ジャワ、ラスムのジャワ更紗
インドネシアのホテル、ロビーで運転手と一緒に人待ちをしていました。
       
要件は単純、日本から送ってきた資料を客先に渡すだけ、こんな簡単な仕事は滅多に
ありません。
 
約束の時間までには、まだ一時間もあります。              
喉が渇いたのでコーラを注文、ゆっくりと飲んでいたら一寸あか抜けた集団がロビーの
方に歩いてきます。
   
民族衣装のバテック(ジャワ羅紗)を身に着けている人が多いのですが、普段見慣れている
衣装と比べると明らかに違う、運転手君はどれも本物のバテックだと言います。
   
     
                   
我々が今住んでいる田舎町で見られるものはイミテーションのバテックだと言います。      
その内、集団の人達が空いてるロビーの椅子に座り出し、二人の中年女性が空いてますか?    
と言って近くの椅子に座わりました。
 
           
どうぞどうぞと言って、ついでにお世辞の一つでもと、素晴らしいバテックですねと言葉に出て    
しまいました。
そうしますと、にっこり笑いながら日本語で、「ありがとう」と返事があって、思わずどこに
 
行ったら、その様な布が買えるのかと聞いたら、今度は二人揃ってインドネシア語と英語の
   
チャンポンで熱弁をふるいだしました。
 
       
話が面白かったのか運転手の方が膝を乗り出し、色々質問しだして、えらく感心しながら話を    
聞いているんです。
                     
その内団体さんが、戻りだし二人連れも手を振りながらホールの奥の方に帰っていきました。    
暫くしたら待ち人がやってきて書類を手渡し後、雑談して、その日は終わりとなりました。
 
住まいにつくまで一時間半の道のり、先ほどのバテックの話を運転手に聞きながら帰ります。    
女性の腰布の値段は運転手君の月給の3倍弱だとか、そして作り上げるのに一年近くかかるとか!    
そんなものかと興味を持ちながら聞き、それから気になって仕方がありません!
     
近くのデパートに行ったら、バテックの本が有ったので買って辞書片手に読んでいきました。    
その内バテックが一枚欲しくなりました。              
目指すのは今では幻のバテックとなったラスムの布です。
     
このラスムの布が、何故今の世の中から消えていったか?
かってはあこがれの名品ではあったが、色彩の強烈さから一般の嗜好には合わず徐々に
衰退していき、数軒のこった工房も採算の取れる現代風のバテックに転向していったそうです。
この色の中で、現在途絶えてしまってるのがラスムの赤色~この色はインドネシアではメラー
(赤)ダラー(血)と呼ばれ、文字通り「血の色」と名付けて門外不出の秘伝とされてきました。
バテックの生地は一般的に木綿です。
絹系の布は動物性ですから蛋白質が含まれているので赤色を出すのは簡単ですが、木綿には
たんぱく質が含まれない為、綺麗な色が出ないんです。
そこでラスムではインドの茜色の布を研究して触媒を作り、その結果~綺麗な赤色を出す事に
成功したんです。
これはラスム赤と呼ばれて~他の工房では真似ができづ赤染の部分だけは、ラスムに注文を
出しました。
ジャワ更紗には地域ごとに特技があります。
例えば、プカロガンは藍染~ソロはソガ(茶色)染~ラスムが赤染、この様になります。
そしてとくに凝った布はカインテガネガラと言うものがあります。
カインは布、テガネガラ(三国)を意味します。
 
先ほどのホテルの叔母ちゃんが着ていたジャワ更紗は、実はこのテガネガラだったんです。
勿論注文生産品ですので注文してから出来上がるまでに一年かかるし高価な物なので
簡単に売れない!
デパートに並ぶはずがないです。
ラスム赤の布は、ラスムに有るなんて言うものですからこの古布を求めてラスムまで行って
みました。
あるよと言って見せてはくれるんですが値段は無茶高い!
とても買える物ではありません。
古伊万里の一番高いのは伊万里だとか、インドネシアでも、この現地高は成り立ちます。
ラスム赤はジャワ島よりもスマトラに人気があったらしくスマトラまで行って求めたのが、この布なんです。
赤の色が二種類あります。
これは一回塗って、その上に蝋を置き、また染めると言う方法を繰り返しているんです。表裏も
同じ様に蝋を置く~コリャ大変です。
気を付けて見ればWHと言う落書きがあります。
たぶんイニシャル、これ気がつきませんでした!
良い布には、かなりの確率で持ち主のイニシャルがはいります。
並の物には、これがありません!
インドネシアは子だくさん~主権争いが見えてきます。