2021年度からスタートしている、広島県東広島市の取り組みである「5つの力を育む魅力ある保育環境づくり」。

3年目の23年度は26園のエントリーがあり、この度、その成果を発表する会がありました(約120名の参加)。

 

この事業については、以下リンクをご参照ください。

 

行政が主導となり、これほど積極的に各園の取り組みを支援することは、全国でもあまり例がないだろうと思います。

 

 

成果などの発表(1時間)は、「ポスター発表」の形式をとりました。

2グループに分け、責任時間30分間はそのポスター前に辻立ちして、質問などに答える時間となります。

この形式は22年度やってみてよい感触を得たので、今年度もこの方式を採り入れたのでした。

昨年度よりもさらに活発なやり取りが多かった印象を受けました。

 

 

ところで、わたしがかかわった園のなかで、取り組み1年目のみなさんの多くが取り組んだのは、土、でした。

 

足元に地球 🌎

 

地球と子ども。この接点が土なのですが、この接点との相性に問題があると強く感じています。

何が問題だと言えば、硬さであり感触でありにおいであり色であり…。

何かひとに優しくないわけです。

もちろん園庭は人工的なものですが、自然の世界とあまりにかけ離れてしまっています。

これは、歴史的に、「運動場」を教育の場に強く求めてきたという面が強く影響していると思われます。

一方で、「庭」を求めてきた動きも歴史の中ではありました。

 

自然と人工物の接続部分でもある園庭ですが、接続の機能をしっかりと果たすために、体育の授業がない乳幼児の施設ではより自然に近くてよいと感じます。となれば、やはり庭だよね、というわけです。

※庭にもいろいろあるのですが、ここでは、無機質的な運動場と区別する意味で用いています。

 

運動場ではなく庭していくための取り組みの「最初の一歩」が土質の改善になったという感じです。

これは、そうしましょうというよりも、普段から園庭の地面に不安を感じていたからでした。

 

ここを自分たちの手で変えていくことで不安要素が減り、安心要素が増え、子どもたちの様子を今まで以上に安心して見ていられるという事実に気づけたことは、1年目の園にとってはかなり大きかったのではないかと感じます。不安が大きいと、どうしても子どもの内面を・育ちを、というよりも管理面に意識が向いてしまいます。これも人間としては仕方のないことですが、保育の場です。集団保育の場に敢えて身を置く理由を、常に頭の横に置いておきたいものです。

 

【既存のブランコ下の地面を改良した例。青雲保育園】

 

 

以下、公立2園の取り組みについて。環境を整えていったことで、おとなと子どもの関係性の再構築ができ始めた事例。

 

                       

 

さて、東広島市立の公立園の中で、先陣を切ってスタートした中黒瀬保育所です。

3年目の今年度は、一昨年度・昨年度の取り組みの成果であった、「優しい砂場」「優しいブランコ」に引き続き、優しい築山・優しいすべり台づくりに取り組みました。

 

【模型(写真手前)をつくり、検討したうえで制作】

 

築山に関しては、21年度、園庭の土(真砂土)を集めて小さな丘状のものをつくって子どもの様子を観察・分析しました。

0歳児から5歳児までがたむろする、より安心して子どもたちの様子を観ていられる築山の必要性を感じ、保護者などの力強い協力を得ての制作となりました。

 

すべり台は、以前のハラハラ・ドキドキからワクワク・ドキドキに変化。

 

【老朽化によって撤去されたすべり台】

 

すべり台の事故の多くに「転落」があります。

築山に設置すれば転落の可能性はなくなります。

幅を広くすれば、下から上る子と上から滑り降りる子の「離合」(すれ違い)が容易になります。

材質を木にすれば、クッション性が高まります。

 

【1歳児も座位をキープして滑ってこられる】

 

出来る限り、おとなが距離を置いて観ていられるようにしています。

もちろん、危険を感じたら、声をかけたり近くに行って対処したりします。

ただ、この築山で子どもたちに何を期待するか、おとながどんな気持ちでいられることを期待するか、などを考えたうえでどうおとなたちがふるまったらよいのか、この思考・試行錯誤を繰り返す。ここが、この整備の肝(キモ)となります。

観察・分析を絶えず行って、思考・試行錯誤すること。そしてこの過程を楽しむこと。

メンテの労も惜しまないこと。かわいい子ほど手間がかかる、と思えるかどうか。

 
そう、総合遊具が撤去されていました。
 
【かつて存在した総合遊具】
 
こちらも昭和の時代からあり、老朽化が指摘されていました。
役割を終え、その任を解かれました。おつかれさまでした。
 
【すっかり更地化した総合遊具のあった場所。土はふかふか】

 

この場のこれからにいろんな夢を描いているようです。

乳児のお部屋からも近いので、幼児と乳児のより多くの接点の場になるかも、ですね。

 

 

2024年度も東広島市の事業は継続します。

どんな展開になるか、とても楽しみです。

 

 

おしまい。

 

以下、最新YouTube動画リンクご紹介。

■【ひらめき広がる工作のお部屋!集中力が続く編み物コーナー、子どもが遊び込める環境づくりとは?】(北海道・岩見沢聖十字幼稚園) 

https://youtu.be/5Mb4RVbKQ-s  ※2024年2月18日公開