先日、私の住んでいる新潟で県知事選が行われた。
投票率は53%で
反原発を掲げる候補の当選で幕を閉じた。
それはさておき、新潟には有名な佐渡ヶ島ともう1つ
粟島(あわしま)という島がある。
人口はわずか367人で高齢化がとても進んでいる。
もちろん粟島でも今回の選挙の投票が行われたのだが
投票率が脅威の92.36%
ちなみに佐渡市はでの投票率56.16%
今回の投票の争点は原発再稼働で
粟島に直接的な影響はなかった。
粟島の住人の約44%が65歳以上で
15歳未満の住人は約0.5%
このような過疎化&高齢化の進んだ離島は日本全国にあるが
今回の粟島の選挙同様に
極端に住民の少ない離島での投票率が90%を超えるのが珍しくない。
なぜここまで高投票率なのか。
高齢化が進んでいるから。という理由だけで説明できるのか。
以前スイスでこんなことがあった。
ある年からスイスでは郵送による投票を始めた。
それによって投票率は大幅に上がるはずだった。
しかしその結果・・・投票率は逆に下がっていった。
特に小さい州や小さな集落などでの投票率の下落は顕著だった。
しかしなぜ投票率は下がったのか。
わざわざ投票所に出向く必要もなく、はがきを返送すればいいだけで
従来の投票方法よりもはるかに楽なはずなのだが・・・
それは投票の裏に隠されているインセンティブに注目すると
自ずと答えが解ってくる。
(インセンティブ=動機付け。やる気を起こすための刺激。)
従来、投票をするには投票所に行かなければならなかった。
スイスでは昔から「善良な市民は投票に行くべきだ」という
強い風習があった。
投票をするには投票所に行くしか方法がない場合、
投票をしている姿を周りの人に見られるためだけに
投票所に行くインセンティブが働いていた。
社会的に評価されたいと思ったり、
常識的で社会に協力的な人だと思われたい、
そう思われることで得られる社会的な利益を得ることが
動機になったのかもしれない。
小さな地域社会では住民はお互いのことをよく知っており
誰が投票に来て、誰が投票に来なかったのかすぐに噂になるので
わざわざ投票所に足を運ぶ理由は大きかった。
しかし郵送やインターネット投票になるとこの部分のインセンティブが
そっくり無くなってしまう。
つまりスイスで投票率が大きく下がった理由は
自分の利益にならないから、であると考えられる。
昨今、「投票に行ってきました」とわざわざ写真付きで
SNSに投稿する人をよく見かける。
この人たちのインセンティブもきっとスイスの人たちと
同じはずである。
数年前に行われた選挙で私も同じような投稿を
一度だけしたことがある。
だからそう言える。