韓国時事ジャーナル誌の記事の翻訳(原文へのリンク

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統一教会公益財団200億ウォン台の脱税疑惑… 役職員が作った新生業者に寄付金134億ウォン使用

孝情際文化財,5年間寄付金を支給した会社4社全てが役職員設立会社だと明らかに。

「横領問題で浮上しかねない事案」. . . 京畿北部警察、理事長など財団関係者10名を捜査中

 

世界平和統一家庭連合(以下、統一教会)傘下の財団法人孝情国際文化財団(以下、孝情財団)が、寄付金収益134億ウォンを役職員が設立した新生企業に投資したことが確認された。公示から漏れたという支給金と系列建設会社に渡した工事費を加えると 問題になった金額は200億ウォンを超える。これと関連して脱税・横領疑惑が浮上した。非営利民間団体の資金関連違法行為としては異例の巨額であるため捜査当局も注視している。

 

国税庁公示資料によると、孝情財団は2019〜23年の5年間、合計389億300万ウォンの寄付金を受け取った。寄付金提供先は、国内の信徒を管理する統一教会の協会をはじめ、統一教会の教会である清心教会、統一教会傘下のもう一つの財団である孝情グロ-バル統一財団など、すべて統一教会関連団体であることが確認された。孝情財団のような公益法人は、相続税及び贈与税法(相贈税法)上、寄付金など収益金を公益目的事業にのみ使用しなければならない。そうではない場合、贈与税が課せられる。孝情財団の定款上、主な目的は「青少年の正しい価値観確立のための支援事業」だ。

 

孝情財団は寄付金収益の34%である134億ウォンを目的事業用途だと明らかにし、会社4社に支給した。その4社は△スタジオピーチ△HJスマートエデュ △ツーマンフィルム △孝情ファミリーコーポレーションなどだ。しかし、ここはすべて孝情財団の役職員が設立した法人であることが分かった。

 

設立6ヵ月目に資本金785倍の投資誘致

 

スタジオピーチは、パク某孝情財団事務局長が2020年7月資本金1千万ウォンで作った映像製作業者だ。時事ジャーナルが入手した孝情財団内部文書によると、財団は2021年1月スタジオピーチとYouTubeコンテンツ・3Dアニメーション制作のため契約を結んだ。外形は外注契約だが、契約書の題目は「投資契約書」になっている。投資金額は78億5千万ウォンだ。設立6ヵ月しか経っていない零細企業に資本金の785倍に達する巨額な投資をすることを決めたのだ。スタジオピーチにはホームページがなく、履歴も調べられない。

 

地上波外注制作会社のあるPDは「海外で撮影する地上波ドキュメンタリーも1編あたり製作費が1億ウォンにもならないのに、ポートフォリオもない新生企業に数十億ウォンを投資するということは正常だと見るのは難しい」と指摘した。釈然としない所は他にもある。孝情財団の内部文書である「出捐財産使用内訳」によれば、スタジオピーチに初めて寄付金を支給した時期は2020年9月と書かれている。孝情財団が投資契約を結んだのは2021年1月だが、それより4ヵ月も前にお金が渡されているのだ。当時の支給目的は「青少年メディア教育事業運営費(5~9月)」で、金額は3億4250万ウォンだ。

 

その後も孝情財団は運営費の名目でスタジオピーチに2020年10~12月の3ヵ月間、毎月7250万ウォンずつ支給している。このように投資契約締結前に流れた寄付金だけで計5億6千万ウォンだ。これを含め公示資料上スタジオピーチは過去5年間で50億2500万ウォンを受け取っている。時事ジャーナルは4月24日、ソウル江南区スタジオピーチ事務所を訪れ、孝情財団の投資経緯や結果などについて質問した。代表ムン某氏は「今は言えることがない。整理して連絡する」と記者を返したが、25日午後まで返事はない。

 

孝情財団のもう一つの被投資会社である孝情ファミリーコーポレーションは、チェ・ヒョンソク孝情財団副理事長が2021年1月に設立した。事務室は京畿道加平郡孝情財団の建物に置いている。資本金は100万ウォンだ。孝情財団はここに3億ウォンを投資するという契約を2021年2月に結んだ。青少年支援事業とは距離のある「カフェ運営」のためだ。以後、実際に2億3200万ウォンが支給された。

 

青少年支援のために投資したという場所が「キッズカフェ」

 

孝情ファミリーコーポレーションが運営するというカフェは京畿河南にある「Hキッズカフェ」を指す。利用可能年齢は9歳までで、肝心な青少年は利用できない。ここは建築面積806平方メートルの建物2階を丸ごと使用している。不動産所有者は統一教会だ。すなわち場所は統一教会が提供し、資金は孝情財団が寄付金で充当し、運営は孝情財団副理事長が作った会社が受け持っている構造だ。特に、チェ・ヒョンソク副理事長が孝情財団の法的責任を分担するなど登記理事という点で内部取引の可能性が提起されている。相続税法施行令では、公益法人の内部取引を贈与税課税対象と規定している。

 

その他に出版業者のHJスマートエデュと映画製作会社のツーマンフィルムは孝情財団の職員が設立し、代表を務めている。資本金はそれぞれ100万ウォン、5千万ウォンだ。両社は設立以後、速戦即決で孝情財団と投資契約を結んだ。HJスマートエデュは設立1ヵ月後の2020年10月に3億3700万ウォンの投資契約をした。また2022年2月に4億9200万ウォンで追加契約書を書いた。100万ウォンの会社が1年半ぶりに8億2900万ウォン相当の投資を誘致したわけだ。その後、渡された金額は契約書で確認される金額より多い25億4900万ウォンだ。

 

ツーマンフィルムの場合、2019年11月18日に設立されたが、わずか1週間後の2019年11月25日に投資契約が成立された。さらに契約締結の日付は、ツーマンフィルムの事業開始日である2019年12月1日よりも早い。 契約目的は「ドリームズ」(仮題)という映画を制作することだった。契約書に出てきた総製作費は53億ウォンだ。孝情財団はこの金額を全部投資することにした。それだけでなく2020年10月、ツーマンフィルムはまた投資契約書を書き「映画の円滑な制作のために3億ウォンを追加投資する」と明らかにした。

 

孝情財団は実際、ツーマンフィルムに制作費総額である56億ウォンを支給したと公示した。被投資会社4社のうち最多金額だ。映画「ドリームズ」は当初2022年上半期に公開されることになっていた。しかし同名の映画は公開されておらず、代わりに昨年公開された映画「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」がベルリン映画祭の受賞作に選ばれた。事実関係を確認するため4月24日ソウル龍山区のツーマンフィルム事務所を訪れた。ドアは施錠され、外には会社を知らせるいかなる看板もなかった。

 

以上の投資契約金を除いて国税庁が公示している資料をもとに孝情財団が会社4社に支給した金を集計してみると134億600万ウォンだ。だが、匿名を求めた孝情財団内部関係者A氏は「2019〜23年公示に漏れた金額が35億700万ウォンさらにある」と主張している。

 

A氏が作成して時事ジャーナルに渡したPDFファイルには公示漏れ金額の使途と支給日が書かれていた。これを含めると、投資金という名目で執行された寄付金は計169億1300万ウォンだ。

 

このような巨額の投資契約に対して孝情財団は「問題がない」という立場だ。会社4社すべて役職員の保有持分が30%未満で特殊関係者に該当しないという理由のためだ。 しかしA氏は「法人設立に必要な資本金も役職員に全て渡し、持分だけを30%以下に抑えている」とし「問題になる所持を避けるためのごまかしに過ぎない」と主張した。

 

特殊関係の有無は別として、寄付金の使用目的自体が違法だという主張もある。匿名を求めた税務業界関係者は孝情財団の寄付金支出に対して「法で規定した固有目的事業に使ったとは言い難い」と指摘した。 続けて「公益法人は固有目的事業にお金を使うという条件で贈与税を減免されるが、この場合は追徴対象」とし「外観上投資形式を借りてお金を還収したとしても問題がないわけではない」と説明した。ソウル江南のある法人会計専門税理士は「投資経緯と結果物が明らかでなければ脱税疑惑を避けるのは難しい」として「孝情財団の場合は、事実上外注用役費を支給しているのに税金に対する領収書がなければ、横領問題まで浮上しうる事案」と主張した。

 

寄付金執行を総括した孝情財団の最高責任者は尹煐鎬理事長だ。韓鶴子統一教会総裁の秘書室事務総長を務めた彼は2017年9月理事長職に就任した。その前まで孝情財団の名称は「清心国際文化財団」で、当時寄付金なしで独自の収益金で運営されていた。そうして尹理事長が就任した翌年の2018年から孝情財団は統一教会系列団体から毎年数十億ウォンの寄付金を受け取り始めた。寄付金が目立って増えた時点は、尹理事長が2020年5月に統一教会世界本部長に抜擢された後だ。2020年に統一教会が単独で孝情財団に寄付した金額は6億ウォンだったが、2021年には31億ウォンと5倍以上増加している。これに伴い、その年の寄付総額は初めて100億ウォンを突破した。

 

孝情財団「投資契約は手続きに合わせて行われた」

 

京畿北部警察署は、寄付金の会計と関連して、尹理事長をはじめとする孝情財団の関係者10名を4月8日に立件し、捜査に着手した。適用を検討中の容疑は脱税と背任、横領などだ。その他に寄付金を利用した外注工事の適法性も調べていると伝えられた。 孝情財団は寄付金の収益のうち、統一教会系列の建設会社である鮮苑建設に2019年66億8千万ウォン、2020年22億8300万ウォンなど89億6300万ウォンを支給した。主な目的は、孝情財団が管理する京畿道加平郡孝情文化苑のリモデリング工事だ。鮮苑建設と役職員の会社4社に使われた金を全部合わせると256億7600万ウォンになる。

 

一方、3月には孝情財団の寄付金会計が及ぼす波紋を憂慮する書信が統一教会系列会社職員名義で作成された。時事ジャーナルが入手した該当書信には「問題の核心は孝情財団が投資した会社の代表が全て役職員だという点」「公益法人財産の不当な損失は道義的責任を越え法的責任を負わなければならない事項」「統一教会全体の未来と連結できる可能性などを検討しなければならない」などの内容が含まれている。すでに内部で事案の不法性を認識していたことを示している。孝情財団関係者は諸般の疑惑に対して「脱税行為はなかった」とし、「投資契約は事業妥当性および現況を検討した後、手続きに従って行われた」と主張している。投資結果に対しては「会社別にそれぞれの産出物があるが、経営上の理由でその内訳は共有できない」と答えた。

 

「家族」として復興した「政治」で衰退した統一教会

信徒世界最多は日本… 安倍殺害後、日本政府、裁判所に「解散命令」請求

 

世界最大の教団と呼ばれる世界平和統一家庭連合は、故文鮮明総裁が1954年に創立した新興宗教だ。本来は「世界基督教統一神霊協会」として出発したが、1997年に制度圏宗教の枠組みから抜け出そうという趣旨で名称を「世界平和統一家庭連合」に変えた。その後、文総裁の7男文亨進が教団世界会長に就任し、2010年に統一教会という名称を公式化した。しかし、2013年文総裁の死去後、総裁になった夫人の韓鶴子が再び世界平和統一家庭連合に名称を戻した。教団側はこれを略して「家庭連合」と名乗っているが、対外的には「統一教会」として広く使われている。

 

統一教会は1966年、経典「原理講論」を通じて教理を確立した。核心内容はイエスが韓国に再臨するので、人類はイエスを中心にして一つの大家族社会を成し遂げなければならないというものだ。キリスト教系の色を帯びているが、家族と統合の価値を重視するこのような教理は、宗教特有の障壁を低くしたという評価を受けている。これを土台に統一教会は宗教界だけでなく政治·経済·文化·言論など多方面に勢力を拡大していった。

 

統一教会は、現在宣教活動中の国が世界194ヵ国だと主張する。この中で最も勢力が大きい国は本山である韓国ではなく日本だと知られている。 文総裁が1970年代に米国に進出した時、彼に従った大多数の追従者も日本人だったという。さらに、統一教会の世界本部である京畿道加平郡の「天正宮」建設寄付者のうち、日本人の割合は90%以上だという。日本の信徒数は1万人という話から60万人という説まで多様だ。ただ、統一教会の事情に詳しい外部関係者は「とにかく事実は全世界で日本信徒が最も多いということ」と話した。特に、安倍晋三元首相が統一教会関連行事に送った祝辞は、統一教会の日本国内の影響力を象徴的に示している。

 

日本統一教会の勢力は2022年に変曲点を迎える。同年7月、安倍元首相を銃で殺害した山上徹也が「母親が統一教会に巨額の寄付し、家庭が破綻した」と暴露したのだ。その後、統一教会と日本政治界の癒着関係がスキャンダルとして広がり始めた。これが決定的となったのは、与党の自民党国会議員381人のうち、過半数に近い179人が統一教会と関連があるという事実が自民党内部の調査で明らかになったことだ。自民党所属の岸田文雄首相も、統一教会との関わりの疑惑を払拭できず、支持率の下落を経験した。

 

結局、日本政府は昨年10月、統一教会に対する解散命令を裁判所に請求した。その適法性に対する訴訟は現在進行中だ。宗教団体に対する解散命令が確定すれば、法人格を剥奪され、税制優遇を受けることができなくなる。すでに統一教会内外では「安倍殺害以後、日本国内の献金収入が急減し財政状況は良くないだろう」という推測が提起されている。孝情財団の場合、2022年の寄付金の収益が42億ウォンで、前年比で半分以下に減っている。