西田地方(にしでんじがた)保育園。

 

今回のワークショップでは「ニシデン小タワー1号」(仮称)を制作。

設計図を描いたのはつくるの大好き・松永保育士。みんなで『子どもが自ら育つ園庭整備』やおおぞら教育研究所発行の冊子などを参考にしながら話し合ったことを図面に起こしたそうです。

 

まずは安心の地面から

地面の固さは転んだり落ちたりしたときの打撲などのことを、表面に散らばる小砂利は滑って転んで擦過傷などのことを思い起こさせます。小タワーの周りは、これらの不安からおとなも子どもも解放されるために土壌改良を行いました。踏みしめたおとなたちから思わず笑顔が。

「これなら安心できる!」

第一段階、終了です。

※子どもたちの往来が激しいところでは、地面の柔らかさを維持するために随時のチェック(踏んでみるだけ)と手入れ(耕運機や人力で耕す)はやはり必要です。ただ、頻度はそんなに必要ないとは思います(地面の状況による)。

 

【様々な有機物が混ざりこんだふわふわ地面】

 

作業は楽しく

下の写真。発掘作業現場で遺物のピックアップをしているとか漁協で貝の選別をしているとかではありません。農協でミカンの大きさをそろえているわけでもありません。

今の園庭の土も有効に使おうと、小砂利を取り除いているところです。

 

単純な作業ですが、その分、おしゃべりに花を咲かせることができます。

何気ない雑談は、そのひとたち同士の心理的距離感を縮めます。

普段はなかなかできない保育系の内容ではない雑談。

盛り上がりつつも、ミッションはしっかりと。

手をしっかりと動かしつつ、同時に口もしっかりと動かして。

 

ある方が、「無の時間、楽しかった!お名残り惜しい!!」と話されていました。

こういう時間、実はものすごく大事なんですよね。

 

【単純だけど意外に楽くもなる作業】

 

 

 

 

工具の使い方にもだんだんと慣れてきました。

最初はなかなか上手に打ち込めなかったビスも、迷いなく、ダダダっとスムーズに。

会話は上手になってもまだうまくできなくてもどういうわけか、弾むものです。

ここがものづくりのおもしろいところ。

 

【だんだんと工具も使い慣れてきてビスもびしっと打ち込めます】

 

ただただものをつくるのではなく、プロセスがやっぱり大事。

楽しい雰囲気の中で生み出されたからものだからこそ、より愛着が持てます。

そこで起きるいろいろな物語にも好意的な関心が寄せられます。

 

この「つくる」という行為は、結果的に人間関係も併せて醸成していきます。

ただ、人間関係を醸成させるためにワークを行います、という「ねらい」を立ててしまうとしらけますし、そうなっているように演じなくてはならない、という意識も生んでしまうかもしれません。恐らく成果も限定的になる気がします。

 

どうしたら、みんなが楽しい雰囲気の中で作業できるか、が大事。繰り返しますが、過程が大事なのです。

 

恐らく太古の昔から、ひとは物作りを通して繋がって来た・繋ぎ直してきたのだと思います。この累々と続くステキな特性?をそのまま活用する感じです。

※冊子2022にそのヒントが載っています。

 

【完成した小タワー。てっぺんで手をあげる松永保育士】

 

悔しい!でつながるおとなと子ども

1階部分の高さ1,300mm。おとなでもそう簡単に登れません。

悔しい!登りたい!!と何度もトライするのは子どももおとなも同じ。

 

【もうちょっとで登れそうなのですが、ここからが意外に難しい…】

 

手を貸してもらって登った保育者が、絶対自分の力で登る!とつぶやいていました。

その15分後。やってきた子どもたちの中にも同じ思いを持った子が何人もいました。

悔しくて涙する子もやはり何人もいました。

本当に悔しかったんだと思います。

本人たちには悪いけれど、客観的に捉えたがるわたしとしては、いい姿だなって思いました。

 

次回訪問するときには、きっと登っているんだろうな、この子もおとなも。

 

なお、ニシデンでは、今後、これよりも少し難易度を下げた「小タワー2号」も設置予定です(移動可能タイプ)。

子どもたちは、おとなに言われなくても段階を踏んで、挑戦していきます。挑戦して出来なかったら、レベルを下げ、ここで再調整します。難易度が低い方で上り下りしながら難易度の高い方をどうやって「攻略」するか、シュミレーションしています。そして、再挑戦。この繰り返しです。

 

学び方を知っている子どもたち。その機会をおとなが奪ってはいないか、物的・空間的な環境が豊かに用意されているのか、おとなが不要に声をかけ、答えを示してしまっていないかなど、様々な方向からの検証が不可欠です。

 

園の敷地内で暮らすという状況下、意識してこのような機会をつくっていくのが保育者の役割だと感じます。

そして、子どもたちは、機会さえ保証されたら学びの過程をしっかりと自身で歩いていくことができるんだということを小学校に伝えてほしいと思っています。

 

 

やはり誰かが言ってました。

「降りるのが怖い、だから考える」

 

挑戦は思考です。

自身の思考・試行錯誤がそのひとを育てます。

 

【時間の許す限り、その子の葛藤に添う】

 

感じる悔しさや嬉しさは子どももおとなも関係なく同じ。

ここでつながれるって、縁あって出会った人間同士として嬉しいことだなって私は思っています。

 

 

おわり。