米国では、サポート要件や非自明性などについての拒絶理由を受けた時、発明者の署名付きで追加の情報を提出することができます。いわゆるRule 132 Declaration(宣誓書)ですが、例えば化学系の発明において、米国では、事後的に実験成績証明書を提出することで、サポート要件違反を解消できる可能性があるとされています。
特許庁「審査実務に関する三極比較研究」に基づき筆者が作成した図
最近のPTABのDecisionで、そのRule 132宣誓書に関するものをみつけましたので、ご紹介します。
Appeal 2023-003437 (2024/10/18)
引例の組み合わせによって自明であるとの拒絶理由に対し、出願人は、実験結果を記載した宣誓書(以下、実験条件を一部抜粋)を提出し、予期できない効果 Unexpected resultの主張を試みましたが、審査官は同意せず、Appealへと進んだ案件となります。
PTABは、以下の理由によって、この宣誓書が不十分であると判断し、審査官の拒絶を維持しました。
(1)クレームされた発明と最も近い引例との比較がなされていない
→ある一定の数値範囲を有する"Conventional"な例との比較では不十分で、最も近い引例にある条件と比較するべき
(2)"Unexpected"な差異が示されていない
→単に署名者がunexpectedであると主張するだけでは不十分で、当業者が差異がunexpectedであることを理解できるような記載が必要
(3)クレームは、8つの酸の単独使用または組み合わせ、5つの酸化剤の単独使用または組み合わせを包含しているが、宣誓書の実験結果は1つの酸と1つの酸化剤の例が示されているのみ。すなわち、実験結果とクレームのスコープが一致していない。
引例に基づいて追加の実験を行うことは難しいことも多いと思いますが、宣誓書では、クレームによって包含される条件に対し、最も近い引例との比較結果を示しつつ、その差異が予測できないものであることを説明できれば理想的です。