夜行快速「ムーンライト信州」の思い出 | あさかぜ1号 博多行

夜行快速「ムーンライト信州」の思い出

昨日(5月17日)、JR東日本は7月1日~9月30日に運転する夏の臨時列車の運転概要を発表しました。
新規設定の列車から定番化した列車まで様々な列車がラインナップされている中にあって、注目すべき列車が。
それは、中央東線・大糸線の新宿→白馬間にE257系9両編成(全車指定席)を使用して下りのみ運転される臨時特急「アルプス」です。
そして、この特急「アルプス」のダイヤは新宿23:58→白馬6:22という夜行運転で、2018年末に同じ区間で運転されていた臨時夜行快速「ムーンライト信州」が運転を終了して以来5年半ぶりの夜行旅客列車の復活になります。

「アルプス」といえば、中央東線伝統の急行列車名で、キハ55系やキハ58系による気動車急行としてスタートした後165系急行形電車の時代が長く続き、私も「アルプス」といえば165系というイメージが今でも強いです。
1986年11月のダイヤ改正では昼行「アルプス」はすべて特急「あずさ」に格上げされますが、夜行「アルプス」は下り2本と上り1本が183系に置き換えられた上で2002年12月のダイヤ改正まで残り、多客期には急行形電車などを使用した臨時「アルプス」も運転されました。
2002年12月のダイヤ改正で「アルプス」は廃止されますが、それと入れ替わりに登場したのが夜行快速「ムーンライト信州」でした。
「ムーンライト信州」は「アルプス」と異なり多客期にの運転となりましたが、車両は急行時代から引き続き183・189系が使用され、時期によって所属する車両基地や車両の塗装が何度か変わりながら2018年12月末まで運転されました。
そんなわけで特急「アルプス」は、新規設定のように見えて列車名としては21年半ぶり、運転形態としては5年半ぶり(快速から特急に格上げされてはいますが)に帰ってきた列車ということになります。

私は急行「アルプス」には乗らずじまいでしたが、「ムーンライト信州」には数回乗車経験があります。今回はその時のことを少し振り返りたいと思います。
「ムーンライト信州」の新宿発は23:55。この時刻は中央東線で長年運転されていた長野行(後に上諏訪行に短縮)夜行普通列車と同じで、運転形態は少し異なるものの中央東線の夜行列車の伝統を受け継ぐような格好になっていました。
新宿駅の「ムーンライト信州」の発車ホームは特急用ホームの9番線。このホームは他の路線のホームよりも代々木寄りにずれて設けられているので、深夜でもまだまだ頻繁に列車の発着する他のホームとは別の駅のような静かな空間になっていました。
やがて入線してきた183・189系に乗り込みます。やはり中央東線の夜行列車らしいというか、乗客にはいかにもこれから登山やスキー・スノボに出かけるといった感じの人が多く、荷物棚にもそれを感じさせる荷物がたくさん載っています。
23:55に新宿駅を発車すると、すぐに車窓右手に新宿のネオン街が広がります。
複々線区間を抜けた立川と八王子でも少し乗車があり車内は8~9割ぐらいの乗車率に。ここから先も主要駅に停車しながら走りますが、さすがに夜行だけあって「あずさ」よりもゆったりしたペースで進みます。運転距離の短い夜行列車にありがちな長時間停車をする駅はないものの、ダイヤ自体はかなりのゆとりを持たせているようで、日中の普通列車よりものんびりした走りになっていました。
そんなゆったりした走りを続けるうち、4時半前後に松本駅に到着。ここで下車する人も多く、その人たちの多くは「ムーンライト信州」の運転日に同列車に接続して運転される松本電鉄(現 アルピコ交通)の臨時快速に乗り換えて上高地方面へ向かう要でした。
私も一度松本駅で「ムーンライト信州」を降りて篠ノ井線に乗り換えたことがありますが、篠ノ井線の始発列車の松本発が6時過ぎまでないので駅前をぶらついたり早朝から開いている待合室で時間をつぶしたりしたのを思い出します。
「ムーンライト信州」は松本から大糸線へ入ります。
といっても、私が乗車したのは日の出が遅い時期がほとんどで、車窓は相変わらず暗いままです。ただ冬は先へ進むにつれて車窓に雪が目立ち始め、雪深いエリアに入ってきたことを感じさせました。
このたび登場する特急「アルプス」同様「ムーンライト信州」の終着駅も白馬駅でしたが、私はいつもその手前の信濃大町駅で下車していました。これは「ムーンライト信州」の後を追って発車する信濃大町始発の南小谷行き快速に乗り継ぐためでした。南小谷行きには白馬駅でも乗り継げますが、座席確保のためには市は信濃大町での乗り継ぎがベストでした。事実、この快速が白馬駅に到着すると、「ムーンライト信州」から乗り継いだと思われる人たちで2両編成のE127系はかなりの混雑になっていました。
信濃大町で乗り継いだ快速は終点南小谷で1時間ほどの待ち合わせで糸魚川行きの始発列車に接続していました。
さらに糸魚川で北陸本線に乗り継げば18きっぷ1枚+前日の立川駅までの乗車券だけで北陸方面へ安く移動できるなど、「ムーンライト信州」は乗り鉄好きにとってもなかなか便利な列車でした。

久しぶりに復活した中央東線の夜行列車「アルプス」。
今回の夏の臨時列車としての運転は新宿駅発7月12日・8月9日・9月13日・9月20日(いずれも金曜日)の系4本で、これも「ムーンライト信州」時代を思い出させます。
今回はおそらく試験的な復活ということもあるのでしょうが、もし乗車率が良好なら秋以降もコンスタントに運転されることが期待できます。
そしてこの「アルプス」の運転が定着すれば、全国の他の路線でも同様な夜行特急や夜行快速が復活するということも期待できるかもしれません。
このところのバスドライバー不足により路線バスだけでなく高速バスにも路線の休止や減便が相次ぐ状況にあっては、深夜の公共交通機関での移動をバスだけに頼っているのはかなり危うい状況と思われるので、JR各社(運転系統によっては一部の第三セクター鉄道も)は新たな形での夜行列車の復活や新設を今こそ本気で検討するチャンスではないかと思います。