既にピアノを習っていたので、時々友達や先生のピアノを聴きにホールに行った事がありました。
でもそのホールはいつもと違って、高い所から真ん中のピアノを見降ろす、変なホールでした。
男の人がツカツカ出てきて、無愛想なお辞儀をして、無愛想にピアノを弾きました。
最初の音が、凄く鮮明というか金属的というか、・・・今でもそれは耳に鮮明に残ってます。
何だか凄い!

後になって耳に残ったメロディから、シューマンの「ウィーンの謝肉祭の道化」とわかりました。
ミケランジェリの日本公演でした。・・・(歳バレバレ!)
子供心に決して好きな演奏ではなく、感じ悪いおじさん・・・でしたが、強烈でした。
こんな凄い演奏を子供の私が聴いてしまい、聴きたくても聴けなかった方々に申し訳なく思います。
大人になって、色々知りました。とても完璧主義で、自分のピアノを持ち込み調律師の方も同伴だとか・・・
私の聴いたコンサートは、キャンセル魔の彼が突然公演をする事になり、中野サンプラザしか会場がなかったとか・・・
(ミケランジェリについては多くの伝説があり、ここでは詳細は省きます)
その後、ミケランジェリの演奏を聴く機会はありませんでした。
今、数少ない録音を聴くと、愕然とします。
もちろん、たとえ自分に素晴らしい技術があったとしても、彼の様に無愛想には弾きません。
でもその音は、徹底的にクリアでした。無骨で無愛想で、完璧です。
ショパンの葬送ソナタを聴いた時、思いました。
スタンウェイを弾くべき人はこの人だ・・・・(極端な意見ですがその位強烈なのです)
又、ラヴェルのピアノコンチェルト、ト長調を聴きました。
キラキラしたオモチャ箱の様な、夢一杯の曲・・・・見事に無愛想な演奏でした。
でも・・・・・素晴らしい!
録音ですがその音は、本当に・・・・美しい音でした。
カデンツァの部分では涙が出ました。
この演奏が録音でも聴けて良かったと、しみじみ思います。
ミケランジェリ・・・・無愛想な感じの悪いおじさんでした。無愛想な演奏でした。
でも彼の音は・・・・・涙を流し、この音が聴けて幸せだ!と思ってしまう音なのです。
鬼才・・・という言葉がふさわしいピアニストだったと思います。