関西本線、復権なるか? | あさかぜ1号 博多行

関西本線、復権なるか?

名古屋駅とJR難波駅との間を、四日市・亀山・伊賀上野・加茂・奈良・天王寺などの各駅を経由して結ぶJR関西本線。
昭和30年代までは東海道本線などとともに名古屋と大阪を結ぶルートの一つとして機能していたこの路線も、その後は近鉄特急の充実や東海道新幹線開業などの影響ですっかり名阪間の都市間鉄道としての役割を失っているのが現状です。
現在は亀山駅を境に名古屋側がJR東海、残りの区間がJR西日本の管轄となり、名古屋ー亀山間と加茂ーJR難波感が電化されている者の間に挟まれた亀山ー加茂間は非電化のままとなっていて、列車の運転系統も亀山・加茂でそれぞれ完全に分断されている状況です。
そんな関西本線ですが、最近このうち名古屋ー奈良間に直通列車を18年ぶりに復活させようという話が持ち上がっているそうです。
これは、先月末に三重県庁で行われた、三重県と伊賀、亀山両市、JR西日本がつくる「関西本線活性化利用促進三重県会議」の席で三重県が報告したものです。
非電化のまま残され、利用者数も低迷している亀山ー加茂間の活性化に向けた実証運行で、三重県も費用を負担するとのことです。
来年の秋から冬にかけて最低でも2日程度運行し、観光などの沿線イベントと組み合わせて利用客を確保する考えで、今後JR東海や京都・奈良両県とも協議を進めるということです。
関西本線は、電化区間はそれぞれの都市圏の近郊路線としての存在感はありますが、非電化区間となるとやはりさびれたローカル線のイメージがどうしても付きまとってしまいがちです。そんな地味な路線でも、大都市名古屋から乗り換えなしで行ける直通列車が走り、しかも沿線に魅力的な観光スポットやイベントがあるとなれば、行ってみたいと思う人は結構いるような気がします。
そして、せっかく直通列車を復活するなら、それに使用する車両も乗ることに魅力を感じさせてくれるものにする必要があります。
運転区間に非電化区間が含まれるので、実証運行の段階での車両はおそらく過去にこの区間を定期運航していた実績のあるJR東海のキハ75系になると思われますが、できればJR西日本も観光列車仕様の車両を用意して運行に臨めばマスコミなどの注目度も上がるでしょう。
複数のJRを跨ぐ直通列車が希少なものとなる中であり、しかも他社の区間の活性化のための列車の運行をJR東海が果たして快く受け入れるかという問題はありそうですが、この実証運行が成功することにより、関西本線の利用者増、そして沿線地域の活性化につながり、やがて定期的な直通列車運転の定着につながっていけば、全国のローカル線の活性化のためのよい成功例になりそうな気がします。

私は、関西本線亀山ー加茂間には1998年のGWに一度だけ乗車したことがあります。
この時は、関西への鉄道旅に向かう道中に、普段はまっすぐ東海道本線を経由して向かうことがほとんどだったのを、たまには乗ったことのない関西本線経由で向かってみようかと考えて実行したものでした。
この時、新幹線から乗り継いで名古屋駅から乗車したのが、2006年まで名古屋ー奈良間を直通運転していた急行「かすが」でした。
急行「かすが」は、関西本線が名阪間連絡の主要なルートの一つとして機能していた時代のまさに生き証人的な列車でしたが、すでにこの時代には午前中に名古屋から奈良へ夕方に奈良から名古屋へという1往復が運転されるだけの状況になっていて、いつ廃止が発表されても不思議ではない状況でした。
廃止時の「かすが」の使用車両はキハ75系でしたが、私が乗車した当時は座席をリクライニングシートに交換し、塗装もアイボリーにオレンジ帯に変更したキハ58・65の2両編成による運転でした。
名古屋を出てからしばらくは名古屋のベットタウンといった感じの風景の中を走りましたが、亀山からの非電化区間に入ると一気にローカル感が増し、いかにも気動車に乗っているという実感がわいてきました。それは、新幹線や東海道本線で名阪間を移動する時には感じることのないもので、たまにはこうして「脇道」を通って目的地に行くのもいいものだとあらためて感じることのできた体験でもありました。

もし実現すれば18年ぶりとなる名古屋ー奈良間の直通運転。
乗り鉄好きとしてはもし実際に実証運行が行われることになればぜひ乗りに行きたいですし、今後のローカル線活性化のためのアイデアの一つとして動向を見守りたいところです。