ここでは主に、私と宏樹とママの複雑な関係を綴っていきます。
【美砂(私)】
27歳のOL。 趣味は旅行とキャンプ(野外炊飯)。 根っからのアウトドア派。 運動神経は女にしてはカナリいい方(学生時代の話^^;)。 親離れ&自活が19歳と早かった。
【宏樹】
29歳。 私のダーリン。
友達のいない根っからのインドア派。 無趣味。 スレていないところが可愛くて付き合い始めたものの、ただ単に世間知らずなだけだと気付いてしまって・・・。
【ママ】
息子想いな宏樹のお母様。 基本的には優しい人だけれど、私に対して異常に厳しい・・・。 典型的なお姑さんタイプ。
【パパ】
大手企業に勤務する宏樹のお父様。 エリートなせいか世間知らず。 東京の女(私)の事はあまり好きではないらしいが、宏樹との結婚自体には反対していない(好きにしろという感じ)。 普段は温厚で無口だが、家族にだけ本音(ここでは主に私の陰口)を話す。
ラブホテル(2)
無性に悲しく歯痒い気持ちを噛み締めたまま、ベッドの下で宏樹の背中を抱き締めて、私は大粒の涙を流していました。 嗚咽を止められず泣き崩れた宏樹は、私の手を力強く握っていました。
「もう・・・こんな風に手を握る事も・・・できなくなるんでしょ・・・?
もうすぐ・・・美砂は・・・いなくなっちゃうんでしょ・・・?」
「宏樹・・・ごめんね・・・。」
「時間を戻せないのが悔しい・・・!
自分の馬鹿さが・・・悔しい・・・!
なんでもっと・・・美砂を大事にしてあげなかったんだ・・・。
今までどうして気付かなかったんだ・・・。」
今まで5年も付き合っていて、宏樹がこんなに私の事を思い遣ってくれた事などありませんでした。 いつも自分の事ばかり、ママの事ばかりを優先的に考えて、私の事などほとんど考えていませんでした。 もちろん、それを咎めた所で彼が反省した事もあるわけがなく、私はそんな彼に見切りを付け、こうして別れを選んだのでした。
なのに・・・
別れを目前にして現れた宏樹の本性は、甘ったれなマザコン男ではなく、自らの至らなさを悔いて嘆く姿でした。 私にとってそれは 「意外な一面」 というより、 「信じがたい光景」 でした。 宏樹にこんな心があったなんて、私は知りませんでした。
「俺・・・ちゃんと話す・・・。
取り乱してゴメン・・・。 情けないね。」
宏樹はそう言って深呼吸をしてから、ゆっくりとベッドの淵に腰掛けました。 私も立ち上がった宏樹を見上げながら涙を拭い、心を鎮めて隣に腰掛けました。
「浮気の事・・・。
本当の事を、ありのままに話す・・・。
聞いててショックな事ばかりだと思う。 ゴメン。
それでも話していい? それとも、知りたくない?」
「宏樹が話してくれようとしてるんだもん。
ちゃんと現実と向き合おうと思う。
だから話して。 ゆっくりでいいから。」
宏樹は慎重に言葉を選びながら、ゆっくりと話し始めた。
「浅井さんっていう、19歳の女の子が浮気相手なんだ。
彼女とはネットで知り合った・・・。 mixiで。
今もまだ付き合ってる・・・。」
「うん・・・。」
「浅井さんと会う前、毎日毎日、何十通も携帯でメールしてた。
その時に彼女は、家庭環境が悪くて家出したいって言ってて、
俺も何とかしてやりたいと思いながら、ずっと相談に乗ってた。」
「うん・・・。」
「写メを交換した辺りから、お互いだんだん好きになって行って、
メールで告られたんだ。 まだ会っても電話してもいないのに。
その時、彼女いるのかって聞かれて・・・。
丁度その日は美砂と喧嘩したばかりで、
告白は断ったんだけど、 『彼女いない』 って答えちゃったんだ。」
「・・・・・・。」
「付き合わなくてもいいから、一度会って欲しいって頼まれて、
去年の1月に、浅井さんと初めて会った・・・。」
「・・・うん。」
「美砂が3月から4月にかけて実家に戻ってた時、
何度も彼女と会って、本当に好きになっちゃって、
俺から告白して付き合う事になったんだ。」
「うん・・・。」
「その頃に・・・初めて彼女とエッチして・・・」
「・・・・・・。」
「妊娠させた・・・。」
「避妊・・・しなかったの・・・?」
「したけど・・・途中からゴム着けたから・・・。」
「・・・・・・。」
「それで、浅井さんに結婚しようって言われた・・・。
浅井さんは、俺に美砂がいる事を知らなかったから。
俺も断る理由がなくて、でも・・・中絶しろとか言えなくて、
それで、母さんに相談したんだ・・・。」
「うん・・・。」
「母さんには、美砂には何も言うなって口止めした。
美砂には、俺は童貞だからエッチするなって言うように、
俺の前でセックスの話はするなって言うように、
そういう設定で事を進めるように説得した・・・。
そうすれば、俺には怪しい要素が無くなると思ったし、
俺がそういう教育を受けてれば、美砂も疑わないって・・・。」
「そんな・・・家族ぐるみで・・・ひどい・・・。」
「それから、母さんはすぐに美砂を呼び出して、
そういう話をしたって言ってた。 美砂も覚えてる?
俺のオナニーの話をしたって言ってたろ・・・?
あの時の事・・・。」
「覚えてるよ・・・。」
「母さんがあんな事を話すなんて、逆に不自然だったかも。」
このブログの2つ目のエントリーに書いたくらい、私にとっては衝撃的な話でした。 お母さんが息子の性事情を、成人してもなお干渉しているなんて・・・常識では考えられなかったから・・・。
私がこのブログで宏樹のママを語る上で、あのエピソードは欠かせないと思いました。 どれだけ変わった家庭なのかを説明するには、十分すぎる話なので・・・。
あのエピソードのママが、実は演技だったなんて・・・。 それも、宏樹による情報操作の一環だったなんて・・・。 私はこのブログを綴っていた事を、少しだけ後悔しました。 まんまと踊らされた自分の愚かさを、こうして露呈する羽目になってしまったのだから・・・。
「それで、母さんに言われて浅井さんを実家に連れてった。
浅井さんは母さんに、今は子供を産むなって言われたんだ。
泣いて頼み込んでたんだけど、母さんは許さなくて、
絶対に産ませないって言って・・・。」
「うん・・・。」
「それで6月、中絶したんだ・・・。
母さんと俺が病院に付き添って・・・ね・・・。」
「うん・・・。」
「その時、母さんは浅井さんに、
俺と結婚したかったら、しばらく俺の実家に住めって言って、
浅井さんは家出したがってたし、丁度いいって事で、
2ヶ月くらい俺の実家にいたんだ。」
「・・・・・・。」
「浅井さんのご両親にもちゃんと連絡を入れて、
中絶の話は伏せていたけど、うちでしばらく預かるって話を、
渋々了承してもらった。」
「うん・・・。」
「その間、俺は美砂と今まで通りに暮らしてたんだ・・・。
でも、実家に置いて来た浅井さんの事が気に掛かって、
毎週のように実家に帰ってた・・・。」
「そういえば・・・そんな時期があったね・・・。」
「でも、浅井さんは母さんと大喧嘩して、追い出された。
原因は、浅井さんが夜更かししてた事らしいんだけど・・・。
どうも携帯で誰かと話してたらしく、それを母さんが叱って、
携帯を取り上げたのが直接的な原因らしくて・・・。」
「うん、想像つくよ・・・。」
「それから母さんは浅井さんとの結婚を反対しだして、
俺は浅井さんから結婚をせがまれて、板挟みの状態で・・・。」
「・・・うん。」
「去年の9月、浅井さんが子宮の病気にかかってるのが分かって、
手術をしたんだ。 中絶したのがいけなかったみたい。
手術は成功したけど、妊娠しにくい体質になった・・・。
俺がいつか母さんにそれを教えると、
それを口実に浅井さんとの仲を引き裂こうとし出して・・・。」
「それが “ウマズメ” って話になるんだね・・・。
昨日、お母さんから電話で聞いたの。 浅井さんの事。
その時に、浅井さんは不妊体質だから~とか言ってたよ。」
「そんな事まで話してたのか・・・。
だから、それからは母さんには、
浅井さんとは別れて、美砂とだけ付き合ってるって言った。
でも、本当はずっと・・・浅井さんと続いてるんだ・・・。」
私は常に上の空の状態で、何か返事らしき言葉を発していたけれど、そのどれもが適当な相槌のようなものでしかなく、宏樹の話を聞けば聞くほど心が張り裂けそうになり、理性を保つだけで精一杯だったのです。
