今、中小企業経営者向けの様々なメディアでは「アトツギベンチャー」なるバズワードを頻繁に目にする。6月の日経トップリーダー誌でも特集が組まれた。
もともとは大阪から始まった、20代、30代の若き企業後継者の挑戦を応援しようというムーブメントのようだが、今や日本全国に広がっている。国や地方自治体もこの動きを後押ししているようだ。
様々な団体が立ち上がり、カンファレンスやピッチイベントなどが頻繁に開催されている。
跡継ぎ(アトツギ)ベンチャーとは
「若手後継者が、家業が持つ、有形無形の経営資源を最大限に活用し、リスクや障壁に果敢に立ち向かいながら、新規事業、業態転換、新市場開拓など、新たな領域に挑戦することで社会に新たな価値を生み出すこと。」
らしい。
私が若い頃は跡継ぎに向けられるネガティブでステレオタイプのレッテル貼りに辟易としたものだ。
「バカ息子」、「世間知らずのボンボン」、「温室育ち」、「唐様で売家と書く三代目」
企業後継者を揶揄する表現はいくらでもある。
これらの蔭口だけは叩かれたくない、、その一心だった。
我々企業後継者のプレッシャーたるや社員さんや世間の想像を遥かに超えるだろう。
今は高度成長期でもなければ、バブルでもない。人口ボーナスもない。
普通に真面目にやっていても業績は降下する。ほとんどの業界で国内市場がシュリンクする環境下で企業を引き継ぎ、成長軌道に乗せるなど容易なことではない。高速の下りエスカレーターを登るが如きである。
後継者は概して、親のお蔭で十分な教育は受けさせてもらってる。
すると、より大きな仕事ができる、安定した大企業に勤めたり、官僚や公務員になったりしたいだろう。もしも特に優秀だったならば、ステイタスの高い医者や弁護士等になって知識や技能を売って安定して暮らしたいと思うのは自然なことだ。
私も東京の高層ビルの上層階で一年中スーツを着て働くか、富士山の麓にある大企業の研究所で白衣を着て研究開発の仕事に従事したいと夢みていた。(どちらも夢破れましたが、、)
私はどちらも音痴だけど、芸術やスポーツに才能や情熱をお持ちだったにも関わらず、渋々地元に戻った方もおられる。
皆、数多くの選択肢を持ちながらも、
「誰かが火中の栗を拾わねば」
そんな思いで地元に戻ったのではないか。
これから時代の跡継ぎを我々の時代のようにネガティブに捉えるのではなく、地域活性化の担い手であり、社会的意義の高い職業だと認知していくのは重要なことだと思う。
高校、大学、大学院。同級生の多くは東京に居る。
(少なくとも東京に本部がある組織に所属している)
地方在住は少数派だ。
それだけ東京には人生を賭すに値する企業や機会が偏在しているという証左だろう。
同級生で地方に残っているのは多い順に公務員、金融機関、電力や鉄道などのインフラ系、医者、企業後継者、弁護士、たまに政治家くらいだろう。
公務員、金融機関、医師、弁護士、政治家等はとても尊くて、重要なお仕事である。しかも地方では貴重な高所得者層なので消費者としては地方のGDPに大きく貢献してくれている。
しかし、何かを生産する側ではないから事業を通してのGDPへの貢献は小さい。
やはり雇用など地方経済の担い手の中心は中小企業だと思うのだ。
しかし、長い下り坂の時代に人口減少の著しい地方で家業の後継者になるのはリスクが大きい。
それでも、地元で私が知っている若手の経営者(候補者)の皆さんは後継者、創業者の両方いらっしゃるが、皆、真面目で商売熱心な優秀な方ばかり。我々の時代よりも社会貢献意欲が高く、地方の問題を解決しようというアンビションを持った方も多い。
地方に暮らす者の一人として、そんな若き彼らを応援するのは当然だ。
もしも、私がこれまで経験したことでお役に立てることがあればすべてお伝えしたい。(もし有ればですが)私や弊社でお手伝いできる事があれば何でも協力したい。
地方に良い会社が増えれば、地元に残る人、都会からUターン、Iターンする方も増えるはずだ。
持続可能な人びとが豊かに暮らせる地域社会
これこそが我が社が実現したいビジョンだ。
そこには若きアトツギベンチャーが欠かせない。