がんの治療や脱毛症で髪に悩む、18歳以下の子どもへの「ヘアドネーション」(髪の寄付)が、全国に広がっている。人毛100%のウィッグ(かつら)を贈る大阪市のNPO法人には連日、同世代の子どもから、何年も伸ばしてカットした髪が届く。贈る側と贈られる側。子どもたちの思いを髪がつなぐ。
「髪を伸ばしてうれしいことがあったから、ぼくの髪にはハッピーがいっぱい詰まってる。自分の髪だと思って過ごしてほしい」
千葉県船橋市の小学5年木村仁(じん)君(11)は昨年5月、長さ40センチほどの髪を寄付した。小2の夏から、約3年間伸ばし続けてきた。寄付は2回目だった。
4歳の時、七つ上のいとこの昔の写真に驚いた。髪もまゆもない。「なんでつるつるなの?」。母は、がん治療の副作用で抜けたのだと教えてくれた。「何かできることはないかな」。母から髪の寄付のことを聞き、幼稚園年中の12月から2年半伸ばし、32センチの髪を贈ったのが最初だった。
レストランで女子用のピンクの食器が出てきたり、商業施設の男子トイレで見知らぬ男の子に「女は入っちゃいけないんだよ」と注意されたり。でも「髪がない子の方がつらいはず」と、自分の意思で続けてきた。
自分の髪が誰かのためになるのは「サンタさんになったみたいでうれしい」。事情を知った友だちも「すごいね」と言ってくれた。2015年に体験をまとめ、小学校で他の学年にも読まれた。友人の妹も七五三を終え、髪を寄付した。
神戸市の小学4年若尾美空(みく)さん(10)は昨年8月に31センチの髪を寄付した。ハリのある黒髪。「きれいな髪やな。おばあちゃんのかつらにしたいわ」と祖母に言われていた。大切に伸ばしてきたが、「もらった子が明るくなると思うと、決心できた」と言う。
NPO法人の事務所で髪の仕分けも手伝った。1日100~150人分の髪が届き、1割ほどが子どもからだ。若尾さんは「ウィッグづくりは思ったより大変。ヘアドネーションのことをみんなに知ってほしい」と自由研究で発表した。
大阪市此花区の小学2年吉村心寿(みこと)さん(8)はテレビ番組でヘアドネーションを知った。「長い髪は女の子の憧れ。髪のせいで外に出られないのはつらいだろうな」。1年10カ月ほど伸ばして昨年8月、髪を切った。「ハサミを入れたらジョリって音がしてワクワクした」。約31センチの髪を贈り、やはり事務所での手伝いを経験した。「ウィッグをもらった子は友達と公園に遊びに行ってほしい」。思いが伝わるよう願う。
■「出かける日が待ち遠しい」
NPO法人は大阪市北区の「JHDAC(ジャーダック)」。代表の渡辺貴一さん(45)らが設立した。美容師として独立する際、「髪のプロフェッショナルとして社会に貢献したい」と思い立った。個人の頭の形に合わせて仕上げるフルオーダーのウィッグは通常、数十万円するが、工場などの協力で約10万円でつくり、無償で贈っている。資金も寄付などでまかなう。
趣旨を理解し、提供者の髪をカットしてくれる「賛同美容室」は昨年、47都道府県の約1500店舗に広がった。できあがったウィッグの調髪もしてくれる美容室は、うち109店舗。「切り過ぎ」が許されず、慣れが必要なのだという。
「まゆが隠れるくらいのパッツンで」
広島市の美容室で昨年11月3日、市内の高校2年空本菜未(そらもとなみ)さん(17)が、美容師の村上雅美さん(34)に髪形の希望を伝えた。JHDACから届いたウィッグを合わせる日だ。約1時間後、仕上がりを鏡で確かめた。「自分の髪みたいに自然」。顔がほころんだ。
急性骨髄性白血病と診断されたのは昨年7月。薬の副作用で髪が抜け始め、手で髪をすくと指に抜け毛がごっそり絡まる。「髪が抜けるのを見るとストレスになる」と看護師に言われ、バリカンで3ミリに刈った。外出時は市販の人工毛ウィッグを使っていたが、人に見られている気がして、いつも帽子をかぶっていた。
しかしJHDACのウィッグは人毛100%で、人工毛のようなテカりはない。治療は続くが、「ウィッグをかぶって出かける日が待ち遠しい」と話す。
広島市の高校3年の女子生徒(17)は同じころ、市内の美容室でJHDACのウィッグを「ボブ」と呼ばれる型にしてもらった。
「めっちゃいい仕上がり。家族にも『似合ってるね』って言われた」
ふだんの外出時はニット帽をかぶるが、この後、贈られたウィッグで家族ともみじ狩りに行った。「人の目が気にならなかったのが一番うれしい」。脱毛は小学4年のころから。明確な理由は分かっておらず、「原因不明で悩む人がいることも知ってほしい」と話す。
兵庫県西宮市の女性(19)は中学3年の時に急性リンパ性白血病を発症し、髪が生えにくくなった。3年前にもらったJHDACのウィッグは、胸のあたりまであるストレートの黒髪。今も冠婚葬祭などで使う。「見るたびに応援してくれている人がいると感じ、治療をがんばろうと前向きな気持ちになる」。今は色々な髪形を楽しみたいと、茶髪やパーマなどの市販のウィッグも使っているという。
子供が子供に!
渡す側と受け取る側。
いろんなドラマがあるのよね。
文句なんて言ってられません!私!
私もあと半年!
がんばる!






