エゴイズムの諸相 | 大分アントロポゾフィー研究会

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“私たちが克服しなくてはならない性質には、怒りや不機嫌のほかに、臆病な心、迷信、偏見を好む心、虚栄心、名誉欲、好奇心、必要のないことを何でも人に話したがる気持ち、人間を外面的な地位や血縁関係をもとに差別する態度、などがあります。現代人にとっては、これらの性質を克服することが認識能力を高めることと関係がある、という事実を理解するのはとても困難です。しかし神秘学を学ぶ人は皆、知性を育てたり、芸術的な訓練をしたりすることよりも、このような性質を克服することのほうがはるかに重要である、ということをよく知っています。”(ルドルフ・シュタイナー『いかにして高次の世界を認識するか』松浦賢訳 柏書房 p. 104)

 

これらの「性質」は、ミームに由来し、エゴイズムと分かちがたく関係している。

ミームの文脈をずらすことによって、ものの見え方を変えてみたり、ミームのベクトルからこれらの「性質」を批判したり、強引に矯正しようとしたりすることでは、それらの「性質」を克服することはできない。いずれの行為も、ミームとエゴイズムの枠組みを抜け出ていないから。あるミームがそれとは異なる別のミームを批判するという行為自体が、ただ単にいわば平面的にミームが増殖するというミームの常套手段だ。ミームとエゴイズムの桎梏はどこまでもついてくる。

 

それが悟性の営みであるかぎり、「知性を育てたり、芸術的な訓練をしたりすること」が純粋思考を成すことに結びついてはいかない。

そうではなく、ミームとエゴイズムに由来するこれらの「性質」を克服すること、つまりペルソナとシャドーの間で繰り広げられるエゴイズムの諸相を冷静に観察し、そうした反感に根差す人生ゲームの虚しいシナリオから勇気をもってドロップアウトすること・・・

 

1 それはミームだ。ミームがあなたの思考・感情・意志を支配している。その状態を、悟性魂/心情魂と呼ぶ。

1-1 ミームはあなた自身ではないが、あなたの思考・感情・意志がミームに支配されているため、ミームがあなたであるかのように・・・だれが思うのか?・・・いやいや、ミームは表には現れず、あなたの陰に隠れているが、その隠れているミームがあなたを操っているのだ。そして、あなたはあたかもミームの化身のようになる。ペルソナになる。

 

2 だれがミームをもたらしたのか? ・・・鉱物界、植物界、動物界そして人間界の諸々を、私たち人間はつくりだしてはいない。それと同様の意味において、ミームをつくりだしたのは人間ではない。

2-1 このような厳然たる他者たちの在り様と対置できる唯一のもの、それは、「我思う、故に我在り」という直観/純粋思考だ。この純粋思考を私は所有しているわけではない。そうではなく、この純粋思考が私なのだ。この純粋思考である直観を、人はその昔から、「わたし/Ich」と呼んできた。

 

3 何かを所有するなら、それはエゴイズムゆえだ。私ではない何ものか、つまり他者を所有する。所有という行為はエゴイズムに由来するのだ。

3-1 なぜ所有しようとするのか? それはそれがあなたではないものだからだ。それはあなたではなく、他者であり、他者はペルソナとしてのあなたから見れば、いつなんどきあなたを脅かすかしれない、そのようなあなたの融通が利かない何ものかだ。だからそれを所有して、あなたは自分の思い通りにしたいと欲望する。所有とはそのようなあなたのさもしい願望の表れだ。

3-2 実際に他者があなたの思い通りになることなどあり得ないから、所有の試みは常に失敗する。

3-3 だから、他者はあなたの思い通りには成り得ないという現実に気づくことが最優先事項なのだ。ミームとエゴイズムに囚われていれば、あなたがその現実に気づくことはない。なぜなら、あなたは自分の欲望を成就するために、ミームのアルゴリズムの迷宮をいつまでも彷徨い続けるから。

3-4 人間の対象意識というものは、一度には一つの対象しか目に入らないから、およそものごとを俯瞰するということができない。だから、ミームの全体を俯瞰できないので、出口が見えないのだ。見えているのは、常に何らかの文脈イメージ、ミームの一部分だ。他の部分は見えていない。他の部分を見ようとすれば、そこから動く必要がある。そのようにして動き続ける。いつまで動き続けるのか?

 

4 そもそも、なぜあなたはそのように動いているのか? 通常あなたは、なぜ自分がそのように動き回っているか、わからなくなっている。そのように動き回っているときのあなたは、他ならぬペルソナだ。それは偽りの自我であり、悟性魂/心情魂だ。どぎつい言い方をするなら、ペルソナはミームの奴隷だ。つまり、あなたはいわばミームに急(せ)かされ、ミームの言うがままに動く。そのようにペルソナとしてミームによって動かされること、操られること、ここにエゴイズムというものの特徴がある。そして、あなたは自分がエゴイストであることを自覚できない。