このままもっと《番外編》カズの幸せ | sakurabaでいっぱい 〜SA妄想小説〜

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赤さんと緑くんによるソフトな萌キュンイチャコラですが、激しめなものも書いておりますので未成年の方、男性の方はご遠慮下さい。

コメントは基本的に未承認にしております。



昨日、番外編あるよって書いたら多分大半の人がその後の櫻葉さんを期待してたみたいで……ゴメン

今回は違うのm(・ω・m)ソーリィ



↓前回はコチラ



↓このおはなしのはじめは……



。。。。。




まーくんが櫻井さんの元へ嫁いで早3ヶ月。




ようやく幸せを手に入れたまーくんに嬉しい気持ちでいっぱいなんだけど、やっぱり淋しいのも正直な話しで。



なんだか心にポッカリと穴が空いてる。




世の父親は、娘を嫁に出したあとこんな感傷に浸ってんのかなぁとまだまだ若いのにそんなことを思ってしまう。



まぁ、気持ちも、なんだけど……


現実的に、まーくんがいなくなって、ほかの家事はともかくご飯を作ってくれる人がいなくなってもっぱら外食や出来合いになってしまってる。



ちゃんと自分で自炊しなきゃなーと思いながらも朝は慌ただしく家を出るし、夜も残業や接待なんかで遅くなると、帰りにコンビニに寄って軽く済ませちゃう。


まーくんに言わせると、ゲームする時間を減らせばその分自炊する時間あるよ、と言われそうだけど。


あいにく、食事の時間を減らせてもゲームの時間だけは減らせない。

それだけは譲れない。



でも、朝だけはちょっとした変化があった。




偶然見つけたこじんまりとしたパン屋。


いつも会社に行く道の一本隣の道にそのパン屋はあった。


家の近くにこんな店があったんだなーと何の気なしに入ってみた。


入ったとたん、パンのいい匂いが鼻腔をくすぐる。


「いらっしゃ~い」

 
中途半端な時間なのか、ほかには誰も客はいない。


レジのところには眠そうに座ってる男の人がひとり。


職人のカッコしてるから、この人がこのパンを焼いてるのかな?


そう思いながら試しに何個かパンを取ってレジに向かう。



その男の人はパンを袋に詰めながら「このメロンパンはおいらの自信作なんだぜ」と、声をかけてくる。



「はぁ…そうなんすか」

「はいよ。初来店を記念して、このメロンパンはオマケにしといてやる」


客に対しての言葉遣いじゃないよな、と思いながらも不思議と不快には感じなくて。


「ありがとう…ございます……」

そう言って袋を受け取る。



「また来いよー!」


店をあとにしようとした俺の背中にそう言われて、やっぱり変な人だな、と思った。



でも、自信ありげにそう言うだけあって、メロンパンはめちゃくちゃうまかった。



それから俺は毎朝のようにその店に通っている。




「おう!カズ!おはよー!」


この日もその人はレジのところで眠そうに座っていた。



「おはようございます。
なんなの?もうパン焼き終わったの?」

「おう。今ちょうど昼までのパン焼き終わったからな。そろそろカズが来る頃だなーと思って待ってた」


何回目かに名前を聞かれて名乗ったとたんナゼか「カズ」と呼び捨てにされてる。

もちろん今も客である俺に敬語なんか使われたことないし。

でもふにゃふにゃと顔を崩しながらそんな事を言うこの人に俺もなんだか顔が緩む。


俺はそんな顔を見られないようにできるだけ下を向きながらパンを選んで取っていく。

毎日だから、パンの種類も日替わりで変えているんだけど、コレだけは毎日、毎回選んでる。



「カズはホンットにメロンパン好きだなぁ」

「おいしーからね」


……それだけだよ?

別にアナタの自信作だから、ってんじゃないからね?



「カズ、毎日来てくれんのはいいけど、メシ作ってくれる人いねーのかよ」

不意にそんなことを聞かれた。


「そんな人、いないよ……
最近娘を嫁に出したから作ってくれる人いなくなったし」


俺のそんな言葉に目を丸くしてる。



「カズ……若く見えるけどけっこうオッサンなのか?」

「ちっ、違うよ!まだ24だってば!」

「じゃあ娘ってなんだよ……」

「いいの!俺より一個上の娘だよ!」

「ええー、わけわかんねー」

「だからね、ひとりだからご飯もほとんど出来合いなんすよ」

「ふーん。淋しいなぁ」

そう言いながらパンの入った袋を手渡してくれる。


「じゃあね。また来るわ」

「おう。仕事がんばれよー」


俺はパンの袋を持ちながら少し手をあげる。


「あ、カズ!」


ドアに手をかけたところで声をかけられてまた振り向く。



「おいら、パンだけじゃなくてメシも作れるぞ。今度、作りに行ってやろーか?」


相変わらずふにゃふにゃした顔でそう言ってくれる。


その言葉と、表情にドキッとしたのは目の前のこの人にはナイショだけど。


俺は、まーくんの作ったご飯しか食べれない、と思ってたけど。

この人の作るご飯なら、食べてみたいかなー、なんて思ってしまった。



「うまいのかよー」

「けっこううめーぞ?よし、じゃあ作りに行ってやるから連絡先教えろ」


こんな強引で押し付けがましく言われたら、いつもの俺なら不快感でいっぱいになるんだけど。



「……しょうがないなぁ」


俺はまたレジ前に戻りながらスマホを取り出す。


「おいらの店は水曜日が休みだからな。
ヒマな時連絡してこい。作りに行ってやるから」

「そりゃどーも」


俺の予定なんて……ゲームと仕事以外別にないし。


「明日、空いてるけど……」

「お?そーか?じゃあ、さっそく明日行ってやるよ。何食べたいか決めとけよ?」

その人がニヤッと笑って俺を指さしてくる。


「……ハンバーグ……」

「え?」

「ハンバーグが食べたい」

「決めんのはえーな。
よし、じゃあ明日とびっきりうめーハンバーグ作ってやるからな。楽しみにしとけよ」

「……うん……
あ、じゃあ、俺、仕事行くから」

「おう!仕事がんばれよー」

「…さっき聞いたし……」

「ふふ、まぁ、いいじゃねーか」

「……行ってきます……」


俺はニヤける口元を手で覆いながら今度こそ店を出た。


出たところでスマホの画面を見る。


『大野 智』


新しくアドレス帳に加わった名前を見て顔がほころぶ。


仕事と、ゲーム、時々まーくんの日常の俺の中で、またひとつ楽しみが増えた。



会社に着いて、けっこうな数の人から「なんかいいことあったの?」と聞かれて曖昧にごまかすのがタイヘンだったけど。



でも、確かにその時の俺は明日が楽しみすぎて浮かれていたと思う。




おしまい



♡o。+..:*♡o。+..:*♡o。+..:*♡o。+..:*♡o。+..:*

ひとりになっちゃったカズのその後の出会い……。

タイミングがなくてこの人、出せなかったからってのもあるんだけど、やっぱりカズにも幸せになってほしーよね(*´ 艸`)

櫻葉じゃないけど、楽しんで頂けたら嬉しいです。



でもやっぱり……櫻葉さんのその後……欲すぃ?(≧◇≦)