ご冗談でしょう、アトキンソンさん | 株式会社 丸信 社長のブログ

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ワクチンの先行接種により、いち早くコロナ禍を脱したかに見えたイスラエルで感染が再び広がっている。

 

 

 これによると、変異株への現ワクチンの効果が限定的なのか、それともワクチンの効果が4か月~6か月しか保たれないのか、の何れかであろう。現在50歳以上へ3回目の接種を進めているようだ。

 

 先月末に2回接種終わったので一安心と思っていたけど、まだまだコロナ禍が続くと見た方が良さそうだ。塩野義のワクチンの治験もベトナムで始まるようだし、国産の治療薬などもそろそろ出て来てほしい。

 

ま、自分でコントロールできないことは心配しても仕方ない。

今やれる事、やるべき事を粛々と進めていく。

 

ということで、、

 

今朝も早起きしてオーディオブックを聴きながら、ランニング。

昨日からデイビッド・アトキンソン氏の著書を聴いている。


(ここからは長文の上に、中小企業の経営者には極めて不快な内容です。ご機嫌斜めの方は読み飛ばしてください。読んで不快になっても、あくまで本の要約で私の意見ではないことをお忘れなく)


菅総理の経済ブレーンとして知られる彼。私より4歳上。オックスフォードで日本について学び、ゴールドマンサックスでは伝説のアナリストとして活躍、その後は国宝や重要文化財の補修を行う日本の中小企業の社長を務めている。30年以上日本に住んでいて、決して反日ではない。

 

ただ、これまで雑誌で読んだ彼の主張は素直に聞けない所があった。

先日入社した中途社員との採用面接で

 

「社長はアトキンソンさん嫌いですよね?」

 

と聞かれてしまう始末。過去ブログで何度か「あの外人さん」と表現し、批判していた。

 

なぜならば、彼の主な主張は

 

「日本の一人当たりの労働生産性がOECD加盟国中26位と低迷している諸悪の根源は中小企業にある」

 

であるからだ。さらに、それを是正する為に

 

「段階的、継続的に最低賃金を上げよ」

 

である。

中小企業経営者なら誰しも反発したくなる。

私も以前から氏の記事を雑誌で読んでは憤りを感じていた。

著書の中ではもっと辛辣に中小企業経営者の能力不足をやり玉に挙げている。

 

先日、過去最大の最低賃金の引上げが発表されたが、おそらくアトキンソン氏のこの主張がこの政策に影響を与えたと思われる。

 

コロナ禍で苦しむ経営者にとっては全く理解できない政策であろうし、

日本商工会議所など中小企業3団体は猛反発をしている。

 

ただ、事実として知っておかねばなるまい。

 

日本の最低賃金はOECD加盟国の中で下から3番目とかなり低いのだ。さらに賃金の平均値に対する最低賃金の割合は0.36で下から4番目である。

社会的弱者を中心に最低賃金近くの賃金で働く労働者の割合も高い。

つまり、そもそも最低賃金が低い上に格差も大きく、貧困が生まれやすい状況である。

 日本の子供の7人に1人が貧困状態との調査結果とも符合する。


 まだ先進国の中で比較的大きな人口があるから国力を維持できているが、質としてはもう没落していて、後進国に仲間入りしつつある。

 

コロナ前に新婚旅行でハワイに行ったが、物価の高さには驚かされた。というより日本の物価が安すぎるのだ。主要先進国の首都でワンコインでランチが済ませられるのも、探せば居酒屋で3000円~4000円という安さで飲み放題付きで料理が提供されるのも東京くらいではないか。

 

人口減少社会では需要が構造的に減り続けるので、デフレに陥り易い。

 「需要が減ったので供給を調整する為に私が犠牲になって廃業します」って企業聞いたことない。

 

残された需要を価格競争で奪い合う泥沼のイス取りゲームを続けた結果、「失われた10年」は、今ではもう、「失われた25年」になりつつある。その間、賃金もほとんど上がらずだ。



主要先進国では最下位だし、2019年にはお隣の韓国にも抜かれている。

 

 

なんてことだ!

 

アトキンソン氏の主張は

 

この主な原因が労働生産性の低さにある。その労働生産性が低い要因は生産性の低い中小企業数の多さ、および、それをもたらしている国の過度な中小企業保護政策にあると。

 

 大企業間の生産性の国際比較では先進国と日本とでほとんど差がないのに、中小企業間の比較では日本は大きく劣っている。

 その中小企業は世襲で大した能力もない経営者が成長もせず、提供価値も上げず、イノベーションも起こさず、社員の給料も上げずにいる。にもかかわらず経営者だけは高給で会社の経費で高級車にゴルフ、夜の飲食と贅沢している。そんな特権階級が200万人も300万人もこの国に必要ですかと。

 世界最低レベルの日本の大学教育(特に文系)により、論理的に物事を考えられない経営者が多い。十分な資質を持っている経営者は大企業に偏在していて、中小企業には稀。企業規模と経営者の能力には明らかな相関があると。

(しつこいですが、あくまでアトキンソン氏の主張です)

 加えて国は金科玉条のごとく、「中小企業は国の宝」的に中小・零細企業を保護し、競争も促さず、小さいままでいることを許容していると。この国際的に低すぎる最低賃金も事実上の中小企業保護政策であると。

 

残念ながら、事実として企業規模と生産性には明確な正の相関がある。


中小企業数が国の保護政策により、過剰に偏在していることが国全体の生産性を下げてしまっている。

 

最低賃金を強制的に上げれば、中小企業経営者にも労働生産性を高めようとしたり、成長して規模を大きくしようというインセンティブが働く。

 

つまり努力する。

 

対応できない企業は自然と消えていく。

需要が構造的に減るこの国で、デフレを防ごうとすれば供給を併せて減らし続けるしかない。その意味でも合理的だ。

しかも給料が上がれば、国民の所得も増え、需要も増えるというのだ。

 

そして中小企業に成長を促し、中堅企業、大企業へと育てる為に国の予算を投下すべきと。そのためには企業にM&Aも促していくべきだ。

 

ざっくりと

 

GDP = 労働人口 × 1人当たりの労働生産性

 

とする。

昔から労働生産性を上げる議論は放置され、高度成長期は人口ボーナスにより日本は世界第2位の経済大国になったが、その時も実は生産性は決して高くなかった。

近年は女性や高齢者の就業率を上げ、労働人口を増やすことでなんとか国力を維持してきたが、もうそれも限界で、今後、労働人口はこれまでどの国も経験したことないペースで減っていく。

 

となれば、生産性を上げる以外に国力を維持する道はない。

最低賃金が上がったからと言って、反発する大企業は存在しない。

なぜならば、そもそも給与水準が高く、最低賃金とは無関係だからだ。

もちろん社員さんも反対しない。

反発するのは中小企業経営者とその団体だけだ。

 

失業者が増える?

 

実は氏はこの点についても、豊富な過去の他国の事例から論破している。最低賃金を上げたからといって失業者が増えるという事実はない。(極端に上げると一時的にはあるが長期的にはない)

 

経営者は最低賃金が上がるに従い、生産性を高めるしかない。

規模と生産性に相関がある以上、企業を成長させる以外、生き残る術はない。そして企業規模が大きくなれば自ずと研究開発やイノベーション、輸出も増え、企業収益は増える。国民も豊かになり、GDPは増え、日本の存在感もかつての輝きを取り戻せるというのが氏の結論なのだ。

 

(何度も言いますが、あくまで、アトキンソンさんの主張です)

 

ただ、私、最初はファイティングポーズを崩さずに聴いていたが、綿密な調査に基づく数々のファクト(事実)に裏付けられ、そして組み立てられた論理性の高い氏の主張に途中から白旗を揚げてしまった。

 

食わず嫌いなだけだったかも。


これまで浅はかにも感情論だけで批判してきた自分を恥じている。

 

とは言え、素直に聞けない経営者も多いだろう。

また経営者は政治に熱心な人が多い。自分たちの既得権を脅かす氏の主張を簡単には受け入れまい。政治家にも働きかけるだろう。現政権が秋以降も存続するかも微妙。政策が変わるかも。

 

私も全面的に氏の主張を指示する訳ではない。

いみじくも氏は著書の中で英国やドイツ経済が復活し、現在強さを保っているのは移民政策に依るところ(移民による人口増)が大きいと書いている。

生産性向上一本という彼の主張よりも、労働人口を維持する為に移民(あるいは外国人労働者)を受け入れることも真剣に議論・検討すべきだと思う。そうでないと、人類が初めて体験する労働力人口のあまりにも急速な減少は補えない。

 

読んで(聴いて)、改めて今後の経営環境の厳しさを再確認。

 

人の採用はもっと難しくなる。(と言うことは最低賃金に関わらず、自ずと賃金は需給バランスにより上がる)

加えて、身を置いている業界自体も構造的に厳しい。


自分がさらに努力するのは当然として、複数の後継者候補を厳しく鍛えて、競争させなくてはならない。


相当気を引き締めないと。

 

もちろん、歯を食いしばって、いや、目をつぶってでも業界や地域の平均以上には給料は上げたい。

 

言っちゃった、、