今回は変数rの関数R(r)の次の微分方程式(B-3)を解きます。このrの関数R(r)は、1926年にSchrödingerが解いて発表したものです。
まず並べ替え、整理します。
関数と変数を次のようにおきます。
これより、次のようになります。
第1項はρとS(ρ)で次のように書き替えられます。
α^2を次のようにおきます。
さらに次のようにおきます。
これを代入し、4α2で両辺を割ると次のようになります。
関数S(ρ)を、さらに次のような初項がゼロでないベキ級数の関数に置き換えます。
※ここは量子力学の本をみてください。
この関数S(ρ)をρで微分して代入し、計算していくと次のように書き替えることができます。
式(E-7)は、ラゲールの陪微分方程式(Laguerre’s Associated Differential Equation)と呼ばれています。解法は色々あり、次のようなラゲールの微分方程式を経由して解く方法もあります。このラゲールの微分方程式は、ルジャンドルの微分方程式ほど一般的ではありませんが、載っている微分方程式の本もあります。しかし今回は、直接ラゲールの陪微分方程式を、級数を使った数学的帰納法で解いていきます。
以下、まず漸化式を求め、さらに数学的帰納法により解いていきます。
L(ρ)を次のような無限級数とおく。
ρで微分し、さらにρで微分し、ラゲールの陪微分方程式(E-7)に代入すると次のようになります。
ここでρνの係数だけをピックアップしてみる。
第1項はν=ν+1とおけばρνとなる。ρνの係数は次のようになる。
第2項もν=ν+1とおけばρνとなる。ρνの係数は次のようになる。
第3項と第4項はν=νとおけばρνとなる。ρνの係数は次のようになる。
そしてラゲールの陪微分方程式の無限級数の個々の項を書き換え、級数展開し、ρの累乗で整理して表すと次のようになる。
ρにかかわらず左辺が0になるためには、ρのすべての次数の係数が0でなければならない。一般項で表すと次のようになる。
ゆえに次のような漸化式が得られる。
最終的に得る波動方程式の解R(r)=S(ρ)=e(^-ρ/2)ρ(^ℓ)L(ρ)はρ→∞の時、有限つまり収束する必要があるわけですが、ここで確認してみます。
ν→∞の時
L(ρ)は無限級数ですがν→∞の時e(^ρ)に漸近し収束します。ゆえにν→∞の時R(r)はe(^ρ/2)ρ(^ℓ)となります。
ところが上図の下式右辺e(^ρ/2)ρ(^ℓ)はρ→∞の時、無限大になる。つまり発散し、このR(r)は波動方程式の解としては受け入れられない。
ν≠∞の時:L(ρ)を有限級数と置き換える
一方、R(r) =e(^-ρ/2)ρ(^ℓ)L(ρ)は、e(^-ρ/2)ρ(^ℓ)部分だけならρ→∞の時、収束する。つまり残りの級数部分L(ρ)を項数ν→∞から、有限の項数に限定すれば級数部分L(ρ)はρ→∞で収束する。
そこで漸化式において、λ-ℓ-1=ν’とすれば、有限な項数の級数となる。ここで、書き換えをおこないν’=n’と書き換える。さらに次のようにλ=nと書き換えると、n-ℓ-1=n’となり、級数L(ρ)は次のように表される。
最高次数の係数はa(ν’)=a(n’)=a(n-ℓ-1)、最高次数はρ(^ν’)=ρ(^n’)=ρ(^n-ℓ-1)となる。すべての項を展開すると次のように表される。
この展開したL(ρ)を、R(r)の式に代入し、再確認すると次のようになる。
この式の右辺の各項はρ→∞で個々に収束します。有限の項数なのでR(r)も収束する。つまりL(ρ)を有限の項数としたときR(r)も有限であり波動方程式の解として受け入れられることがわかる。
次に数学的帰納法により、具体的に有限な項数の級数L(ρ)の一般項を求めていく。
(i)まず最初に、最高次数の係数を次のように規定する。
(ii)漸化式で、と置き換えると次のように書き換えられる。
ここで、λ-ℓ-1=n’(=ν’)とすれば、a(ν’+1)=a(ν’+2)=a(ν’+3)・・・=0となり、λ=nと書き換えれば、n-ℓ-1=n’となる。
最高次数ρ(^ν’)の係数aν’は、ν’=n’と書き換えるとaν’=an’となる。つまり上の式でν’をn’と書き換えると次のようになる。
さらに、n’=n-ℓ-1を代入すると次のようになる。
ここで最高次数ρ(^ν’)=ρ(^n’)=ρ(^n-ℓ-1)の係数:
を代入すると次のようになる。
(iii)漸化式で、ν→ν-2と漸化式で置き換えると…
(iv)漸化式で、ν→ν-3と漸化式で置き換えると…
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・
・
整理して書き並べると次にようになる。
これより級数は次のように表される。
k’=(n-ℓ-1)-kと置き換えて、初項と末項を入れ替えます。
このL(ρ)を、R(r)の式に代入すると次のようになる。
以上でrの波動関数R(r)が得られました。しかし規格化されていません。次に規格化します。
●規格化された波動関数R(r)
rの関数R(r)の規格化の式を再掲します。
R(r)は実数の関数でありR*(r)=R(r)である。ゆえに次のように簡略化できます。
ここでrの関数の規格化定数Nを追加し、規格化されたrの関数R(r)を次のようにおく。
規格化の式に代入すると次のようになる。
定積分部分は次の値であることが知られている。
※ここは「量子力学の教科書・・・・」をみてください。
※母関数からの導出が詳しく載っています。多少難しいポイントもあるようですが。
これを代入すると次のようになる。
ここでは規格化定数として次を採用する。
ゆえに規格化されたR(r)の波動関数は次のように得られる。
●rで表わした規格化されたR(r)の波動関数
α=Z/(na0)およびr=2αρより、変数をρ→rと戻す。
●σで表わした規格化されたR(r)の波動関数
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量子力学入門 水素原子の電子軌道 シュレディンガー波動方程式 (改訂)
ここでは掲載していないラゲール(Laguerre)の規格化定数(normalization constant)を
「付録Ⅱ. 関数Rの規格化」 (pp159-166) に掲載しています。
ISBN
9784802095792