あの人が亡くなってから早一年が経ちました。
そう、以前ふと呟いたあの人です。
実はあの人が亡くなった日は定かではありません。
二月の半ばと推定されていますが、表向きには葬儀を行った三月上旬とされており、さらに書類上では不明とまでされたりもします。
なんということか…
やりきれない思いで胸がいっぱいです。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…
たしかに私には何も出来なかったかもしれません。
現実としてはあの人と私には何の接点もないのですから。
でも、出来る出来ないにかかわらずか、しなかったのです。
二月中頃、あの人の遺影に手を合わせてきました。
その日か、その次の日辺りに、あの人の家で飼っている犬が衰弱し始めました。
犬が衰弱した日、私は犬の鼻息のような音を聞いた気がしました。
もちろん犬などいないところでしたし、その時はまだ犬が衰弱したことを知りませんでした。
基本的に霊的なものは信じません。
けれども、あの人は、もしかしたら何かを伝えたいのかもしれない、そう言われました。
或いは、呼んでいるのかもしれない、と。
根は優しく、真っ直ぐな方だったのでしょう。
あの人が残した文字が、それを物語っていました。
ただ、“愛と”いうものの表現が下手だっただけ。
その欠点を、どうにかして周囲とわだかまりなくいくようにしたかった。してあげたかった。
いつか、は、もう訪れないのです。
失って初めて気づくその存在の大きさに、こうして涙するのです。
私は果たして、あの人にはどう映ったのでしょう…
もう二度とわかることのない問いが周り続けるのです…