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家に辿り着いて、玄関を開けると

妻が台所で踊り倒している。

まさに彼女はそんな言葉がお似合い

なほど、一心不乱に踊り明かして

いるのだ。


その日、川崎麻世が家に入った

時、妻のカイヤはいつものように

台所で一心不乱に踊り明かして

いた。

何だか彼にはよく分からないが

明らかに若者が聞く音楽を掛けて

妻は踊っていたが、その日のカイヤ

はどういうわけかいつものような

ジャージ姿ではなく光沢のある

黒いボンデージ風の衣装を身に

つけていることに一瞬、気に留めた

麻世だったが、彼はそのまま

玄関袖にある、自分の部屋に

入っていった。

当然、カイヤは麻世が帰宅した

ことには気付いていないはずで

ある。


自室に篭った川崎麻世はボンデージ

姿だった妻を訝しく思ったが、しかし

ここで彼は思った。

(オレには阿波踊りがあるんだぞ!!)

そして麻世はその後、実際に口に出して

『カイヤ、お前に見せ付けてやるからな

この踊りを』

と言うや、部屋の中で突如彼は阿波踊り

を舞い始めたのである。


その夜、彼は盟友三田村邦彦とカラオケ

ボックスにて阿波踊りの練習に励んだ。

しかし妻が訳の分からない音楽を掛け

そして訳の分からない踊りを派手な衣装

で踊るのを帰宅早々目にして、対抗心

を燃やさずにはいられなかった。

麻世は狭い室内で音楽も掛けず一心不乱

に踊り始めていた。


そんな彼に向って突如

『アンタ、ナニヤッテンノヨ!!!』

と、罵声にも近い言葉が投げかけられた。

麻世は振り返る。

すると入り口の戸を開け放ち、妻のカイヤ

が仁王立ちしていた。

思わず圧倒された川崎麻世であったが

妻のカイヤはズケズケと部屋の中へと

足を踏み入れてきた。

『お前、部屋に入る時はノックくらい

しろ、いくら夫婦でも・・・・・・・・・・・』

『シタワヨ!!!!』

カイヤは悪びれる様子もなく言い放つ。

そして続け様

『2カイモ、シタワヨ、ナニアンタ、ミラレテ

ハズカシイコトデモシテタワケ!!!!』

と吐き捨てるように言った。

カイヤには麻世がしばらく舞っていた阿波踊り

は全く眼中にはなかったらしい。

『それで何しに来たんだよ』

『センタクモノ、モッテキテアゲタンジャナイ

ナンカ、モンクアル?モンクアルンダッタラ

アンタガ、センタクシテミナサイヨ!!』

そう言われると川崎麻世には返す言葉

がなかった。


カイヤはその洗濯物を麻世の部屋を置いて

出て行ったのだが、その時の格好は

帰宅時に彼が見た、ボンデージ姿のまま

だった。

そしてその後も川崎麻世のいる部屋に

低く音楽が流れてきた。

部屋の入り口から恐る恐る顔を出すと

カイヤはその格好のまま再び踊り倒す

姿が彼の目に飛び込んできた。


川崎麻世は無理からように阿波踊りを

舞おうとしてみた。

しかしすっかり気勢をそがれた彼は

服を脱ぎ、寝巻きに着替えることに

したのだった。