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「イヤー、ホンットに久しぶりだなー」
「そうだよね。つーか帰ってきたんなら連絡くらいくれたら良かったのに」
「あはは、ゴメンゴメン。
親に帰ってきたんならさっさと家業手伝えって言われてよー。
パンなんて焼いたことなかったからオヤジの元でイチから修行してたからなー。最近だよ?やっと落ち着いてきたの」
「ふーん。そうなんだ。
智くんが立派なパン屋さんとはねー」
「ふふ、翔くんも超一流のエリートサラリーマンみたいだな!スーツパリッと着こなしちゃって!
いやぁ、リッパになったもんだなー」
「何言ってんの。俺なんてただのサラリーマンだし」
「…あのーっ!」
「ん?」
「え?」
「昔の思い出話に花を咲かせるのはいいんですけど……」
翔ちゃんと大野さんが楽しそうに話をしているとしびれを切らしたのかカズが口を挟んだ。
「櫻井さん……アナタ、ココにナニしに来たんでしたっけ?」
もうブチ切れてはいないけど、低く冷たい口調でカズが言い放った。
「あっ、あのっ……そう、ですよね、ごめんなさい、二宮さん……」
カズの顔を見たとたん、何しに来たか思い出したのか、翔ちゃんの顔が青ざめた。
あぐらをかいていたのも、慌てて正座しだした。
「そんな話をしに来たんなら…帰ってもらえます?」
相変わらずの冷たく感情がない口調でカズが言う。
「イヤっ、違っ…!俺は雅紀を迎えに来たんです!」
「でも櫻井さん、浮気したんでしょ?」
「…………はっ!?」
カズが言うことに、翔ちゃんはハトが豆鉄砲食らったような顔をする。
「さっきも雅紀がそう言って出て行ったけど……なんのこと?」
「しらばっくれんじゃないよ。
じゃあそのネクタイに付いてるシミはなんなんだよ」
「え?シミ……?」
カズに言われて翔ちゃんが慌ててネクタイを手に取った。
「……ん?え?コレ……なんだ?」
翔ちゃんがネクタイをキョトンとした様子で見つめている。
「しらばっくれんじゃないよ!
どう見ても口紅じゃねーか!」
「……えっ?……なんでこんなとこにっ?」
「こっちが聞きたいわ!
そんなもん付けてよくもまーくんのところに帰ってこれたね」
「えっ、イヤっ、だって……いつの間に……
……あっ……」
翔ちゃんがしどろもどろにそう言って、なにかに気づいたように声をあげた。
「きょっ、今日、俺の仕事をいつも手伝ってくれてるアシスタントの女子社員も出勤してくれてたんだ。
で、昼になったから一緒に昼メシ食いに行って……」
「ふーん。仲良くランチデートですか」
「ちっ、違いますよ!俺の手伝いで休日出勤してくれてたからせめて昼メシでも、って……」
「で?一緒に仲良くラブラブでランチデートに行って……なんでそんなとこに口紅がつくんでしょうねぇ……」
チクチクとした口調で翔ちゃんを責めるカズがこわくてオレはなにも言えないまま翔ちゃんを見つめる。
「えっ、と……昼メシ行く時エレベーターがすごい混んでたんですよ。んでめっちゃ密着されて……」
「その時に、口紅がネクタイに付いて、香水の香りも移っちゃったってこと……?」
オレはやっと口を開いて翔ちゃんに聞く。
「そっ、そう!ホントだよ!雅紀!
ウソなんてついてないから!
やましいことなんてひとっつもないから!!」
オレの目を見て必死にそう言う翔ちゃんはウソを言ってるようには見えないんだけど……
でも……
なんだろ?
なんか……まだスッキリしないって言うか……
「ウソはついてないけど……まだ言ってないことがある、ってとこか?翔くん……」
今までずっと黙って聞いてただけだった大野さんがふいにそんなことを言った。
そのとたん、翔ちゃんがギクッとした表情をしたのをオレは見逃さなかった。
……もちろん、カズも。
「……そうなの?櫻井さん……」
カズの声がまた低くなって、翔ちゃんはもとより、オレまで顔が青ざめた。
つづく……
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次女…学年閉鎖になっちゃったよ……
あ、本人は元気です(笑)
みなさんもお気をつけて……