5月9日、入院当日。


私は、上司に急遽休みをいただき帰省した。父の病気を聞き、本来5月末から6月頭にかけて帰省するつもりでいたが、父の治療状況によっては会話がままならなかったらと思うといてもたっても居られなかった。


13:00までに入院手続きを済ませる必要があったため、午前中に実家に帰れるよう新幹線の切符を手配し帰省した。



自宅まで一人で帰ると言っていたが、駅まで迎えに来てくれるという。

最寄駅につくと、改札口に父と母が揃って出迎えてくれた。


車を私が運転すると言うも、父は「自分で運転できるから大丈夫」だと言う。


しゃきしゃきと普段通りに歩く父の姿を見ていると、父の体に潜む病魔が信じられなかった。



実家につくと、母は早めの昼食を用意していてくれた。



久々に食べる父と母と私の3人の昼食。


いつもと変わらない風景だった。



昼食後、父は石油ストーブの片づけを始めた。

ストーブに残った石油の吸いだしとまた冬に利用するための整備をしていた。


父の姿に堪らなくなり、父と娘二人で石油ストーブの整備を黙々と続けた。

洗い物をする母は背中を向け涙ぐんでいた。


病気の深刻さを受け止めている父は、言葉の端々にもうこの家に戻ってこれないかもしれないとポツリと漏らす。


母と二人で何を言っているんだと父を嗜める。


一番つらいのは、父であることはわかっている。

これから、つらい過酷な治療が待っていることもわかっている。


ただ、励ますことしかできない、いっしょに闘おうと伝えることしかできない。

どうか、父をお守りください。心の中で呟いた。



家を出る時間が刻々と迫る。


父の運転する車で私たち3人は病院へ向かった。




行きは3人、帰りは2人。


お父さん、私たち家族はお父さんが病気に打ち勝ってくれることを信じているよ。