一級建築士である私が設計した物件をはじめ、インテリアや家づくりについて情報発信しています。
また、築52年の中古住宅を購入しリノベした記録、日々の暮らしについても書いています。
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築70年くらいのお家の建て替えのご依頼を受けた時の話。
家族3世代が暮らしていたそのお家は誰が見てもボロボロで、リフォームは到底不可能な状態でした。
解体することが前提で建て替えの話は進んでいったのですが、家族の中で唯一おばあちゃんだけは消極的。
ご家族から聞いたところ、今は亡きおじいちゃんや家族との思い出がたくさん詰まった家を壊すのが悲しいとのこと。
それでも何とかご家族の協力もあり、最終的にはおばあちゃんも建て替えに納得してくださいました。
そしていよいよ解体工事の日。
天気も良く工事は順調に進んでいったのですが、おじいちゃんの部屋(?)付近を重機で壊し始めた時、それまでずっと工事を眺めていたおばあちゃんが突然その場を離れていきました。
これも後から聞いたのですが、やはり見ているのが辛くて耐えられなかったそうです。
結局その後は大きな問題もなく建て替え工事は無事終わり、おばあちゃんも新しいお家をとても喜んでくださいました。
実家など長年住んだ家を壊すのが辛い、そのように感じる方は案外多いのではないでしょうか。
昨今は空前のリノベーションブームで、元の家の面影すらなくなるような劇的ビフォーアフターリノベが人気です。
例えば空き家や中古住宅など購入し、その家自体に縁もゆかりも無いのであれば、元の家の面影なんて一切残さないリノベも良いかもしれません。
しかし、長年暮らした実家など少しでも元の家の面影を残したいのであれば、あえてそのようなリノベーション工事を行うことも可能です。
天井仕上げを活かす
比較的簡単なのが天井仕上げの再利用です。
床や壁など人が直接触れる部分は当然劣化も激しくなるのですが、天井はそうそう触れる場所じゃありませんよね。
なので古いお家でも天井を活かすこと出来る場合は多いです。
こちらは船底天井といいまして昔から和風建築で親しまれてきました。
このちょっと変わった天井を再利用してみました。
そのまま活かすのではなくホワイトに塗装し木目もつぶしました。
可愛らしい北欧スタイルの空間にマッチし、コストカットにもなります。
続いてこちらは大きな座敷。
ここでは天井仕上げをそのまま取り入れました。
近年のお家はシンプルに壁紙を張っただけの天井が主流ですが、昔は天井仕上げにもこだわっていたんですよね。
これを活かさない手はないです、壊すなんてもったいない。

家具や建具をリメイク
長年使い込んだ大事な家具を新居でも使いたい、そんなご要望も多いですがインテリアコーディネートが難しいんですよね。
そんな時にはリメイクすることで新たなインテリアスタイルとの調和を図るのですが、ここでは建具をリメイクした例をご紹介。
和室の障子戸をリメイクしました。
障子紙を剥がしてガラス部分に板張り、仕上げにホワイト塗装で完成です。
リメイクと聞くとコストカットできそうなイメージですが、そうとも限りません。
場合によっては新たな建具を購入するよりも加工費が高くつくことがあります。
そこは注意してくださいね。
外観を大きく変えない
コスパを考えるなら極力外観を変えないことが重要です。
外壁を張り替えたり窓を入れ替えたりするのは問題ありませんが、「外観デザイン」のためだけにわざわざコストをかけて建物形状を変える必要性は低いと思います。
こちらは築50年越えの我が家ですが、外壁を板張りにしたくらいで基本的な建物形状ほとんど変えてません。
焼き瓦は耐久性が高いので基本はそのまま再利用、雨漏りの形跡があれば補修は必要ですけどね。
瓦にもいくつか種類があり、その中でもセメント瓦は耐久性が低いので注意してください。
リノベの場合は建物外観デザインを無理に変えるのではなく、庭などの外構にコストをかけて建物を含めたトータルデザインに舵を切ったほうが上手くいきます。
以前の面影をほんのり残しながらも、古臭さは感じさせない仕上がりを目指しましょう。
ここまでは見た目(デザイン)の部分についてのお話。
リノベではデザインとしての面影は残しても、一切残したくないものもあります。
それが耐震性や断熱性といった性能面です。
あえて元の家の寒さを引き継ぐ必要はありません。
断熱改修をすることで新築並みの光熱費で暮らすこともできるのです。
最近は能登半島でも大きな地震があり、古い木造住宅が倒壊しました。
リノベをするなら耐震補強もセットです。
耐震・断熱改修には国や自治体から補助金が出たり、住宅ローンの税制優遇措置もあります。
これら上手く活用し、安全で快適でお得なリノベライフを送りましょう。
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