イノベーションのジレンマ | 株式会社 丸信 社長のブログ

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株式会社丸信 代表取締役 平木洋二のブログ
包装資材販売、シール・ラベルの印刷、紙器印刷加工業を営む株式会社丸信の社長のブログです。

大晦日は格闘技のPPV観戦、ひと眠りして、朝まで生テレビにも後半から参戦。元旦朝から10キロランしながら一人3社参りを済ませ、一風呂浴びてから、お雑煮、御節料理と酒を満喫したが、2日午後から体調が悪くなり、3日朝に病院でコロナ陽性判定。そこから2日間は激しい喉の痛みと鼻づまりに悩まされた。

買い物も行けず、仕方なくUberEatsのお世話になった。ホカ弁だけでなく、コンビニの商品も運んでもらった。玄関置き配で会う必要もなく便利。

 UberEatsも出前館も業績厳しいと聞いている。最近はあまり街中走っているの見なくなったが、こういう場合のセーフティーネットとして続いて欲しいサービスだと思った。

 

さて、

 

例年、お正月休み中の2日と3日で1冊は読書している。コロナで本を読む元気なかったが、成人式の連休でなんとか読んだ。

 

一昨年はドラッカーの「非営利組織の経営」

 

 

これはドラッカーが非営利組織向けに書いたマネジメントの本で、個人的な感想だけど、マネジメントの経験の少ないNPOなどを対象にしている為、他の経営者向けよりも、平易によくまとまっている。ドラッカー入門書として最適な一冊かも。

 

昨年が「アフターデジタル」

 

 

こらは衝撃的だったのでブログに残した。

 

 
そして今年は本棚で長年寝かせておいた「イノベーションのジレンマ」
長く積読となったのは、難解で読みづらい本だからだ。

 

 

日本語訳の初版は2001年だから、もう結構古い本だ。

業界を支配していた巨大企業が、優れた企業戦略ゆえに、破壊的イノベーションへの対応を誤り、滅んでいくジレンマを解き明かし、既存事業を破滅させる可能性を持つ破壊的イノベーションに対して、どう対処すべきかを解説している。

 

ベタな事例で恐縮だけど、カメラの事例がやっぱり分かり易いか。

 

 

破壊的イノベーションである「デジカメ」が登場した当初は、画素数も粗く、業務用としても家庭用としても利用可能なレベルではなかった。まだまだフィルム用カメラが主流であった。しかしながら、持続的イノベーションにより、徐々に画素数を上げながら、価格も低価格に抑えられた。記憶では普及型デジカメの画素数が200万を超えたあたりから、需要が置き換わったような気がする。

 

持続的イノベーションが行われるうちは、それまでの大手が強い。

フィルムカメラに関しては、フィルムメーカーがフィルムの製造・販売・現像所からなる巨大なバリューネットワークを構築していた。

彼らは決してイノベーションに無頓着だった訳でもない。コダックはカシオがデジカメの普及機を発売した1995年から遡ること20年も前にデジカメの試作に成功している。

 強固なバリューネットワークを抱えていたが故に、これをアンバンドル化する決断ができなかったのだ。

 

そして歴史は繰り返す。

 

iPhoneという破壊的イノベーションが誕生。

ここから持続的イノベーションにより、スマホに搭載される小型のカメラモジュールが画素数を断続的に上げて行く。

それが消費者の受け入れ可能なレベルを超えると、ハイエンドの需要を除き、デジカメは一気にスマホに置き換わった。

 

 実績のある企業はどうしても、現在の顧客や株主から制約を受ける。

持続的イノベーション下ではそれが有効に働くが、破壊的イノベーションの前では無力であったり、足枷になり得る。

デジカメの試作品などを有力顧客や販売店に持ち込んでも、そんなことより現在のフィルムカメラの性能を上げるように圧力が掛かる。

 また株価を維持したい大企業はどうしても成長率の維持に拘らざるを得ない。破壊的イノベーションは当初市場規模が小さすぎて、実績ある企業が新事業として取り組むには小さすぎるのだ。

 

そうこうしている間に、デジカメという破壊的イノベーションも、持続的イノベーションを繰り返し、消費者に受け入れられるレベルに到達してしまう。

 

これがイノベーションのジレンマだ。

 

これを回避するには?

 

膨大な過去の事例から著者クリステンセンはこう結論づけている。

 

破壊的イノベーションの予兆を感じたら

・既存市場や既存顧客、既存組織から制約を受けない、小さな組織で取り組む。

・全く新しい市場なので綿密な計画は不可能で、最初から大きな投資はしない。最初のアイデアに全てを賭けず、試行錯誤、学習と挑戦を繰り返す余裕をいつも残す。

・破壊的イノベーションの特性を評価する新しい市場を開拓する。つまり破壊的イノベーションは技術的な挑戦ではなく、マーケティング的な挑戦である。

 

印刷産業ならどうだろうか?

 

破壊的イノベーションと言えるのはインターネット、デジタル印刷などだろうか?

 

インターネットを駆使した印刷通販が登場して四半世紀。2003年に20億ちょっとだった市場規模も2018年で900億以上。最終的には2000億くらいまでいくと言われている。

 私もまだ営業担当している頃(15年~18年くらい前かな)。弊社もネットで印刷物売って見ようと、コードを書けない私でも可能なブログで簡単なHPを作成し、電話番号を強調して、そこにアドワーズで広告をかけてみた。

すると、、

 

電話鳴りっ放し

 

宝の山を見つけたと思った。

しかし、対応をお願いしていた女性からは一人では忙し過ぎて、

「もう広告ストップしてください」

と言われる始末。

電話を受けたり、見積り作成したり、サイトを改善していくリソースを全く備えていなかった。私も今のように会社を采配できる立場でもなく、自分の担当営業もありで、中途半端な対応の状態を続けてしまった。

(今は専任チームが担当している)

 

あの時に別組織にして、集中してリソースを割いていれば、、まったく違った景色を見ていたかもしれない。どうしても既存のお客様へ会社のリソースを大きく振り分けざるを得なかったのだ。

 

今、印刷通販でスケールしている企業は、もともと既存の設備や顧客基盤といったレガシーを持たなかった企業が多い。例外もあるがほぼ元製版会社や零細印刷会社だ。失うものが無かったからこそ、インターネットという破壊的イノベーションに全力で取り組めたのだろう。

 レガシーが大きな企業ほど既存のお客様への対応や既存設備の稼働、新規投資においても制約を受ける。組織全体も破壊的イノベーションを受け入れ難く、過小評価しがちだ。

我々も既存のお客様からの高まる品質要求に応える為に、高額な検査装置に大きな投資も必要となり、そっちを優先した。(有効な投資だったと思う)

 

限られたリソースを何に振り分けるか?

 

持っているものが大きいほど、破壊的イノベーションは見て見ぬふりされがちだ。なので有力印刷企業ほど印刷通販への参入を躊躇し、遅れた。未だ未参入企業も少なくない。

時が経ち、これだけ市場規模が拡大すると、今日でも毎日のように新たな印刷会社が印刷通販に参入している。

 

しかし、今から追いつくのは容易ではない。

我々の業界もイノベーションのジレンマに陥っていたのだ。

 

今後業界は技術面ではデジタル印刷(インクジェット化など)という破壊的イノベーションが控えている。今はランニングコストなど様々な面で導入は時期尚早と判断しているのだが、、、

この著書に従うのならば、いち早く小さな組織で、リスクを抑えながら参入してみるのが良いのかも知れない。

既存の営業担当者が今のお客様に販売するという発想ではダメで、新たな市場を探す為に参入するのだ。

 

いつか次の「破壊的イノベーション」がやってくるだろう。

どんなものかは予測不能だけど、逃げずに対応したい。