水素分子の定積分 1 <AB>重なり積分S | 化学の電子状態のブログ

化学の電子状態のブログ

ブログの説明を入力します。

今回より「水素分子の定積分」シリーズです。本シリーズでは、8種類の定積分を実際に解きます。この8種類の定積分とは、 原子価結合法とLCAO-分子軌道法(7) (9) で出てきて、そして8PRO積分表より引用した定積分です。

前シリーズでも少しふれましたが、水素分子の計算で使う同焦点楕円球座標(Prolate Spheroidal Coordinates or Confocal Elliptic Coordinates)は次の(A)のように定義されます。
化学の電子状態のブログ-I-1-0-3
化学の電子状態のブログ-I-1-0-1

さらに、次の(B)のような置換した座標もあります。
化学の電子状態のブログ-I-1-0-2

本シリーズの定積分は(A)または(B)どちらの式を使っても同じ結果になります。

前シリーズでマイライブラリーを(A)の座標で準備しましたので、本シリーズ「水素分子の定積分」も双曲線関数を使った(A)の座標で計算していきます。そして計算過程で、前シリーズの「水素分子の定積分・ライブラリー」を引用します。

 


積分を解いていきます。
本シリーズでは、略記号<AB>は次の積分です。

化学の電子状態のブログ-I-1-1

この積分Sは、重なり積分(Overlap Integral)と呼ばれています。この積分を求めます。

 

1.計算前の設定
●座標
上の積分の式を見ると、核Aと核B、そして電子1の3個です。電子2はありません。ゆえに下のようなXZ平面を考えて同焦点楕円球座標を設定します。核Aと核Bの核間距離rABはボーン・オッペンハイマー近似より定数とします。

化学の電子状態のブログ-I-1-2
●XYZ(デカルト)座標と同焦点楕円球座標との関係
化学の電子状態のブログ-I-1-3

●変数の範囲
化学の電子状態のブログ-I-1-4
●体積要素
化学の電子状態のブログ-I-1-5

●電子軌道
テンプレートの関数には核Aと核Bに同じものを使います。次の規格化された水素原子の1s電子軌道を使います。

化学の電子状態のブログ-I-1-6

核A の関数は次のようになります。
化学の電子状態のブログ-I-1-7

核B の関数は次のようになります。
化学の電子状態のブログ-I-1-8

 

2.積分の計算
これらを重なり積分の式に代入して、計算していきます。

化学の電子状態のブログ-I-1-9

 

α=rAB/a0とおきます。
化学の電子状態のブログ-I-1-10

 

 

{}内の積分をマイライブラリーより求めます。
化学の電子状態のブログ-I-1-11
MyLibrary 2-3-1
化学の電子状態のブログ-I-1-12

マイライブラリー2-3-1をそのまま使います。
化学の電子状態のブログ-I-1-13

 

Sに代入します。
化学の電子状態のブログ-I-1-14
 

定積分部分をマイライブラリーより求めます。
化学の電子状態のブログ-I-1-15
MyLibrary 1-1-1  

化学の電子状態のブログ-I-1-16
マイライブラリー1-1-1をそのまま使います。

化学の電子状態のブログ-I-1-17

 

もう1つの定積分部分もマイライブラリーより求めます。
化学の電子状態のブログ-I-1-18
MyLibrary 1-1-3

化学の電子状態のブログ-I-1-19

マイライブラリー1-1-3をそのまま使います。
化学の電子状態のブログ-I-1-20b

 

Sに代入します。
化学の電子状態のブログ-I-1-21


重なり積分Sは次のように求まります。
化学の電子状態のブログ-I-1-22