今回より「水素分子の定積分」シリーズです。本シリーズでは、8種類の定積分を実際に解きます。この8種類の定積分とは、 原子価結合法とLCAO-分子軌道法(7) と(9) で出てきて、そして8PRO積分表より引用した定積分です。
前シリーズでも少しふれましたが、水素分子の計算で使う同焦点楕円球座標(Prolate Spheroidal Coordinates or Confocal Elliptic Coordinates)は次の(A)のように定義されます。
本シリーズの定積分は(A)または(B)どちらの式を使っても同じ結果になります。
前シリーズでマイライブラリーを(A)の座標で準備しましたので、本シリーズ「水素分子の定積分」も双曲線関数を使った(A)の座標で計算していきます。そして計算過程で、前シリーズの「水素分子の定積分・ライブラリー」を引用します。
積分を解いていきます。
本シリーズでは、略記号<AB>は次の積分です。
この積分Sは、重なり積分(Overlap Integral)と呼ばれています。この積分を求めます。
1.計算前の設定
●座標
上の積分の式を見ると、核Aと核B、そして電子1の3個です。電子2はありません。ゆえに下のようなXZ平面を考えて同焦点楕円球座標を設定します。核Aと核Bの核間距離rABはボーン・オッペンハイマー近似より定数とします。
●XYZ(デカルト)座標と同焦点楕円球座標との関係
●電子軌道
テンプレートの関数には核Aと核Bに同じものを使います。次の規格化された水素原子の1s電子軌道を使います。
2.積分の計算
これらを重なり積分の式に代入して、計算していきます。
{}内の積分をマイライブラリーより求めます。
MyLibrary 2-3-1
定積分部分をマイライブラリーより求めます。
MyLibrary 1-1-1
マイライブラリー1-1-1をそのまま使います。
もう1つの定積分部分もマイライブラリーより求めます。
MyLibrary 1-1-3