合成の誤謬 | 株式会社 丸信 社長のブログ

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株式会社丸信 代表取締役 平木洋二のブログ
包装資材販売、シール・ラベルの印刷、紙器印刷加工業を営む株式会社丸信の社長のブログです。

月に2回の投稿。

これが結構大変なのだ。

ただ思いついた事を書けば良いというものでもない。

「さすがにこれはまずいか」

公開せずにせずお蔵入りしている投稿もいくつもある。好き勝手、書いているようで、一定の配慮をしているつもりだ。


投稿すべきか迷う、、


弊社にはいくつかの事業がある。

そのうちの一つで、今、多くのサプライヤー(仕入先)から値上げ要請を受けている。

過去一度も経験がない。

主材料から副資材に至るまで。この機を逃すまいとする姿勢を感じている。

 

他の事業(紙器・紙箱の印刷)の主材料である白板紙(コートボール)などは製紙メーカーの意向でこれまで何度も値上げを受け入れて来た。

しかし本事業では10数年前にほんの僅か主材料の値上げがあったものの、すぐに「なし崩し」となった記憶がある。

主材料は単純な「紙」よりも製造工程が多く、付加価値が大きいのもあるだろう。

 白板紙を製造している製紙メーカーは淘汰・統合により大手2社と中堅1社くらいしか国内にプレイヤーが存在せず、海外製は品質が極端に落ちる。紙の代理店や紙商さんなど流通経路が厳格に管理されていて簡単に値崩れも起こせず、コンバーター(印刷会社)が値上げに抵抗するのは難しい。常に少数の方が力を持つ。製紙メーカーの意向が通り易いのだ。

 一方で本事業では、サプライヤーの数は白板紙よりも若干多いものの大差はない。

一番の違いは最大手のメーカーが自ら主材料を製造、つまり内製化していることだろう。

 一般の商業印刷業界に例えるなら、上場している大手印刷会社がすべて1社に吸収合併し、さらに川上の大手製紙会社と大手印刷機メーカーまでM&Aしたようなガリバー企業がこの業界のリーダーなのだ。(なんと製造設備までも内製化している)

リスクをとってルールを変え、垂直統合型の素晴らしいビジネスモデルをかなり前から構築している。

 

 困ったことに(我々からすると)、このガリバーは歴史的に一度も値上げしたことがない。(正確に言うと値上げを表明して組織的値上げに動いたことがない)色々な付加サービスも無料でご提供なさる。


今回も値上げ表明しないのではないか。


そんな憶測が飛んでいる。

圧倒的なリーダーがデフレ志向だと、その業界で生きるサプライヤーや我々のような中小メーカーはそれに引っ張られる。

この事業においては我々もお客様に対して一度も値上げをしたことがない。できないのだ。

 

構造的に総需要が減っていくことが確実なこの国で、独占的リーダーが持続的成長を期す為に取るべき道は本来「グローバル化」であろう。

しかし、国内の総需要の総取りを狙っているようにも見える。

ま、言っても、他社はコントロールの外だ。

しかも合理的な判断をするとは限らない。そして歴史とレガシーの資産に起因して先方には先方のロジックと戦略がある。

 

ニッチながら需要が比較的堅調だったこの業界だが、ここに来て、人口減少やコロナの影響で総需要が減ったのであろう。

重要な副資材を製造するメーカーは値上げの理由の一つに「需要の減少」を挙げている。

この副資材はサプライヤーが限られていて、さすがにガリバーも内製化できないと思われ、ある程度の値上げは成功するかもしれない。

しかし、この業界全体が最終ユーザーに値上げできるかはこのガリバーの行動次第だろう。

 

もし値上げすれば、一番恩恵を受けるのは間違いなくこのガリバー企業だ。

 

値上げの際に多少の仕事が相見積もり取られて、我々のような中小企業に流れたとしても、たかが知れている。

なぜならば、ガリバーの生産量を肩代わりできるコンペティターは国内には1社も存在しないからだ。彼らの大部分の仕事は競争無しで値上げできるはずだ。

 ちょっと計算すれば、売上の増減率よりも、粗利率の方がP/L上のボトムラインへの感度が高いのは自明だ。

 我々中小メーカーは先頭に立って値上げなどできない。すでに全国津々浦々に営業網を持つガリバー企業に仕事が流れるだけだ。

弱者は強者との争いをできるだけ避け、強者の行動を見極めてから違う道を模索するしかない。

ただ、これだけ人件費や物流費が上がっているのだから、いつまでもデフレ志向では業界全体に未来がない。

事実、より人件費などの経費の上昇率の高い関東の同業メーカーからは「この機に値上げを」という機運も高まっていると聞く。

地方よりも都会のメーカーの方がより切実で良識があるのだ。

 

できるだけ低コストで作り、できるだけ低価格で販売する。

 

これが製造メーカーの使命だと信じて疑わずにここまで来たけど、

行き過ぎれば、サプライヤーもコンバーターもそこで働く人も疲弊する。

30年もの長きにわたり、この国では物価も給与もほとんど上がっていないのだ。先進国では有り得ない話だ。

 

不景気だから、将来が不安だからと、1円でも安いものをと全国の主婦が「安さ」を買い求め、節約し、お金を消費でなく貯蓄に回した結果、回りまわって夫の給料が長期間上がらないことにつながった、或いはリストラされたってのがこの国の現実だ。

 

分かっちゃいるけど、、、

 

いざ自社の事となると簡単に原材料が上がるのを容認できない。

この事業の変動費率は低くない。

お客様から「他社が値上げしてきたから」と相見積りの依頼があれば、安値で受注しようとしてしまうだろう。

こんなんでこの業界が良くなる訳はないと、理屈で知ってはいるが、

いざとなると自分だけが得をするような行動を選択してしまう。

私だけではないだろう。

 

結局、変えられるのは自社だけだ。

 

不味いラーメン屋は、あれこれと考える前に、まずはラーメンの味を改良するのが先決だ。

まだ最高に美味いラーメンを完成させてない。

 

工夫の余地はまだあるはずだ。


朝のオフィスにて