何気に楽しみな「ことでん」の新車 | あさかぜ1号 博多行

何気に楽しみな「ことでん」の新車

香川県内に3つの路線を展開しているローカル私鉄、高松琴平電鉄(ことでん)が2025年度から新車投入による車両の更新を行うようです。

2月12日の朝日新聞デジタルの記事によると、香川県が2月9日に発表した2024年度当初予算案で、ことでんの新型車両設計費の一部として9000万円を盛り込んだということです。
なぜ香川県の予算に私鉄であることでんの車両新造の費用が計上されるのかというと、この車両設計の費用2億円のうち9割が国、沿線市町からの補助金で賄われるためだそうです。

ことでんといえば、昭和の頃は前歴も形態も様々な多種多様な電車が編成を組んで活躍し、「動く電車の博物館」などと呼ばれて鉄道ファンには有名でした。
それらを置き換えるために昭和の終わりから平成年間にかけてことでんにやってきたのが、現在も活躍している元京急・京王・名古屋市営地下鉄の車両たちでした。
そしてその車両たちをさらに置き換えるために投入されるのがこのたびの新車というわけです。

これまで、経営基盤の弱い地方ローカル私鉄が老朽車両の更新をしようとする時には、車両を新造して置き換えることは少なく、関東や関西の大手私鉄を中心にJRや大都市の地下鉄からも中古の車両を譲り受けて置き換えるのが一般的でした。
しかし近年は、かつてのように大手私鉄からの大量の中古車両の供給が期待できない状況になり、中でも中小私鉄の線路や施設の規格に適合しやすい17~18mクラスの車体を持つ車両となるとさらに確保が難しい状況になっています。
ことでんとしても、車両の置き換えに際しては新造車両の投入と中古車両の譲渡という両面で検討を重ねたと思われますが、上記のような状況を踏まえた上で、国や県、沿線自治体からの補助金を受けられる見通しがついたことで、新車投入の決断ができたということなのだと思います。
また、同じ四国ではお隣愛媛県の伊予鉄道でも郊外線(鉄道線)の在来車両の置き換え用に新造車両を投入することになっており、それも刺激になったのかもしれません。

ところで、このたび投入されることになった新車は、ことでんにとっては1960年登場の1010形以来実に65年ぶりの譲渡車両ではない自社発注の新車となります。しかし1010形は車体のみ新造で台車や主要機器類は中古品を流用したものだったそうです。
では部品流用のない純然たる新造車両はいつ以来だったのかといえば、何と(2025年から見ると)97年前の1928年に製造された5000形以来だというのだから驚きです。

現在のところ、この新車がいつ何両どの路線に投入されるのか、さらに車体内外のデザインなども明らかにされていませんが、逆に言えば今の時期は、ことでん65年ぶりの自社発注新型車両がどんな車両になるのか、想像や妄想を膨らませるにはよい時期ともいえます。
車体はおそらくステンレスになると思われますが、ラッピングも含めてどんな外装になるか、また車内は定番のロングシートになるのか、あるいは琴平や屋島への観光客輸送も意識してクロスシートが設置されたりするのかなど、いろいろと脳内で完成予想図を作ってみるのも楽しそうです。

私はことでん沿線にはもともとゆかりのある人間ではありませんでしたが、鉄道雑誌に掲載されたことでん(当時は「琴電」と表記するのが一般的でしたが)の車両の動向についての記事をよく読んでいたこと、さらに個人的に思い入れの深い元京急の車両が多数活躍していたことから、子供の頃から好きなローカル私鉄の一つでした。
そして四国へ鉄道旅へ出かけると毎回乗り鉄や撮り鉄を楽しんだものです。
そういう背景もあり、今回のことでんの新車投入は私にとっても何気に楽しみなニュースです。
実際の導入は2025年度と少し先になりますが、登場したら現行車両も含めて久しぶりに乗りに出かけたいものです。