猫の物語 四 カギ鼻のジャヴィード<前篇>*:..。o○☆ | たぬきのしっぽ ☆彡

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★チンチラたぬきと
メインクーンきつねの生活日記♡

みなさん お元気だったかしら 大mamaです☆彡
私は弟の三回忌の準備でバタバタ過ごしてしまって・・・・・。
猫の物語もずいぶんお休みしちゃったわね。

今度の舞台はイスタンブール、
昔のコンスタンチノープルよ。
ヨーロッパとイスラム圏が接するところ、
エーゲ海から地中海に抜ける海峡をボスポラス海峡って言うんだけど、
ボスポラス海峡のヨーロッパ側にある港町をイスタンブールって呼んでるの。

よく映画の舞台になる街でもあるわね。
私も一度くらい行ってみたいと思うけど、もうこの年ではちょっと無理かしら。
エーゲ海がきれいに映っている映画といえば、「真夜中の向こう側」っていうタイトルの映画の冒頭シーンが目に浮かぶわ。
真っ青なエーゲ海と主役の女優さんの彫りの深い端正な顔が
溶け込むようなシーンを覚えているんだけど、思い違いかしら。


ローマ帝国がオスマン勢力に滅ぼされて、
17世紀のイスタンブールは
イスラム文化の絶頂期にあったの。
猫も「神の使い」として
大切にされていたわ。

だから、
タローの生まれ変わりのジャビードも
大事にされていたはずよ。
 

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わたしは真っ黒なオス猫ジャビード。
鼻がカギ型に曲がっているので
「カギ鼻」とも呼ばれている。

イスタンブールの連絡船の船長に
飼われている。

港町の朝は早い。
そして海峡は濃い霧に包まれて
どこを見ても真っ白いモヤが広がる

いつも
そんな中を連絡船は
満杯の客を乗せて出発する

考えてみれば
危ないよな

ある朝
客が船着き場で赤いカバンを見つけた

中から
ミウミウと声がする

開けてみると
真っ白い子猫だった

 


おい、カギ鼻
どうしたものか、と
船長が言い
私も船長の足元の隙間から
子猫をのぞいた

とってもかわいい
女の子の子猫だった

船にはちょうど預言者アリーが乗っていて
私が引き取りましょうと
言ってくれた

そこにいた全員が喜んで
アリー様が
飼ってくださるならと
安心しちまった

だがね
あの時船にアリー様が
乗ってなくて
子猫の引き取り手が
誰もない状況だったら
後の展開も
変わったのに、と
今でも考えることがあるよ

子猫は自分でカバンから出てきて
アリー様の前に座り
その顔を見上げて
ミュウと鳴いた

誰もが胸がキュンとしたね

つぎに子猫を見たのは
それから一か月後の朝だった
アリー様が
連絡船に乗船するときに
連れて来たのさ

 


ちょうどその時
私は港の労働者に魚をもらって
朝食の最中だったから
小さな食べやすそうな魚を
くわえて
子猫の前に置いてやった

子猫は
ミュウと鳴いて
喜んで食べたよ
お腹がすいていたんだね

アリー様は
シリーン、魚をもらってよかったな
と子猫に言い
ありがとうジャビード、と
私にお礼を言ってくださった

えらい人というのは
違うものだな、と
その時思ったね
 
この辺の土地では
猫は神の使いってことで
大切にされてはいるが

港町の労働者の中には
忙しいと
猫を蹴とばす人もいたからね

それから
アリー様はシリーンを伴い
週に一回は連絡船に乗るようになった

そして連絡船に乗っている間中
私とシリーンは一緒に時間を過ごした
シリーンは
とても遊び好きな猫だったから
楽しかったよ

ボールを追っかけまわして
もう少しで船から
落っこちそうになったことも
あったよな

そして1年もたつと
シリーンは美しい猫に成長した

そんなシリーンに
私はいつの間にか
恋心を抱くようになって
しまっていたらしい
まだ自覚はなかったけどね

私は気が付くのがなんでも遅くて
いつも損している猫なのさ

  
ある日
私は主人の船長に連れられて
イスラム寺院を訪れた

そこには
私より少し若くハンサムで体格のいい
ボルナーって猫がいてね
門番の飼い猫で
昔なじみだったのさ

船長が礼拝を済ませ
ラマダンの後の
食事を済ませるまで
結構長い間
私はボルナーと過ごした

ラマダンというのは
断食ではあるけれど

断食が行われるのは
太陽が出ている間だけで
あとは食べ放題の
パーティーなんだよ

私たち猫にも
新鮮な魚や肉が振る舞われたので
私は久しぶりに満腹になり
上機嫌で
マタタビ酒をあおった

だが
ボルナーは浮かぬ顔だった

その顔を見ているうちに
なんだか変に
胸騒ぎがした

 

なにかが
悪い回転を始めている
そんな気がした

どうしたんだよ
しけた顔して
マタタビ酒をもっと飲めよ、と
私はボナールに言ってみた

オレさ
好きなコがいるんだ
暗い顔でボツリと
ボナールが言った

好きなコ?
私もいるよ、と
思わず私は言った

え?ほんとかい?
誰なんだい
それって もしかして・・・・・・
畳みかけるようにボナールが言う

私は一瞬ひるんだ
「シリーン」と
その名前を一言でも
先に出してしまえばよかったのに

後で
どれだけ
後悔したか

一瞬の隙を
ボナールがついた

オレ、アリー様の猫に惚れちまったんだよ
アンタ チカラを貸してくれないかな
アンタには 確か貸しがある


こうして
私が密かにあたためてきた
大切にしてきた
ガラス細工の世界の一角が
音をたてて崩れた

ボナールは一方的に
彼のシリーンへの愛を語り
私の「好きなコが誰か」を
確かめようともしなかった

 

(続く)*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆






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