ブログネタ:国語の教科書に出てたちょっと好きな話
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世の中にはお金が関与しないことには
まるで価値などないと思っているような
人種もいる。
そういう人たちには、きっと嫌なことを
忘れて、無心に阿波踊りを踊り倒す
などという芸当は到底理解できない
のであろう。
三田村邦彦は今回、同じ芸能界に
属するということで徳島出身の坂東
英二(元プロ野球選手らしいが、それも
今では怪しい)の人脈を通じて、
『新宿大舞踏祭』に出場する阿波踊り
要員のの確保、またはそれに代わる
何かヒントになる知恵を授けてもらえる
かもしれぬと、実際大阪で坂東に会って
みたのだが、彼は上記のようにお金が
発生しないことにはまるで価値などない
と考えている人種であり、三田村の
計画は頓挫してしまったのだった。
そうして三田村は虚しく東京に帰って
きたのである。
東京に帰ってきて早々、三田村は
川崎麻世をいつものカラオケボックスに
呼び出した。
そこで彼は大阪での出来事は秘して
おいて、川崎麻世にいきなり
『川崎くん、『新宿大舞踏祭』に阿波踊り
で出場する件だけど、これって、ギャラ
は発生しないけど、問題ないかな?』
と問いかけてみた。
川崎麻世も、芸能界に属する人間なのだ
坂東英二と同じように。
それにこの男は常々、菅マイナス8万点
前総理とチグハグな政治談議など交
わしているのが、こういう男こそがお金
にシビアなのかもしれないと思って
みたりもした三田村は開口一番に
そんな質問をぶつけざるを得なかった
のだ。
しかしその三田村の問いを川崎麻世
は笑い飛ばすように
『嫌だな、三田村さん、人聞きが悪い、
お祭りでしょう、その何とか大舞踏祭
って、要は皆で、踊って、楽しめれば
いいって言うような、それで踊った後は
焼きそばとか食って、ビールも飲んで
って、そんなお祭りにギャラって、何
ですか?』
屈託なく、言ったのだった。
『踊ったら、ギャラくれんすか?』
『悪いけど、ギャラは出ないよ』
『嫌だな、三田村さん、冗談ですよ
冗談』
とりあえず、川崎麻世にとって、『新宿
大舞踏祭』というのは毎年どこかで
行われる盆踊りや秋祭りと同じような
ものでしかないことが判って、三田村も
一安心したのだった。
そしてその夜、2人はカラオケボックスで
ラジカセから流れる阿波踊りをバックに
その夜も踊り飽かすことになった。
それでも新宿大舞踏祭に動員する阿波
オドラーの確保する問題は残されて
いた。
そこで三田村はそれから数日後、徳島に
いる知人国分さんと連絡を取ることにした。
その国分さんは彼が阿波踊りを通じて
知り合った人物であった。
ここでその国分さんが紹介してくれたのが
東京の徳島県人会という団体だった。
その後はとんとん拍子で話は進んでいった。
一瞬ではあったが坂東英二のせいで
徳島県人はお金にシビアな人種かもしれ
ないと思ったりもした三田村だったが、
もちろん徳島県人会の人々にギャラがどう
のとか、交通費くらいはくれるんだろう
というようなことを言い出す人は誰も
いなかったのである。
しかしこの様に三田村邦彦が新宿大舞踏祭
へ向け、人に会って、交渉事を重ねている
間、川崎麻世はノラリクラリと過ごしているのか
と思えば、そうではなかった。
麻世は麻世で打倒妻のカイヤを旗印に
仕事の合間など暇さえあれば、ところ
構わず『阿波踊り』の練習に取り組んでいた。
ただ、自宅は彼にとってのアウェーのような
もので、そこではいつも妻のカイヤが台所
で訳のわからない踊りを踊っている主戦場
というべきもの、そのため自宅では大人しく
妻の踊りを横目に自室へと引き上げていく
のだった。
しかし川崎麻世は
『見てろよ、カイヤ、お前に見せ付けてやる
からな、俺の阿波踊りを、俺達の阿波踊り
をな!!!!!!』
と部屋に引きこもるなり言った。
このところ、こんな台詞がかれの口癖に
なりつつあった。