ピアノを弾く目的は様々ですが、今回は、「凄い!」と言われたいとか、コンペで優勝したいという方向けのお話でなく、この曲大好きだから弾きたいとか、心に残る演奏がしたいとか、そういう方へのお話です。
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弾きたい曲、今弾いている曲をyoutube等で視聴される方は多いと思います。
この時、自信がないから、私はこの程度だから、という理由で一般の方や子供さんの音源を聴く方がいらっしゃいます。
一般の方にも素晴らしい演奏はありますが個別に分らないので、まず世界一流の名演奏家の演奏を聴いて頂きたいです。
「それ、私には別世界、大体そんなに速く弾けない~~」(注釈)
と思うのはよく解ります。
(注釈)
テンポは解りやすいのですぐマネしてしまいますが、無理はやめましょう。
他の細かい事をよ~く聴きとって下さい。
(プロの演奏は私達の想像以上に緻密で、練習を積んで作り上げられてます)
なんてエネルギッシュなんだろう?とか
なんて透明な音なんだろう?とか
リズム、生き生きしてて凄い!とか
真珠が転がる様なスケール、美しい~!とか
よく解らないけど、とにかく素敵!とか etc.
感じた事をしっかり心に刻んで、常に憧れたり気にかけておいて下さい。
大事なのは、手の届くレベルではなく、
手の届かない高いレベルを想い続ける事、
です。
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ピアノ演奏には、単なる指やペダル足の動きのみならず、脳、神経、身体能力、五感等々様々な要素が複雑に絡んでいます。
身体も脳も全て複雑につながっていますから、指1本動かすのにも全身が絡んでいます。
レッスンであれこれ注意される事があります。
なぜそれを注意されるのか、理解できるまで時間かかります。
特に些細な事、うっかりよくやるけど注意すれば治せる事をうるさく何度も言う時は、それがとても大事だからですが、その重要性を生徒さんが理解できるまで時間がかかる訳です。
例)私は初心者の方が長い音符を数える時に、首や体を上下に降って数える事をうるさく注意しますが、「なぜそんな事をいちいち?」と思う方多い様です。
少し経って実感出来ると、以後真剣に気をつけて下さいます。
何事も人はその時点での知識と経験でしか、物事を理解できません。
少し経ってから初めて「あ~そういう事?」と解る事も多いのです。
自分はこの程度だから、同じか少し上の人のレベルの演奏を参考にしよう!
これだと手の届くところから抜けられません。
例えば
「うわぁ、なんて輝かしくて軽やかで、同じ曲と思えない~!」
という一流の演奏に接すると、「私の音は重い~、暗い~、ダサイ~」
と凹みます。
一流の演奏家は、子供の頃から全て犠牲にして練習した訳ですから私達と違って当たり前です。
その別世界の様な演奏、その素晴らしさを心のどこかに留めておいて欲しいのです。
どうすればあんな風に弾けるのだろう!と考え始め、今迄の演奏に満足できなくなります。
「椅子の高さは?」とか「手首の動きは?」とか「何が違うんだろう」とか、貧欲にヒントを求め、アンテナを張り巡らせます。
その後様々な事を教わったり経験するにつれ、アンテナに引っかかる事が増え、何かのきっかけでそれが一気に結びつく事がよくあります。
自分の想像を超えた何かが初めてイメージでき、今迄の枠を超えて大きく変わったり、ぐん!と伸びたり、殻を破る時が来ます。
物事の順序は1→2→3・・・だけでなく
1やら2やら3やらがいっきに結びつき、いきなりボン!と飛躍する事もあるのです。
現時点の自分に手の届きそうな事しか求めないと、何か降ってきてもアンテナがないので掴まえる事ができず1→2→3で終わってしまいます。
その様な事が多いのです。
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ショパンエチュードop.25-1 「エオリアン・ハープ」
今迄何人もの方にこの曲レッスンしました。
最後のアルペジオ本当に美しいのですが、ガタガタしてしまう方が多いです。大変難しいです。
ガタガタでは残念なので、アルペジオの弾き方を説明すると、色々な反応があります。
①「ゆっくり弾いて」と言っても、ガタガタでもとにかく速く弾こうとする方。
その人が目指すのは美しさでなく速度。
ショパンの音楽とは大きく違いますから、弾きにくいままですし、聴く人も違和感を持つでしょう。
目的はご本人の自由ですが、私は聴くのが苦痛です。
②面倒臭そうな顔をして、なおす気が全くない方
③「私が習った弾き方と違う」と迷惑そうな顔をする方
ガタガタで良いならその人にとってなおす必要ありません。
注意を聞き流したり拒否する方は変わる事がまずないので、現時点から大きく飛躍する事は期待できず、今のレベルが続きます。
④「解らないけど、やってみます~」と素直な方
受け入れてくれる気持ちがある方は、今まだ理解出来てなくても、飛躍できる可能性が大きいです。
そして5人に1人位でしょうか?
⑤「そう、そういう音が欲しかった~!」
目を輝かせて一生懸命なおそうとされる方がいらっしゃいます。
ずっと思い通りに弾けなくて、「違う、違う!」と悩んでヒントに飢えていたのでしょうね。
同じ内容のレッスンでも、その後が大きく違ってきます。
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別世界の演奏に触れた時、それが簡単にはとても出来ない事を痛感します。
大人は思う様に練習できません。
再開したり初めてピアノ習う方が一流のプロの別世界の演奏に至る事はまず難しいでしょう。
望んでも成さぬ事があるという現実を受け入れ、焦らず、自分に無理なく出来る事を気長に続ける事が大事です。
叶わぬ別世界の演奏を心のどこかにおいて、出来る事から1つずつ近づこうとする方。
その様な方は突然、驚くほど進歩する事が何度かあり、こちらが驚く程です。
逆に焦る人はよく挫折します。
張り切るのは良いのですが、複雑過ぎる曲に次々手を出したり、防音や楽器に一気にお金をかけたり・・・・
結局弾かなくなったり、趣味のピアノで苦しくなってしまったり、その様な方が多いです。
高い理想を持ち、気長に出来る事を継続する事・・・一番難しい事かもしれませんね。