アルミン・ジョルダンの遺産 | Pacific231のブログ -under construction-

Pacific231のブログ -under construction-

O, Mensch! Gib Acht! Was spricht die tiefe Mitternacht?


去年の秋ごろに購入した13枚組のBOXセット。高くもなかったが安くもなかった。
今まで書かずにいたのは、面倒くさいことになりそうだったから。

 

というのは、収録内容をロケーションデータも含めて書き出してみたところ、どえらい分量になってしまったのであるw。なので、この記事では一番下に押し込んである。ヒマな方は見てやってください。

ブツはといいますと、これです。

 

 ◆アルミン・ジョルダン/フレンチ・シンフォニック・レコーディングス

 Armin Jordan / The French Symphonic Recordings [ELATO-ICON 0190295953539]

 

ジョルダンの没後10年を記念してまとめられたBOXである。
中身はフランク、ショーソン、デュカス、シャブリエ、フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルなど。オケも手兵のスイス・ロマンド管のほかバーゼル響、モンテカルロ・フィル、モンテカルロ国立歌劇場管、ローザンヌ室内管、フランス国立管、フランス放送新フィルなど様々。収録場所も様々。詳しくは一番下をご覧くださいw

 

録音は77年のものが少しあるほかは大半が80年代のもので、音はとてもいい。
演奏もなかなかの好演ぞろいだと思った。アクというものが全くなくとても美しい。安心して聴けるどころかいつの間にか惹き込まれてしまう、という類のもの。

 

例えばスイス・ロマンドだが、アンセルメ時代のDECCA録音の、きらびやかだがやや薄手、というイメージを持って聴くと、いい意味で裏切られることになる。ほどよい厚みと柔らかさがあり、これはちょうど80年代にナマで聴いた記憶と一致する。


そう、実は過去記事「スイス・ロマンドの記憶」(2015-11-21 22:12:55)にあるとおり、私はジョルダン/スイス・ロマンドの生演奏を秋田で聴いているんですね。
ちょうどこのコンビの録音活動が最も活発だった時期で、指揮者もオケも自信に満ちた感じだったな。

 

このセットに手を伸ばした理由の第一は、フランクの交響詩がまとめて聴けるということ。交響曲ニ短調にフィルアップする形でいろいろと出てはいるけれど、交響詩をまとめた音盤ってなかなか無かったわけで、これは有り難かった。

 

いろいろと盛り沢山な中で、特にいいと思ったのはデュカスの一連の作品。今まで聴いた中では一番だった。ショーソンもいい。ドビュッシー、ラヴェルは実はあまり期待していなかったのだが、思いのほかの好演だった。欠点を挙げろと言われれば困るぐらいのレベルにある。


「マ・メール・ロワ」と「クープランの墓」は、スイス・ロマンドとローザンヌ室内管の二種類の演奏が楽しめる。ただ、「マ・メール・ロワ」が二種類ともバレエ用全曲版でなく組曲版である点と、「ダフニスとクローエ」が、これも全曲版でなく第一、第二組曲版である点がやや勿体ないとは思った。

 

デュカス:「ラ・ペリ」の素晴らしい演奏を貼りたかったのだがYoutubeには見当たらない。
代わりにというわけではないが、ドビュッシーの四手のためのピアノ作品の管弦楽バージョンを。

 

ドビュッシー:六つの古代碑銘(E・アンセルメ編)/アルミン・ジョルダン指揮 バーゼル交響楽団

  I-III

  IV-VI

 Debussy : Six Épigraphes Antiques (arr. E. Ansermet) - Sinfonieorchester Basel / Armin Jordan

 

もう一つこれ。

 

ショーソン:愛と海の詩 Op.19

  ジェシー・ノーマン(S), アルミン・ジョルダン指揮 モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団  

 Chausson : Poème de l'amour et de la mer Op.19
 Jessye Norman (S), Orchestre Philharmonique de Monte Carlo / Armin Jordan

 

13枚すべて納得いくまで聴き込んだわけではないが、今まで聴いた感じではこのジョルダンという人、フランスのエスプリとか何とかいう常套句とはやや違い、どちらかというと職人肌の指揮者なのではという気がしている。


純粋オケ作品だけでなく、ピアノやヴァイオリン、あるいはソプラノ、バリトンとの合わせなど、じつに上手くソツがない。ここまで器用なフランス「系」指揮者も珍しいのではないか。生で聴いたマーラーさえ何の違和感もなかったし、ワーグナーまでも得意としていたらしい。スイスのドイツ語圏(ルツェルン)出身ということとは別に、知性、感性と職人技との高次の均衡を備えた人だったのだろう。

願わくはオネゲルの録音を残してほしかった!

 

*          *          *

収録データ
【Disc1】
①フランク::交響的変奏曲 / ②同:交響詩「呪われた狩人」 / ③同:交響詩「アイオリスの人々」 / ④同:交響詩「プシュケ」 / ⑤同:交響的間奏曲「贖罪」
(①ガブリエル・タッキーノ(p)、モンテカルロ国立歌劇場 、1978年5月、サル・ガルニエ、モンテカルロ ②-④バーゼル響、1985年4月、マルティン教会、バーゼル ⑤スイス・ロマンド 、1987年3月、ヴィクトリアホール、ジュネーヴ)
【Disc2】
①フランク:交響曲ニ短調 / ②ショーソン:交響曲変ロ長調 Op.20
(①スイス・ロマンド管、1987年3月、ヴィクトリアホール、ジュネーヴ ②バーゼル響、1985年4月、マルティン教会、バーゼル)
【Disc3】
①ショーソン:交響詩「ヴィヴィアーヌ」 Op.5 / ②同:「愛と海の詩」 Op.19 / ③同:詩曲 Op.25 / ④ルクー:アンジェ地方の民謡による幻想曲 / ⑤同:弦楽四重奏とオーケストラのためのアダージョ Op.3
(①バーゼル響、1985年4月、マルティン教会、バーゼル ②ジェシー・ノーマン(S)、モンテカルロ・フィル、1982年7月、パレ・デ・コングレ、モンテカルロ ③ジャン・ムイエール(vn)、モンテカルロ・フィル、1980年6月、モンテカルロ歌劇場 ④⑤モンテカルロ・フィル、1982年7月、パレ・デ・コングレ、モンテカルロ)
【Disc4】
①デュカス:舞踏詩「ラ・ペリ」 / ②同:交響曲ハ長調 / ③同:序曲「ポリュークト」
(①②スイス・ロマンド管、1984年5月、ヴィクトリアホール、ジュネーヴ ③フランス放送新フィル、1984年11月、ラジオ・フランス、パリ)
【Disc5】
①シャブリエ:楽しい行進曲 / ②同:スラヴ舞曲(「いやいやながらの王様」より / ③同:田園組曲 / ④同:歌劇「グヴェンドリーヌ」序曲 / ⑤同:気まぐれなブーレ / ⑥同:狂詩曲「スペイン」 ⑦フォーレ:組曲「マスクとベルガマスク」
(①-⑥フランス国立管、1982年9月、ラジオ・フランス103スタジオ、パリ ⑦ローザンヌ室内管、1981年11月、サル・パデレフスキ、ローザンヌ)
【Disc6】
①フォーレ:ピアノと管弦楽のためのバラード Op.19 /② 同:組曲「ペレアスとメリザンド」Op.80 / ③同:パヴァーヌ Op.50 / ④同:レクイエム Op.48
(①ジャン・ユボー(p)、①-③ローザンヌ室内管、1981年11月、サル・パデレフスキ、ローザンヌ ④スイス・ロマンド管、ロマンド室内合唱団、プロ・アルテ合唱団ほか、1991年9月20、24日、ヴィクトリアホール、ジュネーヴ)
【Disc7】

①デュカス:交響的スケルツォ「魔法使いの弟子」 / ②ラボー:交響詩「夜の行列」Op.6 / ③ドビュッシー:ピアノと管弦楽のための幻想曲 / ④同:クラリネットと管弦楽のための第1狂詩曲 / ⑤同:牧神の午後への前奏曲
(①フランス放送新フィル、1984年11月、ラジオ・フランス、パリ ②モンテカルロ・フィル、1982年7月、パレ・デ・コングレ、モンテカルロ ③アンヌ・ケフェレック(p)、④アントニー・モーフ(cl)、③-④モンテカルロ国立歌劇場管、1980年6月、サル・ガルニエ、モンテカルロ ⑤スイス・ロマンド管、1988年5月、ヴィクトリアホール、ジュネーヴ)
【Disc8】
①ドビュッシー:夜想曲 / ②同:6つの古代の墓碑銘 / ③同:サラバンド / ④同:バレエ音楽「おもちゃ箱」
(①スイス・ロマンド管、1990年5月、ヴィクトリアホール、ジュネーヴ ②-④バーゼル響、1981年4月、マルティン教会、バーゼル)
【Disc9】

①ドビュッシー:三つの交響的素描「海」 / ②同:「映像」第3集(管弦楽のための) / ③同:舞踏詩「遊戯」
(①-③スイス・ロマンド管、①1990年5月、②③1988年5月、①-③ヴィクトリアホール、ジュネーヴ)
【Disc10】
①ラヴェル:組曲「マ・メール・ロワ」 / ②同:「ダフニスとクローエ」第1組曲、第2組曲 / ③同:ラ・ヴァルス / ④同:ボレロ
(①-④スイス・ロマンド管、②スイス・ロマンド放送合唱団、①③④1985年5月、②1986年2月、①-④カジノ、ヴヴェイ)

【Disc11】
①ラヴェル:道化師の朝の歌 / ②同:スペイン狂詩曲 / ③同:組曲「クープランの墓」 / ④同:左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調 / ⑤ピアノ協奏曲 ト長調
(①-⑤スイス・ロマンド管、④⑤フランソワ=ルネ・デュシャーブル(p)、①1985年5月 ②③1986年2月、カジノ、ヴヴェイ ④⑤1986年9月、ヴィクトリアホール、ジュネーヴ)

【Disc12】
①ラヴェル:ツィガーヌ / ②同:歌曲集「シェエラザード」 / ③同:歌曲集「ドゥルシネア姫に心を寄せるドン・キホーテ」 / ④同:組曲「クープランの墓」 / ⑤同:組曲「マ・メール・ロワ」 / ⑥同:亡き王女のためのパヴァーヌ
(①ピエール・アモイヤル(vn)、②ラシェル・ヤカール(S)、①②スイス・ロマンド管、1986年9月、ヴィクトリアホール、ジュネーヴ ③フィリップ・フッテンロッハー(Br)、③-⑥ローザンヌ室内管、1977年6月、メゾン・デ・スペクタクル、エパランジュ)

【Disc13】
①ドラージュ:4つのインドの詩 / ②同:ラ・フォンテーヌの2つの寓話 / ③同:Maktah (berceuse phoque) / ④同:3つの幻滅した詩 / ⑤ジョベール:7つの俳諧 / ⑥同:Saisir Op.18 / ⑦同:3つのセレナード / ⑧同:Elpenor Op.16 / ⑨同:サハラ砂漠の歌 / ⑩ショーソン:終わりなき歌 Op.37
(フェリシティ・ロット(S)、パリ室内アンサンブル、1994年2月11-13日、12月19-21日、ラジオ・フランス、パリ)

 

はい、完読おつかれさまwww