長調の音階は調号のとおり、最初の音から順番に弾きます。
調号のとおりですから、意外な音は出てきません。
安心してなだらかに聴こえます。その様に弾くのが自然です。
短調はちょっと複雑な事情があります。
複雑な事情ですが、大人のピアノ、ならではの味わいがあります。
ハノン39番を見ると、短調の音階が2つ、書かれています。
なにやら♯やら♮やら???
実は短調には3種類の音階があります。
調号のないイ短調が解りやすいですね。
1、自然短音階
ハノンには書かれていません。調号どおりの音階です。
イ短調には♯や♭はありませんから、白鍵だけを弾きます。

音階の開始の音を主音といいます。この場合、ラ
そして音階の7番目の音。この場合、ソ
この7番目の音が主音の半音下である場合
導音、と言います。
自然短音階は、音階の7番目の音が、主音の全音下になってしまいます。
導音と主音の間は、半音でなくてはなりません。
が、この、ソ、と、ラ、の間は全音
つまり自然短音階には、導音がありません。
導音は主音に進む性質があり、メロディや和音において大切な役割を担います。
導音がないと困る!・・・・でも7番目の音、主音が恋しい!
そこで
2、和声短音階
音階の7番目の音を半音上げて、♯ソ(導音)を作りました。
これで問題は解決で、こんな風に和音が自然で美しいです。
導音の♯ソが、主音のラに向かってます。
(これ、和声の基礎の掟です)
これが短調の和音です。
これを弾く時、 ♯ソが、主音のラに行きたい~~~っ!
と切に願う気持ちが大切です。
主音が恋しい・・・
大人のピアノならではの音階練習もいいですね(笑)
声楽等では、この音が主音に向かう時は、ピッチを高めにとります。
再度確認してみましょう。和声短音階
今度はファ、と♯ソ、の間が、異様に開いてしまいました。
意外性のある、エキゾチックな響きです。
この音階の独特なこの雰囲気
アラブ風の響きみたいで美しいです。
このファ、と♯ソ、の間の音階らしくない開き
その為に一層目立つ、導音♯ソが、主音のラ、にすり寄る異様さ
時に焦燥感、時に不自然さ、何でも味わってしまいましょう!
大人の特権です(笑)
けれどこの音階、段差があって不自然です。
やや音階らしくありません。
じゃ、その前の、ファ、も半音あげちゃう!、そこで
3、旋律的短音階
上りと下りが違います。
導音、♯ソ、は主音、ラ、に行く役目があります。
でも音階の下りでは、役目は終わり。
あんまり♯や♮がつくと、何調だかわからなくなります。
役目が終わったら元通りに戻しました。
上りは♯が2つもつくので、やや昂揚感や華やかさが生まれます。
下りは・・・え?という空虚さ
華やかさを表す♯が消え、短調らしい寂しい響きに戻ります。
妄想が好きな方は恋の後の空虚さを感じてもいいですね(笑)
短調の音階は、3種類それぞれ表情があります。
導音を高めに意識し、主音へ向かおうとする意志を持つ事は基本です。
時に、主音にすり寄る美しさも表現できます。
2つの音が半音上げられた旋律音階
なめらかで華やかな美しさがあり、下りの自然短音階が寂しく聴こえます。
音のそれ自体の動き、並び方を意識する事は大切です。
作曲家がどの様に音を並べているか?
そこには表現してほしい事が書いてあるのです。
ハノンは大変効果的な教材です。
非音楽的な練習だけに終わりがちです。
音階の練習を指の体操だけに終わらせるのは勿体ないです。
理論は単なる知識ではありません。
音の動き、性質そのものを味わいながら練習してみて下さい。
どんな風に弾こうかな?もっと美しく弾きたいな!
練習がとっても楽しくなりますよ。
だって音楽ですもの(*^_^*)