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株式会社 丸信 社長のブログ

株式会社丸信 代表取締役 平木洋二のブログ
包装資材販売、シール・ラベルの印刷、紙器印刷加工業を営む株式会社丸信の社長のブログです。

昨年から俄かに、団体での会社見学や講演のご依頼が増えた。

 見学は久留米に宿泊してお金落としてくれるなら同業者でもOKにしてる。先週末、今年早くも3回目の同業者団体様の受け入れ。豪気な皆様で地元に沢山お金を落として頂いた。有難い。観光大使(自称)の面目躍如だ。

 講演はお断りすることも多いが、依頼者によってはお断りできない。どうせやるなら聴衆のニーズに沿った話をしたいのでご希望を事前にお伺いすると、私や会社の「失敗事例」について聞きたいとのリクエストを頂くことも多い。

 広報に多くの人を配置して、小さな成功を大きく喧伝してしまっているので皆さんやや食傷気味なのかも。ラベルコンテスト、技能五輪、健康経営ブライト500、カーボンゼロ、病児保育と広報的にはプレスリリースのネタには事欠かない。私の意思決定のどこかに「これ広報的に美味しいかな?」がある事は認めざるをえない。広報チームの活躍で我が社の社会的評価は爆上がりしたと思う反面、古今東西、他人の自慢話の不快さは不変である。

 

失敗事例。

実はたくさんある。

 

営業職時代の失敗、営業マネージャーとしての失敗、新事業での失敗、経営者としての失敗。人間関係での失敗。投資の失敗。お酒の失敗(笑)。これら私の失敗事例にどれくらいニーズがあるかは不明だ。

 弊社では毎月の営業会議で司会当番になった管理職が必ず、会議の最後に「新事業提案」か「しくじり先生」をやる決まりになっている。最近は自分の失敗談を赤裸々に語ってくれる管理職が多く、若手や社歴の浅い方からは一定の評価を得ている。年寄りは自慢話より失敗談を語るべきなのだろう。

 

共有に値する私の失敗と言えば、やはりM&Aに偏っていると思う。

 

これまで株式譲受、事業譲受で計9社(事業)にグループインしてもらった。実はその多くが現時点ではとても成功だったとは言えない。

 

もちろん成功に至らないのは我々のデューデリジェンスの甘さ、PMIの稚拙さ、経営力の問題、投入リソースが少ないことにも原因はある。しかし、それらを差し引いても、そもそもM&Aとは情報の非対称性の大きく、買い手に著しく不利でリスクの高い取引だと思うのだ。

 

その最大の大失敗が今日のタイトル「M&Aの翌日に売上の40%が消えた事件」だ。そう、、「事件」と言って良い。

 

ある事業の引き継ぎを直接前オーナーから打診され、ご面談、会社見学、基本合意、DDとスムーズに進み、本契約となった案件だ。基本合意の前に前オーナーより顧客リストをもらっており、取引の継続性について尋ねると「まず間違いないでしょう」と太鼓判を押してくれた。従業員さんも全員継続勤務して頂けるとのことだったので事業継続には何の疑問も持たなかった。我々の強みである営業力でその事業のプロダクトをもっとスケールできるだろうとの皮算用だった。

 本契約の直後、その会社唯一の営業職の男性が入社しないとの意向を表明された。それはそれで困るが、まあ我々の営業部門でなんとか代替できるだろうと軽く考えていた。
  さらに突如、当時のその事業の売上の約40%を占める顧客(我々の同業者)から取引中止を宣告される。理由は単純、丸信は競合だから。事前に前オーナーからその会社にも当然打診してもらい、取引継続問題なしと聞いていたが、実際は最初に打診のあった時点で、弊社から他のサプライヤーへの切り替えを準備を進めていたのだ。極めつけは、入社を拒んだ唯一の営業マンがその会社に引き抜かれていたことが発覚。東証プライム上場企業なのにえげつないなー。自社の営業に発破をかけて穴を埋めようとしているが未だ損益分岐点を超えるに至っていない。

 

売上が40%減ったこと以外でも、この買収失敗から学んだことは多かった。(この事業の社員さんたちは真面目で勤勉な方ばかりです。私の失敗という意味です)

 

・売上が特定のお客様に偏っている案件はリスクが大きい

・丸信の競合が顧客リストにある場合はその売上は無くなる前提でプライス(買収価格)を計算する。

・原価計算の仕組みや精緻さを遅くともDDまでに確認しておく

・フルコミットできる社員を送り込めない案件は避ける

・原価割れでの販売や在庫期間等の不利な取引条件をM&A後に是正すべくお客様と交渉するのは簡単でない。

 

もちろんシナジーがゼロだったわけではない。数社の有力なお客様との取引口座を得て、今では丸信の他の製品も買って頂いている。この事業により丸信の製品のラインナップも増えた。

 

この教訓から私の「M&A時のチェックリスト」に上記が加わり、案件をより多面的に観れるようになった。30代後半で大前さんのビジネススクールで経営を学んだが、M&Aの講義では専門家の教授から

 

「M&Aは経験がものを言うから、最初から大きな案件を狙らわずにまずは小さな案件で失敗しながら学びなさい」

 

というお話しがあったのを鮮明に覚えている。そう言う意味では9つのMA(での失敗)から多くを学んだ。

 

40%減は事実だが、当事者がすべてご存命なので、今日のお話は少し脚色している。ただ9つのM&Aの経験から多くを学んだので、丸信の後継者の為にも記録を残しておきたい。(本を書けそうだ)

 

因みに大前さんのビジネススクールでの卒論は

「印刷業におけるM&Aを駆使した事業拡大」

であった。斜陽の業界を再編しながら、購買力を帯びて、収益性も高めるという内容。卒論提出後に大前さんから対面で最終審査を受けたが、その際に本件についてこんなアドバイスを頂いた。

 

M&Aはその企業の様々な問題まで背負いこむから、結構大変だぞ。買ってしまわずに、様々な企業を下請け化して、強みのマーケティングに特化し、製造を各社に振って、紙等の原材料のみ提供したらどうかと。

 

あれから15年。今になってこのアドバイスの正しさが理解できる。このアドバイスに従えば、売上の増加と共に、どこかで非連続の思い切った設備投資をするというような前々回のブログで書いたようなリスクを負う必要がない。

 

 

その上、紙を各社に支給していくので購買力は上がり、サプライヤーに対する交渉力は増すから価格競争力も強まるだろう。

 

40%減の煮え湯を飲まされた東証プライム上場企業のビジネスモデルはまさにこれだ。基幹工場はあるが、基本的には各地で製造を請け負う会社と提携して、マーケティングに特化し、下請け各社に主要原材料の紙だけを提供し製造委託している。

 

改めて大前さんは流石だと思う。世界的なコンサルにして、こんな斜陽業界の事まで見通すのだから驚きだ。


のぞみ12号にて