ハ長調が多いです。
入門はどうしてもハ長調が多くなります。以下の理由があるのです。
ピアノは処理する情報量が多い楽器で、譜読みが大変です。
最初から♯や♭が多いと、悲鳴を上げてしまいます。
子供の小さな手には、黒鍵の位置の高さも厳しい事があります
調性や和声の話を発展させるのに、ハ長調から進めると解り易いという事もあります。
実は、ハ長調は、弾きにくいのです。

ある程度の大きさの手を持つ人の場合です。
実際に弾く事を考えると、手の自然な構造を無視しているので難しいのです。
ハ長調の音階を考えてみます。
ド レ ミ ファ ソ
白鍵だけで平なので、意外に弾きにくいのです。
親指と小指は注意が必要ですが、全部同じ条件で弾く事になるのです。
ホ長調
ミ ♯ファ ♯ソ ラ シ
人間の手の形には、こちらの方がしっくりくるはずです。
なので音階や和音も、こちらの方がはるかに楽に弾けます。
けれど、ホ長調は元々の音階に♯が4つ、なので譜読みが難しいのです。
で、多くの入門書はハ長調になります。
ハ長調は実は弾きにくいのだという事を、指導者は把握しておく必要があります。
やがて「ツェルニー練習曲」が立ちはだかります。
リトルピアニストあたりはまだ、何とか・・・
鬼門は30番練習曲。
弾きにくいハ長調の繰り返しパターンが、最初から長々現れます。
ここは注意が必要です。
技術向上には大変良い教材ですが、多くの「ツェルニー嫌い」がここで生まれています。
この時期、まだ4指、5指がうまく使えません。
当然うまく弾けません。その為の練習曲ですが、
これでもか
・・・と長々弾かされます。「苦しい反復」です。
弱い5指、それと連動してしか動かない4指を鍛える!という発想が生まれます。
この時「鍛える」以上に、手首の柔軟性と共に「うまく使う」事を教えなくてはなりません。
手の自然な動きをうまく利用し、その中で細かく動かす神経を作る。
指導者がこれを忘れると、根性ツェルニー物語になってしまいます。
「苦しい反復」=「あと一周走れ~」


・・・これではいけません。
ツェルニーの美しく軽やかな世界を味わう事を、忘れてはいけません。
実際難しいですが、手首の柔軟性を少しずつでもきちんと指導する必要があります。
美しい音で美しく弾く事、それにより柔軟性が身に付きます。
音楽からトレーニングとして分離してしまうと、弊害になります
それが多くのツェルニー嫌いを生む原因です。
ツェルニー練習曲は量産され、一曲ずつに芸術性が込められたものではありません。
けれど、顔をしかめて「大っ嫌い!」と言う方が多過ぎます。
原因はほとんどがトラウマです。私も大っ嫌い!でした(笑)
でも嫌われるほど、芸術性の強い作品ではなく、心地よい音楽なのです。
教本「ABC」の良い点は、多くの調性が使われ、音楽的にも優れた作品です。
ここで、♯や♭にも慣れ、音楽的に美しく弾く練習を積む事は大変効果があります。
「ABC」の次に「ラジリテー」・・少しずつツェルニー風な難しさが出てきます。
ツェルニー30番に入る前までに、音楽的下地をきちんと作る事が大切です。
出来るだけ美しく弾く事、美しい音を出そうとする本能を作る事。
これは一番大切で、何を弾く時にも絶対におろそかにしてはいけません。
先生は是非生徒さんに、美しく軽やかなツェルニーを見本で弾いてあげて欲しい。
ロココで美しい世界です。
生徒さんが、私も弾きたい!と思える様に弾けなくてはいけません。
そして、この先生の言う通りに練習すれば私にも弾ける気がする!
そう思われる様なレッスンをしなくてはなりません。
30番は、実は先生の資質が問われる鬼門なのです。