彼を知ったのはミクシィのコミュでした。
「ギター好っきゃねん!」というコミュの管理人をしており、その紹介文からも「ギター好っきゃねん!」という気持ちが、ガンガン伝わって来て、好印象を持ったのです。
コミュのタイトルからもわかる通り、関西の方で、ギターの話もさることながら、「ツッコミが甘いねん!」「ボケかたが甘いねん!」などとそちらの指導の厳しいこと。
関西でない私も段々ツッコミ方を覚えるようになりました。
そうこうしているうちに日記へ遊びに行くようになり、コメントのやり取りをするようになり・・・。
その頃には彼が「名古屋軍団」と名付けた我々名古屋バンドマンたちとの交流も深まり、あっちへ遊びに行き、こっちへ遊びに行き・・・。
とうとう電話番号まで交換し、電話で話すことも多くなりました。
彼は元々プロのミュージシャンでした。芸能界にいた人(いる人)はやはりプライバシーを大事にされるので、電話番号や住所を外に出さないように気をつけてましたっけ。
彼はとても優しい人でした。
たまたまこちらからかけた電話が長くなったりすると、いきなりプツッと切れてしまうのです。
「あれ・・?電波が悪いかな・・?」
などと思っていると、いきなり電話がかかって来て、
「長なったやろ?交代やでぇ。」
なんて。
落ち込んだ人も放っておけない。いろんな人の相談に乗り、そして自分で動いて何とかなるものなら構わず動く。
「応援しまっせぇ!」
と励ましてくれる。
ギターの話もあれこれしながら、それでもあっちこっちにギャグを交えて大笑いさせてくれる。
「落ち込んでたやろ?ちょっとは元気出たか?」
そんな言葉をかけてくれたりする人でした。
ちょうどその頃、知り合いの工房が新しいエフェクター(ギターの音を変える機械)を作り、試奏をうちのおっさんのバンド、THE GOLD BUGのギタリスト、BUGの憲ちゃんに頼んだりしており、このエフェクターの出来が恐ろしいほど良かったので、「これは良い!これはすごい!」なんて話になり、日記やコメントはそのことでもちきりとなり・・・。
すると彼も乗り気になって、「ええもんやから応援したいねん。動きますわぁ。」と。
関西の有名な楽器店にこのエフェクターを置いてもらえたのは彼の力が大きかった、と聞いております。
それから、現役で活躍している某ミュージシャンにこのエフェクターを紹介してくれたのも彼だとか。
この方がTVに出られた時に確認したのですが、足もとまでは映ってなかったなあ・・・。
そうこうしているうちに、この工房さんの努力も実り、とうとう今では2チャンネルあたりでも話題となり、雑誌の取材や海外アーティストからも使用されるようになりました。
身近な人がこうして大きくなって行くのを見るのは嬉しいものです。そういう私もこのエフェクターを購入し、自分のギターの音についてこれだけ考えたことは無かったんじゃないかな?なんてくらい音にこだわってみましたっけ。
その間にも電話やメールや日記や・・・と、遠くにいることを感じられないくらい彼とはよく話していたのですね。
イタズラ好きで、人がお腹が減っている時間を見計らって美味しそうなメニューの写真を送ってきたり、「旨いでぇ!食えんやろ(笑)」なんてコメントまでつけて来たり・・・・。
とうとう我々名古屋軍団はそろって彼のいる関西へ遊びに行くまでに。
待ち合わせをして、彼のお薦めの店でご飯を食べて・・・。その日帰りと決まっているのに、結局近くのファミレスで2時近くまで話し込んだり。
「ネットやろ?ただのネットやん。それがこうやって実際に会って話して、楽しくて、友達になっとんねん。信じられへんことやわあ。」
そう言って笑う彼を見て、子供みたいに無邪気に笑う人だな、なんて思ったことを覚えています。
「ほな、またな!今度は俺が名古屋に行くさかい!」
そう言ってさよならして、名古屋に帰りついたのは朝。こんなことはバンドで大阪や東京へ行っていた頃はしょっちゅうのことでしたので、誰も何とも思いませんでしたが。
そして。彼からの電話。
「パコの石けん、ええわあ♪俺気に入ってしもてん。」
実は桃の香りが好きだ、と聞いて桃の香りの石けんを送っていたのですね。
「また作ってくれるか?」
そう言ってもらって嬉しかったので、何度か送りました。すると、
「今年はタイガース優勝するやろ。タイガース優勝石けん作ってや。」と。
これがタイガース石けんのきっかけです。これは日記にも書いたことなのですが。
でも、実は真相はちょっと違いまして、
「ええもんやから応援したいねん。俺、タイガース石けん100個売ったるからな。100個作ってや。」
と言われたのです。
そして、100個の製作に入った私に、「頑張ってるパコさんへ。旨いもん食って元気つけてや。」と差し入れを送ってくれたり、電話で値段や条件の相談をしたり・・。
「おまけって大事やねん。5個で送料無料、10個でもう一個別の石けんをおまけ、ってどや?」
「ああ、いいですねえ・・。それで行きましょうよ。」
「ほな俺、その条件であちこちに連絡しとくわ。」
そして「タイガース石けんが終わったらな、俺のバンドのイメージ石けんを頼みたいねん。ライブ会場に置きたいからなあ。これが終わったらその相談もしてや。」と。
タイガース石けんを作りながら、彼のバンドのイメージ石けんの構想も練る日々でした。イメージをふくらませるために彼のCDもかけてみたりしながら、「どんな感じに持って行こうかなあ・・・・。」と考え、考え、そして解禁前ではあったものの、デザインのチェックのために「私のOKが出るまで使わない。」という約束で、試作品のタイガース石けんを送りました。
彼は大喜びしてくれました。
「ええなあ。ええわあ。ラッピングもええなあ。こうやって外側から模様が透けて見えるねん。これが好っきゃなあ。」
電話の声を聞きながら、またあの子供みたいな無邪気な笑顔でいるんだろうな、なんて思っていた私です。
「使ってみたいなあ・・・。」
「ダメですよ。まだアルカリが高いですから。」
「使ったらどうなるん?」
「火傷か炎症か・・・。ひどければ皮膚が溶けますよ。」
「うわっ!こわっ!・・・・ほなパコのOKが出るまで待つわ。はよ使いたいねんけどな。」
「なるべく風通しのいい所に置いておいて下さいね。」
彼はほんとにタイガース石けんを使ってみたかったのだと思います。大のタイガースファンでしたから。そして、本当なら少しはフライングしても大丈夫なものは大丈夫なのです。あまりお薦めはしませんけれども。
ただ、人様にそういったことを許すことは私には出来ませんでした。ですから、自分でフライングして解禁前に使用感を確かめてはいたものの、彼には解禁日まで待ってもらうことにしたのです。
そして、数日たって彼からのメール。
「ええもんやから。パコの石けんがみんなに使ってもらえるように俺も応援しまっせぇ!あの工房みたいに大きくなると嬉しいねん。頑張ってや。ほな、またな!」
ありがとう・・・。嬉しく思いながら、明日あたり解禁して、「もう使ってもいいですよ。使い心地の感想を聞かせて下さい。」と連絡しようと思っていた日の夜でした。
一通のメールが届いておりました。彼が仲良くしていたあのミュージシャンからでした。
普段メールのやり取りなどしませんし、相手は芸能界の方なので、こちらもあまり馴れ馴れしくしては・・・と遠慮していたのですが。
「悲しいお知らせ。彼が亡くなりました。」
内容はこれだけでした。
最初は信じませんでした。だってその日の朝にメールして、「ほなまたな!」と言ったばかりじゃありませんか。
「バンドの石けんも頼むでぇ。タイガース石けんも使うの楽しみやわあ。頑張ってや!パコの石けん応援しまっせぇ!」と言ってくれたばかりなのです。
「・・・・・・・・あの人らのいつものイタズラだろうな・・・・。」
そう思ったのですが。そして「おかしなメールが来たやろ。どついたってや!」そういうメールが来ることと思い待っていたのですが。何の連絡もないのです。
とうとう彼に電話しました。電話は留守番電話になっていました。
「・・・・・ちょっと信じられないメールをもらったんですが。忙しいですか?電話出来るなら下さい。心配なので。」
そう入れたのですが。
もし彼がレコーディング中であるならば、数時間は電話に出られないこともあるなあ、とも思ってはいたのですが。
とうとう彼からの連絡が無いまま、メールをくれた方にメールを返しました。
「本当のことですか・・?冗談ですか・・・?」と。
すると、すぐにメールが帰って来ました。
「電話してもらってもいいです。電話下さい。」
そして電話番号が明記されていたのです。この瞬間「本当のことだ。」と確信しました。
芸能界にいる方が、ネット上だけの知り合いに自らの電話番号を知らせるなんてありえないことだからです。よほどのことが無い限りは。
慌てて電話をしました。「初めまして」の挨拶もなしに・・・。
電話の向こうの声は震えていました。
「俺も何がどうなってるんだかわからないんだけど・・・。でも夕方だったらしいんだ。部屋で一人で倒れてたって。病院へ運んだけどダメだったって。みんなパニックだよ。・・・・俺もびっくりしちゃって・・・。」
急性の高血圧性心臓疾患。彼の命を奪ったもの。
夜中ではありましたが、名古屋軍団の面々に連絡を取り、翌日の通夜に合わせて名古屋を出ました。
電話をくれた方も夜中まで仕事がありながら、そのまま朝一番の新幹線に飛び乗って関西へ向かわれました。
通夜の会場につきますと、中央に棺が置いてありました。たくさんの花に飾られて。
棺には彼が眠っておりました。
少し笑っているような、はにかんだような顔。「遠いとこよう来たなあ。」と迎えてくれているようでもあり。
通夜の会場でありながら、音楽は彼が終生愛したロックがかかっておりました。彼の愛したギターと共に。
そして彼の棺の傍らに。
一度も使われることの無かったタイガース石けんが飾ってありました。
暑い暑い、ちょうどお盆の時期でありました。
「お盆やでぇ!みんな向こうから帰って来る時期やでぇ!何一人で向こうへ行っとんねん!」
彼から受けたツッコミの修行。最後にツッコミを見てもらいました。上手くなったでしょ?
通夜を終え、葬儀を終え・・・・。あれから一年がたとうとしております。
今年もタイガース石けんを仕込みました。あの時彼が一生懸命売り込んでくれ、そして使って下さった方々から予約も頂いております。これも縁。ありがたい縁です。
値段も条件も、彼と決めた通り。これからも変えるつもりはありません。約束ですから。
ラッピングを変えるつもりもありません。彼が喜んでくれたものですから。
そして、メールをくれたあの方にはこの間石けんを送らせて頂きました。タイガース石けんも入れて。
「ええもん届きました。大事に使わせてもらいます。」そうお礼を頂きました。
「あいつの代わりに、あいつが大事にしていた人たちを今度は俺が大事にする。」そう言っていた方。
私もその思いを受け継ごうと思います。彼ほどの気遣い、優しさは持てないにしても、彼からもらった縁は大事にして行きたい。彼が生きた証の一つとしても。
そんな思いでもうすぐ一周忌を迎えます。
そして、生きている私たちは、その思いを抱きながら、また次の一歩へと進んで参ります。
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