広重ブルー -世界を魅了した青ー @太田記念美術館








今までいったい浮世絵の何をみてきたのだろう。



「広重ブルー」



江戸時代後期、既存の藍色とは異なる「ベロ藍」が中国で安価に生産されるようになると、

広重、北斎、英泉などの浮世絵師たちは、次々とこの新しい青色をとり入れるようになったらしい。



浮世絵の青色はほんとうにきれい。

以前は全く興味がなかったはずなのに、

いつか違う企画展であらためて浮世絵を目にしたとき、

まず惹かれたのは、この空と海に広がる青色だった。



絵師の中では広重がいちばんすきだけれど、

名所絵や風景画も大すきだけれど、

色に焦点を置いてよくよく観てみたら、

そもそも私は何にそんなに惹かれてきたのだろうって。



もちろん風景の描かれ方、線の動き、構図、彩色配色のされ方ぜんぶなのだろうけれど、

青一色にしたってほんとうに多彩。

限られた顔料で、濃いの薄いの緑がかったの白っちゃけたのって色々あるけれど、

ぼかし方がとても重要なのだと知った。



浮世絵って、絵師、彫師、摺師の三拍子そろったうえでの木版画だけれど

例えばこの


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歌川広重「名所江戸百景 日本橋 雪晴」 (安政3年 1856)


川に架かった橋の影、濃い部分を、両側へ均等にぼかすには、摺師の熟練の技が必要らしい。



グラデーションも重要。

自然の緑色が好きだから

背景に並んだ山になんかよく見惚れてるけれど、

黄緑から深緑に変化していくのを目で追ってゆくのって本当におもしろい。



歌川広重 六十余州名所図会「對馬(対馬) 海岸 夕晴」


山の緑に海の青に淡い虹。



寒色だけじゃなくて、赤や黄に着目してみたら、

日の出や夕方の赤もちゃんとぼかしてあるし、

土埃がしそうな土道なんかもやまぶきでグラデーションになっているのだ。


一文字ぼかしだって、夜は墨できれいにひかれているし、

岩肌の灰色だって濃く薄く重ねてあって

青だけでなくて、色それぞれがもつそれこそ“色”の豊かさに圧倒されてしまった。




歌川広重「四季江都名所 冬 隅田川之雪」 (天保5年 1834頃)


今回、四季江都名所はこの冬と、下の夏の2枚が展示してあったけれど、

当時、紙は横向きに描くのが主流だったため

縦にした作品は珍しく、広重の新たな挑戦だったらしい。








明治に入ると、文明開化で一気に洋式化した街の様子なんかがよく描かれている。

(今回も三代広重、豊国が描いた作などが数枚あった)

いままでに観てこなかった濃い紫や、ぱっきりした赤、緑、黒、黄が一面の中でごったかえすと

がちゃがちゃして趣もないし、派手なばかりで観ていて疲れる。

(と個人的に感じている。)


その時代によっての風潮があるのだから、

作品自体は素晴らしいのだから、

そしたら書かないでくださいって話で

じゃあ何が言いたかったのかというと、


今回そんな派手な作品が並んだ箇所で(二階の最後の展示)、


二代目広重

「東都名所 吉原仲之町」(文久2年 1862)


が異彩をはなっていたのだ。



吉原の一角で道の両側に家屋や人々の様子が描かれているのだけれど

よけいな色をつかっていないのだ。

青と白と、着物などに赤を少し。

全体的に青みがかっていて、すごくシンプルで静謐。

桜が植わっているのだけれど、ぼんやり霞んで幻想的。

両側の元気な絵に囲まれて、この絵の前だけ静かな空気が流れていた。


二代目広重はすごく忠実に初代の画風を受け継いだと説明されていたけれど、

広重って、その場の空気をつくるのがすごく上手だと思う。

そして構図が斬新だから、ダイナミック。

窓一枚隔てて向こう側に広がった景色をこちらから覗いている感じ。

だからいつみても新鮮。時代場所を超えて絵の中にタイムスリップできる。

街の様子が描かれていたら、その活気が伝わってくるし

動きのある登場人物たちを目で追いながら、

つい勝手にふきだしをつけて会話させてしまう。



構図といえば、

歌川広重「はねたのわたし辨天の社」(


歌川広重「はねたのわたし辨天の社」 (安政5年 1858)


欄干の上から川の向こうの社を眺める男の

手すりを握った腕と膝下だけが画面の左側に描かれていておもしろかった。

腕毛とすね毛がアップで一本一本よく描かれているのがすてき。




他、作品の感想。


観なれた東海道五十三次や江戸百景ばかりでなくて

近江八景(計二枚)や六十余州名所図会(計五枚)も観ることができたけれど

(2階に上がってすぐの展示)

自然が一段と色彩豊かに描かれていて魅力的だった。

一通り観おわって、再度時間を費やしたのはこの並び。


遠くにちっちゃく富士山が白抜き(!)してあったり

青で大きく型抜きしてあったり(抜きであっているのか・・・?輪郭線なしで青く山型のシルエットになっているのだ)

うねりをあげる線が魅力の波の青には、エメラルドグリーンが重ねてあって魅力倍増であった。


ベロ藍の展示以外にも

「浮世絵の歴史」

墨一色の墨摺絵から始まって

それに筆で赤の顔料を入れた紅絵

薄いけれど黄や緑が加わって・・・

と徐々に色の種類が増えていくのを

実物の作品をつかって

わかりやすく順を追って解説されていた。


あと実際に彫師が使用する鑿や小刀

摺師が使用する馬連や刷毛

顔料の種類

完成して使用された木版画の主板と色板などの解説付き展示。


いつも美人図なんかで女性の額の生え際の

髪の毛いっぽんいっぽんの細かさに感嘆されるけれど

それらが彫られた板を直に見られたのが嬉しかった。

ほんとうに細く滑らかな曲線で彫られているのだ。


よく浮世絵の展示会にいくと思うのだけれど

絵師だけでなくて

彫師や摺師の紹介もして欲しいなと思う。

というか、こんなに熟練した技をもっているのだから

せめて名前だけでもどこか作品リストとかに載せておいて欲しいというか・・。

名師たちにとっては名声なんてどうでもいいのか・・・、

大きなお世話なのかも。



今回、色に着目することで

これから浮世絵を楽しむための、観かたが増えたのが嬉しかった。


ありがとうございました。




広重ブルー -世界を魅了した青ー @太田記念美術館


前期は4/27(日)までだからもう終わりだけれど

後期は5/1(木)~5/28(水)と開催される。




太田記念美術館は

久しぶりに行ったけれど、

さすが浮世絵専門の美術館とあって

展示の仕方に
浮世絵への愛
感じる(笑)

いつも行く前より浮世絵がもっとすきになって帰る。



後期も行きたいな(*^^)v

週末夜間の部とかあればなぁ。。

いつも観終わるまで3時間はかかるから

最後に閉館時間が迫ってきて焦る((+_+))

出てからショップでポストカードが選びきれなくて焦る。

たいていトイレも我慢してるから焦りに拍車がかかって

会計では身をよじりながら冷や汗かきかき

トイレに駆け込む(((((ノ;°Д°)ノ



そして毎回すっきりして

上機嫌でその日の展示の回想なんかしながら

ロッカーに百円玉を

忘れてきたのに気付く帰り道・・・Orz



美術館に募金したと思おう( ゜∋゜)b