あれから15年…ブルートレイン「富士はやぶさ」最後の2日間 その2 | あさかぜ1号 博多行

あれから15年…ブルートレイン「富士はやぶさ」最後の2日間 その2

前回に引き続き、東京駅発着、そして九州へ向かう最後のブルートレインだった「富士はやぶさ」の最後の2日間の撮影の思い出です。

2009年3月14日。
ちょうど15年前の今日は、前日に東京・大分・熊本の各駅を出発した上下それぞれの最終「富士はやぶさ」がそれぞれの終着駅に到着し、東京駅発着のブルートレインの長い歴史に幕が下りた日です。
そんなこの日、もちろん私も上り最終「富士はやぶさ」の撮影に出かけました。
この日はまず早朝に自宅を出発。
「富士はやぶさ」撮影の前に上野駅に寄り、この日上野着の上り列車から直流区間(上野ー長岡間)の牽引機がEF81からEF64に変更されたブルートレイン「あけぼの」を撮影しました。
その後新橋駅前のマクドナルドへ移動し、朝マックを食べながら時間調整をしました。
実は前日からこの日にかけては日本列島を春の嵐が襲い、暴風雨や暴風雪の影響によるダイヤ乱れの影響で上下「富士はやぶさ」にも遅延が発生していて、マックでは某掲示板の「富士はやぶさ」目撃報告に流れる情報を逐一チェックしながら次の撮影地への移動のタイミングを計っていました。
掲示板情報を総合すると上り最終「富士はやぶさ」は約90分遅れで東海道本線を上っていることがわかり、9時頃にマックを出て新橋駅から東海道線に乗車。
東海道線も春の嵐の影響でダイヤが乱れていて、乗車した列車も途中で1~2回抑止を受けながら10時前に大船駅に到着したところで下車。
結局前日の下りと同じ駅で上りも撮影する形となりました。
当初は下りとは逆に下りホームから撮影することを考えていましたが、ダイヤ乱れのため下り列車の発着する時間ホームが予測できないため、上りホームで撮影することとしました。
土曜日とあって大船駅のホームには「富士はやぶさ」撮影の人たちが多数詰めかけていましたが、どうにか場所を確保。相変わらず某掲示板で「富士はやぶさ」の現在地を確認しながら通過の時を待ちます。
やがて10時40分を過ぎた頃、いよいよ「富士はやぶさ」が大船駅に近づき、やがてEF6642号機に牽引されて「富士はやぶさ」は大船駅を通過。何とか最後の上り列車の撮影も無事終わりました。
その後私は、大船で「富士はやぶさ」を待避していたE231系の普通電車で「富士はやぶさ」を追いかけます。「短い」10両編成の上、やはりここでも私と同じようなことを考える人も多いのかかなり混雑していましたが、幸い次の戸塚駅でできた空席に座れました。
横浜駅では先ほど乗車中の列車を追い抜いて行った「富士はやぶさ」がまだ停車中のホームの反対側に停車。
ホーム上は乗客や撮影者が入り混じり、それこそ立錐の余地もないほどのカオス状態でした。
「富士はやぶさ」が発車した後を追って乗車中のE231系も発車。
持参のポケットラジオで多摩川橋梁を渡る「富士はやぶさ」の走行音の中継を聞いてグッとくるものを感じながら、新橋駅に到着したところで下車。
ホームに降りた瞬間、東京駅方向からEF66のものと思われるホイッスルの音が響いてきて、なぜだかちょっと泣きそうになってしまいました。
新橋駅で下車したのは、東京駅に到着した後品川へ引き上げる回送列車を撮影するためでした。さすがに東京寄りホーム先端は人が多そうだと予想したので、ホーム中ほどで待つことしばし、11:55頃に回送「富士はやぶさ」が通過。
もうこれで東海道本線を走るブルートレインの姿を見るのも本当にこれで最後だと思うと、シャッターを押す指にも力が入りました。
そして、走り去っていくスハネフ14の後姿を見えなくなるまで見送り、この日の撮影は終わりました。

回送が通過してしまうと何だか緊張の糸が切れてしばらく動きたくなくなり、ホームのベンチでしばらく求刑して13時過ぎに東京駅へ向かいました。
1時間半ほど前に「富士はやぶさ」が到着した9・10番線ホームに上がると、先ほどまでホームを一杯に埋めていたはずの撮影者の姿はほとんどいなくなったようで、代わりにこれから「踊り子」「スーパービュー踊り子」で伊豆へ向かうであろう人々が多数集まっていました。
先ほどまで東京駅最後のブルートレインの到着という特別な出来事があったとはにわかに想像できないような、あくまでもいつもと変わらない土曜日の昼下がりといった光景にちょっと寂しさを感じつつ、ホームを後にしたのでした。

あれから15年。
今では東京駅発着に限らずブルートレインという列車自体が歴史の中だけの存在となってしまっています。
でもかつてブルートレインに憧れを抱き、大人になっても様々な形でブルートレインに接してきた私にとっては、今も心の中では現役感を漂わせながら生き続けています。
いつか、新しい時代にマッチした形でブルートレインの面影を受け継ぐ列車が登場することを夢に見たいと思います。