
きちんとセットがあり、豪華衣装ありで見せれくれるのが嬉しい。

フィリピエワが、意外にもこちらでも大人なゾベイダを熱演。
ともすれば、ルジマトフの奴隷に食われてしまった過去のダンサーを
思い出していましたが、この二人は愛欲というより禁断の中での
張り詰めた緊張の中での逢瀬の世界を表現していたと思う。

さすがにルジマトフも人間らしく、ジュテをすると以前よりも
重力を感じるものの、でもそれがいったいなんだろうか!という気持ちにさせられる。

それに、この奴隷を前に禁断の愛の実のとりこになるのは、
仕方がないではないか!!!とまで思わされてしまう。
とはいえ、禁断は禁断・・・・・
すべてが露見して、みなが殺害されるくだりはわかっていても痛々しい泣き顔

ゾベイダ自害の後、嘆き悲しむ王を見てると、どうしてこの王に
「シェヘラザード」が必要になったのかが、改めて理解できる。
この作品のことを「シェヘラザードが出ないシェヘラザード」
と呼ぶ人がいますが、でもこの流れを結末を見ていると、
見えないシェヘラザードの存在を感じさせられて、
この作品のこのネーミングは、決して間違いではない・・・と思う。

カテコでは、花束を抱えてルジマトフに渡そうと必死のお客様の姿が
ほほえましかったですチューリップ
「お願い!!受け取ってあげてーーー!」なんて、こちらも思わず応援モード。
ルジマトフがめでたく受け取った後に、美しい花束をフィリピエワに捧げるのも
昔のままのルジマトフらしい。

出待ちでは、かなりの雨だったためにタクシーで乗っていかれる
ルジマトフやフィリピエワを思い切り手を振ってお見送り手(パー)ハート達(複数ハート)

シドルスキー君やイシュク君たちは雨にぬれながら楽しそうに
手を振ってさくさく歩いていかれました。

岩田さんは、なぜか「ど根性カエル」のTシャツ姿でこれまた
雨にぬれながらもサインに気さくにこたえてくれてました。
私達もサインを頂き、お礼をお伝えしたものの、まだこれからの公演も
あるので、握手でお別れしましたが、とても腰の低い謙虚な方でした。

明日は福岡ですね。
どうか最後までそれぞれの舞踊の神髄を伝えられる
素晴らしい舞台になりますように!!