「長いお別れ」中島京子 | りうりー的房間

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個人的、記録的、日記的、な。

「なんだかとてもよく知っているように感じられる温もり、重みがあった。

ともかくこの娘をしっかりつかまえていよう。」


ここでほろっと涙がこぼれてしまった。


成人した三姉妹の父は、まだ認知症がそうひどく進行してはいない。
行先を忘れたり、物に執着したりし始めている。

それぞれの生活に忙しい中、渋々ながら集まった三姉妹から、
GPS機能のついた携帯電話をプレゼントされ、ある日それを携帯したまま帰宅しない。

徘徊の末、大人が一緒でないと乗れない、と言われた幼い姉妹に声をかけられ、
頼まれて3歳の妹とメリーゴーランドに乗る場面である。


進行はゆっくりと進み、
そして「お別れ」となる。

国語教師をしていた父親は、
私の父によく似ている。
きっと父に病が訪れたら、こんな風になるのだろうと強く思う。
三姉妹は私にないし、弟は家庭を持って遠くに住む。
この作品で気丈に物語を回す母親は、
我が母とは比べ物にならない行動力だし。


いつか、そのいつかがゆっくりと父に近づいている気がするから、
私は父の理不尽な怒りを目にするのが恐い。
言ったことを忘れてしまうことも。




ロンググッドバイの意味を噛み締めた、
秀作だった。