先日、ある仕入先のユーザー会の役員新年会に参加。
その会の会長はある大企業の経営者のご一族で大変なグルメだから、懇親会は自ずと鮨、あら、ふぐ等の高級魚介系になる。
しかし今回は「水炊き」だという。
嫌いではないが、、、期待値が高かっただけに少し拍子抜けした。
しかし、会長がご友人から
「本当は人に教えたくない」
と誘ってもらい、気に入ったお店だとか。
確かに前菜から水炊き、〆まで上品で美味い。
静かで、こじんまりとしたお店だから、大人数は対応できない。
確かに教えたくないお店だ。(だから紹介しません)
その新年会で別の先輩経営者から、私がこのブログで先日紹介した「小倉昌男の経営学」を早速購入して読んだけど、かなり面白くて、良かったと。
次の「伸びない市場で稼ぐ」も必ず読むと仰って頂いた。
将来丸信で経営層を目指す社員向けに薦めたのだけど、業界の先輩にまでプラスの影響を与えているのだとしたら、光栄で嬉しいものだ。
社員とそのご家族、同業者、仕入先、金融機関などのステークホルダー、一部お客様からも「読んでます」と仰って頂いている中、今回はまさに本音で言うと
絶対に紹介したくない本
である。
なんと!この良書がまたもや絶版である。しかもプレミア付いていて、日経文庫のくせにちょっと高額になってしまっている。
実は以下のこちら
も全く同じ内容のタイトル違いで、こちらも絶版ながら、まだ低価格のものもある。私、実は両方持っていて丸信の社員さん先着1名のみ、感想文を出すのとバーターでこっちを差し上げよう。
大手競合からの価格攻勢で、大幅値下げを強いられたり、商圏を失うことが続いた頃に出会った本で、大袈裟でなく、天が私を導く為に下賜された本ではないかとさえ思った。
所謂、ゲーム理論の本ではない。
もともとは「コーペティション経営」というタイトルだったが、日本人に馴染みが薄いので、文庫本化の際に「ゲーム理論で勝つ経営」に改題しており、英語では
コーペティション(Co-petition)
つまり、競争(competition)+協調(cooperation)の造語である。
序章に
「自分自身が輝くために、他人の光を消す必要はない」というバルーチ(20世紀を代表する銀行家)の言葉を紹介し、ビジネスはスポーツと違ってどちらかが勝って、どちらかが負けるゲームではないとある。
自分が成功する為に必ずしも相手が失敗しなくてもよい。多くの勝者が存在することは可能なのだ。
というこの本のメインテーマが語られている。
お客様や仕入先と共に利益を得る、場合によっては競合とだって協力して共に勝つという状態を創れるというお話だ。
そして、競争戦略に新たな視点を与えてくれるのが、補完的生産者。
補完的生産者の身近な例でいえば、iPhoneとアプリの開発業者。
毎日全世界で数々のアプリがローンチされていることが、iPhoneの魅力を増し、市場を大きくし、そしてアプリ業者(補完的生産者)にとっても利益をもたらす。まさにWIN-WINの状態だ。
少し前にカンブリア宮殿にコスモベリーズという家電販売のチェーン店が紹介された。コスモベリーズとはヤマダ電機と提携し、街の電気屋さんが、ヤマダ電機の購買力や物流網を最大限利用し、この厳しい業界での生き残りを可能にしている事例だ。
ヤマダ電機にとっても自社店舗には来店しないような、高齢者層など新たな顧客をコスモベリーズを通して獲得できる。
つまりどちらも勝者になったのだ。
ビジネスはスポーツと違い、ルールや立場を自分の意志で変えることができる。
この補完的生産者、競合、お客様、仕入先との競争や協創について様々な視点を与えてくれ、読みながらアイデアの溢れてくるのがこの本の真骨頂だろう。
この価値相関図を自社だけでなく、顧客の立場、供給者の立場、競合の立場から眺めながら、多くのプレイヤーが共に勝てるルールやポジションを探していこう。
競合を避ける為に、競合の補完的生産者になる、顧客になる、サプライヤーになる。
顧客との関係強化の為に、顧客の顧客になる、或いは顧客に自社の補完的生産者になってもらう。
等々、色んなアイデアが湧いてくる。
さらに、価格弾力性の高い商売どっぷりの丸信の将来のリーダーにとって価格競争と無縁でいることは許されない。
第3章には価格競争についての鋭い考察が展開されており、必読の内容だ。
詳しくは読んでもらいたい。
今後長く続く、人口減少、少子高齢化はなかなかヘビーだ。
私も次の経営者も延々と下りエスカレーターを歩むが如くだろう。
今、印刷業界では廃業や製造をギブアップする同業者が増えている。
市場縮小、採用難、ネット印刷の隆盛が主な理由だ。
しかし、道は必ずある。
混沌とした環境だからこそ、価値相関図を思い浮かべ、単純な競争以外の打ち手を探して欲しい。
5回は読んで欲しい。