
フランス印象派の陶磁器 1866-1886 ジャポニズムの成熟 @パナソニック汐留ミュージアム
(2014,4,5~6,22)
今回は、陶磁器をみてきたはずなのだけれど、
絵画をみてきた気分になった。
1874年4月、第1回印象派展がパリで開催された。
陶芸の世界においても新しい技術やジャポニスムからの発想を生かすなど、近代性を取り入れた革新的な陶磁器が作られる。
同展の出品画家で銅版画家のフェリックス・ブラックモンも、日本美術の影響を受けた一人。
彼は、リモージュ磁器で知られるアビランド社の経営者で、
日本美術の蒐集でも知られるシャルル・アビランドと出会い、
美術監督として、ジャポニスムのモチーフなどを生かした伝統に捉われないデザインで才能を発揮する。
1880年代初頭には焼締陶器や銅紅釉を使用するなど新しい素材への挑戦を続け、アビランド社はフランスを代表する陶磁器メーカーとして発展した。
第1回印象派展から100年を経た1974年には、
「セラミック・インプレッショニスト(Céramique Impressionniste)」という展覧会がパリで開催され、
作品群は「印象派の陶磁器」と称され、その芸術性の高さが認知されることとなった。
第1部 テーブルウエアの大革命!
—フェリックス・ブラックモンの《ルソー》シリーズとジュール・ヴィエイヤール工房
「ルソー」シリーズ 雄鶏に熊蜂(くまんばち)図皿
クレイユ・エ・モントロー陶器工場 フェリックス・ブラックモン 1867年、 Y. &L. ダルビス蔵
フランス陶器における最初のジャポニスムの作品。
まるで浮世絵の世界そのもの!
葛飾北斎による版画「北斎漫画」や「花鳥画伝」をそっくりそのまま参考にした図皿がずらり。
鶏だけでなくて、
体中トゲトゲの針をもった赤魚、カサゴや、
エイや車エビ、ハゼなど個性的なモチーフがたくさん。
「黒く太い輪郭線で囲われた動植物の絵柄の色彩が、余白を強調するほどに鮮やかなのです」
と解説にあるけれど、その通り。
縁取りの青い梳毛模様もきれい。
印象派以前の食器は、中心と縁取りに模様を施すのが常識だったため、
このフェリックス・ブラックモン作の《ルソー》シリーズはまさに革命的だったらしい。
1867年のパリ万博で好評を得てから、1930年代後半まで制作された
アビランド社のロングセラー商品とのこと。
ちなみにアビラント社は、
1853年にニューヨーク万博で初の金賞を受賞してから
1867年にパリ万博で金賞、1876年フィラレルフィア万博で銀賞、
1878年のパリ万博でもまた金賞を受賞している。
他にも、「北斎漫画」以外に「冨嶽百景」を参考にした図皿が展示されていたのだけれど、
本当にあの北斎の絵に出てくる、当時の着物姿の男衆が、
皿の中で釣りをしたり蹴鞠をしたりしている!
しかも、浮世絵よりも種類豊富にカラフルに描かれていて
まるで現代絵本の挿絵を切りとったみたい。
何とも癒され、かわいさに胸ゆすぶられる作品群であった。

テーブルコーディネート
《ルソー》シリーズ 4人用のカジュアルセッティング
第2部 アビランド社の硬質磁器における革命 オートゥイユ工房のデザイン
1842年の春、アメリカ人のダヴィッド・アビランド一家が、アメリカの顧客が気に入りそうな食器の買い付けに、
フランスの磁器産地、リモージュにやって来た。
ダヴィッドはすぐこの地に装飾工房を、さらに数年後には独自の磁器工場を建て、
1879年には、ヨーロッパで最大の磁器製作所となる。
その後、普仏戦争を終えたフランスの新しい中流階級層向けの、
近代的で手ごろな価格の製品開発にむけ、シャルル・アビランドは
国立セーヴル磁器製作所を訪問。
そこでフェリックス・ブラックモンと出会う。
パリの西部郊外にあるオートゥイユ工房の芸術監督となったブラックモンは、
磁器の装飾に多色石版印刷術を用い、コスト削減するなどし、
伝統やルールに捉われない、新しいデザインを生み出すことに成功した。
「散る薔薇」シリーズ コンポート
アビランド社(リモージュ) フェリックス・ブラックモン 1876年、 Y. &L. ダルビス蔵
↑上品にピンクのバラや花びらが散りばめられて気品たっぷり。

《海草》シリーズ6人用のティータイムセッティング
貴婦人たちが集ってティータイムを愉しむ光景が頭に浮かんできた。
《花とリボン》シリーズだったり《パリの花》シリーズだったり、
名称からしておしゃれな皿がたくさん。
中には、金彩でペルシャ柄をとり入れたり、藍地に金彩で草花の模様を施したものなど、豪華なものまで。
けれど、余白が多いのに加えて、絶妙な配置でモチーフが配置されているから、嫌味にならない。
明るさをおさえたパステル調というのかなぁ。
つかわれているグレーやピンク、えんじなどの色味がシックで魅せられた↓

《パリの花》シリーズ 花文楕円形大皿
アビラント社 ジラルダン、アルベール・ダムーズ1883年、 Y. &L. ダルビス蔵
第3部 ファイアンス陶器から「印象派の陶磁器」 テラコッタへ-アビランド社オートゥイユ工房
1876年にはオートゥイユ工房で、新しい技術「バルボティーヌ」による作品製作を開始した。
「バルボティーヌ」とは、テラコッタ(イタリア語で焼いた土)の上から泥しょう(スリップ)を掛け、
絵画のように絵付が施されるという技法で、エルネスト・シャプレが開発。
オートゥイユ工房では、それぞれ「花」や「風景」など担当するモチーフが決めらた芸術家たちが、
素材や光、日本の版画や前衛的な印象派絵画にみられる新しい構図や絵の具の扱い方を取り入れた。
花瓶に描かれた花は、まさに自然の中で生き生きと咲き乱れる風景の中の花であったように、
風景画の作品の多くが、バルビゾン派の絵画様式を取り入れたものだった。

バルボティーヌ 薔薇クレチマス図花瓶
アビラント社 オートゥイユ工房 アンリ・ラベール1876年 Y. &L. ダルビス蔵
バルボティーヌ 草花燕図水注
アビランド社 オートゥイユ工房 レオン・パリゾ 1876-1883年 テラコッタ Y. &L. ダルビス蔵
色彩豊かな作品群はまさに印象派の絵画そのもの。
この辺りからだんだんと、陶磁器をみているのか印象派の絵画をみているのかわからなくなってくる。
カミーユ・コローをお手本にしたという花瓶や皿は、
全面まさにコローの風景画そのものだったし、
ゴーギャンに影響されたという大皿(下図)も、色づかいからして
THE・ゴーギャンといった風合いだ↓

彫文青山秋景図大皿
アビランド社 オートゥイユ工房 フェリックス・ブラックモン 1874年、 ファイアンス陶器 Y. &L. ダルビス蔵
大皿なので本当に大きく(60㎝位?)迫力も油絵そのもの。
更には、
「風景図陶額」なんていう、
風景画が描かれた四角い陶器が、絵画よろしく木の枠にはめられて飾られたのまであるのだ。
途中、日本画の余白が恋しくなってくる感覚におそわれた。
他に、彫刻家が作ったのがひと目でわかる、立体的な天使像がくっついていたり、巻貝の形をした陶器や、
黒地に金彩で花鳥図が描かれた日本の漆器様式のものなど、
バラエティに富んだ作品がたくさんあった。
第4-1 炻器・新しい素材への新しいアプローチ — アビランド社ブロメ通り工房
日本風花文ティーポット
アビランド社 ブロメ通り工房 1883-1885年 炻器、 Y. &L. ダルビス蔵
炻器といえば、農場で日常的な道具として使われていたものだった。
シャプレは、細かくふるいにかけた酸化鉄の豊富な土を選び、作品を型に入れてからろくろで回すことにより厚みを薄くする技法を取り入れ、釉薬を使わず土の色を生かし、
平凡なやきものから一転、焼締陶器を開発する。
第4-2 チャイニーズ・レッド — 名陶工エルネスト・シャプレ
銅紅釉梅瓶形壺
アビランド社 ブロメ通り工房 エルネスト・シャプレ 1885年後半 磁器、 Y. &L. ダルビス蔵
フランス語で「牛の血の色」と呼ばれている銅紅釉は、18世紀初めに中国で完成された。
1885年半ば、アビランドの兄弟らは、パリのオートゥイユ工房とブロメ通り工房の実績に落胆していた。
オートゥイユ工房は、多色石版印刷術の業務に限定され、
ブロメ通り工房は、1886年初頭にはシャプレが買い取り、そこでチャイニーズ・レッドの銅紅釉の研究に没頭した。
バルボティーヌに、焼締陶器に、銅紅釉の開発。
エルネスト・シャプレ氏はどれだけ物すごい人物なのだ。
銅紅釉は、高温で酸素が豊富な酸化状態(窯の戸が開いている)と釉薬が緑色に発色し、
反対に、戸を閉じて煙を発生させるか、石炭が多すぎて還元状態になると、赤色になるらしい。
写真がないのが残念だけれど、
研究に研究を重ねた成果であろう作品らは、
ひとつの壺に、赤と緑の両方の色をあわせもっていた。
いちばん最後に展示されていたのは、
藍地に金彩や白泥で、睡蓮、花鳥、蝶、兎図などが描かれた、日本風の小皿たち。
白が、日本画みたいに透き通るように浮かんでみえて、幻想的だった。
全体を通して。
日本的な、梅、竹、笹、菖蒲、雀、白鷺、バッタ、コオロギにトンボと勢揃いしたモチーフが、
海を渡って欧風に鮮やかに描かれていて、新鮮だった。
余白を生かした構図や、色づかいのセンスも魅力的な陶磁器がたくさん、魅せられた。
印象派のお皿でご飯を食べたら、味がわからなってしまいそうだし、
大きなカサゴが描かれたお皿で、肉料理は絶対に食べられないけれど(笑)
装飾用だものね。
今回、汐留ミュージアムの公式サイトから
ジュニアガイドがダウンロードができるのだけれど、それがとてもためになった。
更には、プリントアウトして、簡単な質問に記入して受付に提出するとすてきなプレゼントが・・・
と記載してあったのでチャレンジしてみた
その結果↓

汐留ミュージアムオリジナルメモ帳GETヾ( ´ー`) 笑

ショップで購入したファイルは
お皿がたくさんのっていてお気に入り
ちなみに上から2列目の1番左がカサゴ(*゚ー゚*)
フランス印象派の陶磁器 1866-1886 ジャポニズムの成熟 @パナソニック汐留ミュージアム
(2014,4,5~6,22)
全部観るのにそこまで時間もかからないと思うので、
気軽に足を運べておすすめですヽ(*・ω・)人(・ω・*)ノ
前回の南部鉄器展に引き続き、愉しめました。
日本の美すばらしき。
ありがとうございました。