精工舎 (現セイコー) の歴史は意外と古く、懐中時計部門に関しては明治末になってようやく黒字に転じるようになります。
その後、懐中時計は次第に精工舎の主力製品となりましたが、その頃スイスでは懐中時計から腕時計へと需要が移っていきます。
明治時代末まで精工舎の懐中時計は、17型タイムキーパー、12サイズエキセレント、16型エンパイヤの三種を販売してましたが、大正時代になると スイスの背中を追って小型化の懐中時計をたて続けに投入してます。
中でも女性向けに販売された懐中時計「12型ローレル」は、数年後、国産第一号の腕時計にもなるのですが、国内では腕時計の需要が殆どなく、懐中時計「12型ローレル」の方が主力製品になってました。
どちらも二段瀬戸引き文字盤 (全アラビア数字) +ペアー針を合わせた同じデザインになってます。
二段瀬戸引き文字盤は一般的に琺瑯(ほうろう)と呼ばれてますが、ホーローエナメル、瀬戸干支(セトエト)とも呼ばれてます。
琺瑯(ほうろう)は、鉄鋼素材のダイヤルに、不純物の極めて少ない粘土・純水・ガラス等を原料とする釉薬(うわぐすり)を塗布後に高温で焼成してますので、瀬戸焼きみたいな光沢のある美しい仕上げになってます。
欧米では古くから懐中時計、置き時計などの文字盤に使われてましたが、その製法は手間とコストがかかるだけでなく製造も難しいため、現在は特別な高級品のみ使われています。
殆ど見かけませんが、「12型ローレル」懐中時計、腕時計の文字盤へ金干支(カネエト)を使用してる個体も存在してます。
金干支(カネエト)を簡単に説明しますと真鍮板にメッキを施しその上に文字を印刷 (プリント) したものですが、中にはクロノメーター表記も存在してます。
左側:900銀専売側
右側:18K専売側
主な仕様:アンクル式、7石、チラネジ付丸テンプ、平ヒゲ
現在も市場で懐中時計「12型ローレル」は見かけますが、その殆どは当時の輝きを失い傷みの酷い姿の不動品(ジャンク品)が多くなってます。
懐中時計「12型ローレル」の製造が開始された大正2年といえば既に100年は経過してますので、美品(動品)が少なくても仕方が無いのかも知れませんね😅
しかし、国産腕時計、懐中時計も遂にアンティーク(100年以上経過した物)の世界へ仲間入りしてきましたので、これからは程度の良い個体(美品、動品)は希少性が高くなると思われます。
現在、実用的でない非防水の手動式懐中時計は絶滅状態になってますが、歴史的価値を考えると少しでも多くの美品を後世の方へ遺したいですね😅
又、「参考文献:時計工業の発達」から抜粋すると、精工舎は大正2年に瀬戸干支の国産化に成功し、国産瀬戸干支をつけて販売した最初の懐中時計でもあります。 一日の製造数はエンパイヤが200~440個だったのに対して、ローレルは30~40個だったと言われています。
【参考資料1】
時計のサイズはフランスで使われていた長さの単位(リーニュ)を「型」としてます。
※1リーニュは2.2558291mm。
12型の場合、2.2558mm×12=27.07mmとなります。これは、ムーブメントの直径を表してます。
以下は1型増えると、+2.256㎜
注】アメリカの古い懐中時計は
「別の基準値」になります。
『懐中時計と共通』
SEIKOSHA EXTRA FLAT(エキストラフラット)
MINISTER(ミニスター)
RULER(ルーラー)
COMMAND(コマンド)
SEIKOSHA PRECISION(プレシジョン)
懐中時計は軍用に納めたと言われてます?
腕時計は初期が10形モリス型、10石、1926年前後に販売。
後期が10形バナナ型、1948~49年のみ生産されたモデルです。
SEIKO(セイコー)側の裏蓋にSKS FINE NICKEL ⇒ 鶴マーク印へ
LAUREL(ローレル)12型の懐中時計、18KYG側、950銀側
MERCY(マーシー)13型の懐中時計
『懐中時計』
SEIKOSHA(セイコウシャ)ナルダン17型、16石、18石、
側はパリー形のみ、材質はクローム、銀梨地、18金、プラチナ
SEIKOSHA(セイコウシャ)PRECISION(プレシジョン)19型、7石、通称:19セイコー(鉄道時計)
SEIKOSHA(セイコウシャ)
EXCELLENT(エキセレント)15型、7石、国産初の高級懐中時計!
EDMOND(エドモンド)モリス16型、15石、
ZELMA(ゼルマ)16型、7石
EXTRA FLAT(エキストラフラット)17型、7石
RIGHT(ライト)17型、7石
TIME KEEPER(タイムキーパー)17型、4石
HAPPY TIME(ハッピータイム)18型、?石
『EMPIRE(旧エンパイヤ) 』
「惑星シリーズ」
MARS(マース)火星
MERCURY(マーキュリー)水星
JUPITER(ジュピター)木星
VENUS(ビーナス)金星
SATURN(サターン)土星
※上記の惑星シリーズは大正初期に多く製造されたようです。
GREAT EMPIRE(グレートエンパイヤ)16型、16石
EMPERE(エンパイヤ)16型、7石、9石、16石(特別注文)
CANOTO(カノト)16型、6石
LUTECIA(ルーテシア)16型、7石
UNPIRE(アンパイヤ)16型、7石
STATE(ステート)16型、7石
PUBLIC(パブリック)16型、6石、9石、大正元年9月頃から大正2年の間の約1年(間)のみ生産
『EMPIRE(新エンパイヤ) 』
1921(大正11)年に発売された
EMPERE(エンパイヤ)モリス16型、7石、10石、15石
EDMOND(エドモンド)16型、7石、?石
UNION(ユニオン)16型、7石、他
上記はマニアックな領域になりますが、隠れたお宝探しの参考にしていただけると幸いです☺️