【市民に弔意を強制しないで!】 超党派で東大和市長に申入れ | 尾崎りいちオフィシャルブログ「東へ 西へ」Powered by Ameba

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 9月21日、市議会終了後、東大和市長と教育長に対し、「安倍元首相の『国葬』にあたり市民に弔意を押し付けないことに関する要望書」を提出しました。
 やまとみどり、興市会、生活者ネットワークの市議のみなさんと共産党市議団で連名での申入れです。
  1. 市の組織、市立学校などにおいて、半旗掲揚や黙とうなどの弔意表明を行わないこと。国や都から弔意表明を要請されたとしても、実施しないこと。
  2. 弔意を持つことやその表明は内心にかかわる問題で、個人の自由であることを周知すること。
  3. 市が市民に対し、弔意を求めていると誤解を招くようなことは厳に慎むこと。
 市議会には、国葬の中止を求める2本の陳情が提出されましたが、賛成少数で不採択となりました。市長、教育長への申入れは、陳情に賛成した9人の議員がれんめいでおこなったものです。
 
 市長は、「国からの通知は来ていないし、来ないでしょう。弔意を表したい人は表せばいいし、表したくない人は表さなければいいと思います」と答えました。
 
 「要望書」全文と、日本共産党を代表して上林真佐恵市議が行った国葬反対陳情に対する賛成討論をご紹介します。

【国葬反対陳情に賛成する日本共産党上林真佐恵市議の討論】

 政府は7月22日、参議院選での街頭演説中に銃撃され死亡した安倍晋三元首相の「国葬」を9月27日に行うことを閣議決定しました。現行犯逮捕された容疑者は、安倍氏への不満を銃撃の理由としているそうですが、いかなる理由であろうと正当化されない凶行であり、政治家の命を卑劣な暴力で奪ったことを、日本共産党は強い憤りをもって糾弾します。民主政治の根幹である選挙を銃弾で破壊することは国民への攻撃でもあり、絶対に許すことはできないものです。

 多くの聴衆の面前で起こった事件であることから国民の間にも怒りと衝撃、故人を悼む(いたむ)気持ちが広がったことは紛れもない事実であり、志位委員長や宮本徹衆議員議員など、わが党からも多くの国会議員、地方議員がその死を悼む声明を出しました。

 しかし、安倍元首相の市を悼む国民一人一人の気持ちと、全額国費を投じ、安倍元首相への敬意を強制することになる「国葬」を行うことは、分けて考えなくてはならないことだと考えます。

 その理由を4つ述べます。

<憲法14条の法の下の平等に反する> 

第一に、「国葬」の強行は、憲法14条が規定する「法の下の平等」に反するということです。

 なぜ安倍元首相のみを特別扱いにして「国葬」を行うのか。岸田首相は、安倍元首相の在任期間が8年8か月と「憲政史上最長」となったことなどをその理由として説明していますが、国民が納得できる合理的理由を示すことはできていません。時の内閣や政権党の政治的思惑によって、特定の個人を「国葬」という特別扱いをすることに他ならず、憲法が規定する平等原則と相いれないことは明らかです。

 

<憲法19条の思想及び良心の自由に反する>

 第二に、「国葬」の強行は、憲法19条が保障する「思想及び良心の自由」に反するということです。岸田首相は、8月10日の会見で、「国葬」は「故人に対する敬意と弔意を国全体としてあらわす儀式」だと述べました。わが国は、国民主権の国であることから、ここでのべられている「国全体」とは「国民全体」ということになり、すなわち首相の発言は、「国葬」は「故人に対する敬意と弔意を国民全体としてあらわす儀式」だとのべていることにほかなりません。これが憲法19条に違反した「弔意」の強制であることは明らかです。

(武道館に国会議員、地方自治体の首長など6000人もの参列者を集め、「国葬」として大々的に儀式を行うこと自体が、日本社会全体に同調を迫り、安倍氏への「弔意」を事実上強制する重大な危険をもつことは明らかであり、)同僚議員の一般質問でも、「国葬」が実施された場合、市の公共施設や小・中学校等で、記帳台の設置、半旗の掲揚、黙とうなどを行わないとする明確な答弁はなく、職員や生徒に対し事実上の弔意の強要と受け取られかねない「雰囲気づくり」が行われるのではないかと危惧します。

 

<法的根拠がない>

 第三に、「国葬」には法的根拠がないという点です。

もともと「国葬」は、戦前、天皇や皇族とともに、天皇と国家に貢献したとされる「国家に偉勲(いくん)ある者」に対して、天皇から「賜る」ものとして行われ、天皇中心の専制国家を支える儀式でした。その根拠とされた「国葬令」は、戦後、日本国憲法の国民主権や基本的人権に反するものとして失効しました。政府も、失効の理由として、「制度全体として、現行憲法の精神とは相容れないような性格を有する」(2017年10月、内閣法制局)からだと認めている通りです。

 現在「国葬」の根拠と基準を定めた法律は存在せず、岸田首相が持ち出している内閣府設置法は、他省庁と区別した内閣府の「所掌(しょしょう)事務(じむ)」の範囲を明確にする組織規範にすぎず、「国葬」実施の根拠法になりません。法的根拠のない「国葬」を一片の「閣議決定」によって強行することは、法治主義を破壊し、「法の支配」を「人の支配」に代える暴挙であると考えます。

 

<国会での議論、国民世論>

第四に、国会での議論が充分でない上に、国民の理解も得られていない点です。

第15条陳情の陳情趣旨にある通り、法的根拠も合理的理由もなく、憲法違反でもある「国葬」を行うべきなのかどうか、国会で充分に議論が尽くされておらず、世論調査でも、全てのメディアで反対意見の方が多くなり、その声は日に日に大きくなっています。こうした状況下で、このまま「国葬」を強行すれば、国民を分断することにもつながりかねません。

 

<安倍氏の評価>

 第16号陳情の陳情趣旨にある通り、安倍元首相の政治的評価は国民の中でもさまざまな意見があります。

憲法違反の安保法制の強行をはじめとする立憲主義破壊、憲法改正による戦争できる国づくり、「アベノミクス」など貧困と格差を広げた経済政策に加え、「森友・加計・桜を見る会」などの数々の国政私物化疑惑では、公文書改竄や、関わった職員が自ら命を絶つという痛ましい事態になりました。陸上自衛隊イラク派兵部隊の日報隠ぺい、裁量労働制に関わる厚労省の労働時間データ捏造に加え、安倍氏が首相在任中に国会質疑の中で行った虚偽答弁は118回に上るとする調査結果もあります。外交においても、侵略戦争を正当化し、歴史修正主義を繰り返しながら、慰安婦や徴用工問題に背を向け、「嫌韓」を意図的に広め韓国との関係を悪化させました。ロシア外交でも、政府のいう『北方4島』の返還さえあいまいにし、事実上の2島返還に後退したことは重大です。さらにいま国民の強い怒りを広げている反社会的カルト集団・旧統一協会と自民党との関係においても、安倍元首相は、最も深刻な癒着関係にあった政治家の一人であることが明らかになりました。選択的夫婦別姓や同性婚が自民党政権のもとなかなか実現せず、日本のジェンダー平等が世界から取り残されている背景にも、旧統一協会の影響があることが指摘されています。

言うまでもなく、安倍元首相への評価は、主権者である国民一人一人が自らの意思で判断すべきことです。政府が安倍元首相の業績を一方的に称える儀式として、国費で「国葬」を行うことは、安倍元首相に対する「評価」への同調を求めるだけでなく、国家による評価、価値観を国民に強制することに他なりません。

 また陳情者が指摘しているように、国民の多くがコロナ危機と物価高騰に苦しむ中、「国葬」に対して、合計約16億6000万円もの税金が投じられることは重大です。政府が現時点での「見込み」と説明しているように、経費はさらに膨らむ可能性もあります。

岸田首相は、「国葬」を行うことで「民主主義を断固守り抜く決意を示す」と言いますが、「国葬」強行こそが、民主主義の破壊であり、死者の最悪の政治的利用であるということを指摘し、陳情への賛成討論といたします。