<前回までのあらすじ>

同窓会出席のため地元宮崎に帰る事にしたオレは
時間ギリギリに慌てて家を出るという大失態。
が、偶然出会ったオットコ前のTAXI運ちゃんのおかげで
苦難を乗り越えバスセンター到着。
さあ、後は目指せチケットカウンター!
発車は05:53 a.m.だ!!



お時間のある方はコチラもどうぞ


シーズン1   シーズン2





  1/3  05:51:16 a.m.


サンキュー運ちゃん。アンタ最高だよ!
そう呟きながらオレはエスカレーターを駆け上がる。
目的地は3階バス乗り場。
前日までにチケットを購入できなかったので
まずはその発券という手順を踏まねばならない。
ギリ間に合う時間ではあるが
後はカウンターのおっさんのお目覚め具合にかかっている
と言っても過言ではない。
いや、何より間に合わなければTAXIの漢に申し訳ない。
そう思うと駆け上がる両足に力が漲った。


あっという間に2階を通過。ゴールは目の前だ。
走りながらチラリと横へ目をやると宮崎行きのバス乗り場。
「ヨシ、まだ来てないなうわっ!?


横目に見ていたバス乗り場が消え、
代わりにスローモーションで視界に入ってきたのは
エスカレーターの手すり。続いて黄色いラインの入った黒い鉄板。

踏み外していた…。

徹夜明けのオレの電池はこんなトコで切れちまうのか!?

いや、そんなわけにはいかないさ。

な、運ちゃん!

「ぬおおおおおーーっっ!」

瞬間、右手を頬の下に差し込む。
厚手の手袋は顔面強打を防ぐのに充分だった。
すぐさま体勢を立て直し最後のジャンプ。
来た。ついに来たぜ3階!
さあ、カウンターのおっちゃん。お目覚めはいかが?
乗り遅れられないオレが来ましたよ~!!

「宮崎行き往復で予約してたんすけど!」
「何時の便ですか?」
「今、まさに出るやつですよ!」
「えーー!!こんなギリギリまで何やってたんですか?」
「いいから、急いで!帰りは明日の朝04:47の便!」
「は、はい。……丁度壱萬円になります。はい、チケット。
 右の奥です。走らず急いでください!」

この状況でそんな冷静に燃えろ的な難しい事言うなよ!
そう思いつつ忍者走りで乗り場へ向かう。
向かいながら恐る恐る時計に目をやる。
05:53:27 a.m.。定刻ならアウトだ。
頼む。いてくれバスよ!!!!




「いいやない、大事なモン入ってるんやから!」
「しかし、これだけ大きいとちょっと…」
「ここに積んで割れたらどうするとよ!」
「そう言われましても中にもスペースが…」
「ええい、もう!持って入るけんね!」
「ああ、お客様ぁ…」

一人のおばちゃんが、大きめの手荷物を下に積むか
車内に持ち込むかで運転手とモメていた。
そしてそれが宮崎行きのバスだった。
ともあれオレは乗り込む事についに成功。
大きく息をついたとき時計は05:54:02a.m.
おれは心の中で叫ぶのだった。

「おばちゃん、グッジョブ!」


予定より1分遅れでバスは走り出した。
しかしこれはオレの長い長い一日の
ほんの始まりに過ぎなかったのである…。


シーズン4へ続く。



 

シーズン1はこちらでどうぞ。


1/3  05:47:12 a.m.



とにかく時間がない。なんせ6分後にはバスが出ちまう。
無理を承知でオレは運転手に言った。
「4分で博多駅のバスセンターまで!」
「何分発なの?」運転手が聞く。
「53分です。」
「信号2つかかったらアウトだよ。いい?」
迷ってるヒマは無い。「とにかくお願いします!」
「よっしゃ!なら後はまかせて支払いの準備でも
 しときんしゃい!」
なんと力強い言葉だろう。あぁ、オレが女なら抱かれてもいい。
そう思わずにはいられぬ程、今のオレは非力だ。
すべてをこの漢(おとこ)に預け、一路博多駅へと向かう。
幸い朝の5時だ。車は少ない。
となれば敵は信号のみ。たのむぜ運ちゃん!



やがて第一関門。大博通りに出る交差点。
案の定ここで1回目のストップ。
が、これは想定の範囲内ってヤツ。
むしろ思ったより早く信号が変わり、左折すれば後は
目的地まではほぼ一直線。
ただ今5:48:27 a.m.。順調だ。
ここまで二人の間に流れていた緊張が少しだけ緩む。


その時だ。


突然横を走っていたセダンが
前に割り込みしかもスピードダウンしやがった。
慌ててブレーキを踏む漢。
思わず左上の取っ手をつかむオレ。
と同時に右レーンを確認し滑らせるように
車体を運ぶ(その間約0.87秒)。
「あの野郎のせいでお客さんとの約束
 守れんようになるとこやったバイ。」
と、事も無げに言ってのけたこの運転手。
あぁ、この漢に求められたなら

いつもはしない事でも
やってしまいそう(/ω\)


そんな事を考えてる間に更にゴールへと近づく二人。
5:49:42a.m.。リミットまで1分強。
残る関門は一つ。博多駅前の信号だ。
この直線へ入った時からオレは両目2.0の俺アイを駆使して
その信号をチェックしていた。
だ。
って事は俺脳の計算だといい感じにに変わるってぇ寸法だ。


しかし、しかしである。

我々がソコに到着しても信号が変わる気配が無い。
おまけに待ちの車が結構詰まっている。
5:50:37a.m.。もはやこれまでか!?
が、さすがそこはオレが身を預けた漢。
迷わず空の左折レーンに入りその時を待った。
「普段はこんな無茶はせんのですがね(笑)」
すぐに信号が変わりいち早くダッシュしたTAXIは
強引に右レーンに入り
約束の時間にオレをゴールへと届けたのだ。
「お釣りはいらないっす!ほんと助かりました!」
これが仕事だから…とでもいうような
優しい微笑みを後に
オレはバスセンターのエスカレーターを駆け上がるのだった。




シーズン3へ続く。




これからお送りするのは
一人の男のある正月の一コマを忠実に再現したドキュメントである。



  1/3  05:23:04 a.m.


ヤバい。
眠気覚ましに眺めていたインターネットだったが
これじゃ高速バスに乗り遅れちまう…。


本日2006年1月3日は地元宮崎で高校の同窓会。
しかも今回はランチタイムの会合ときてる。
予約したバスは 5:53a.m.博多駅発。
もう身支度してるヒマもないな…
そんな事を考えながらとりあえず熱いシャワーを浴び
髪も濡れたまま家を飛び出した。


現在時 5:44a.m.。走ってたんじゃ間に合わない。
TAXIをさがす…。いた!
まだ真っ暗な空の下、何て都合がいいんだ!
喜び勇んで近寄るオレ。
アレ、おかしいな。ドアが開かない。
運転席を覗き込むとそこには
熟睡中の運転手(♂ 推定54歳)の姿が…。
ノックしてみる。反応がない。
強めにノックしてみる。起きない。
車体ごと揺らしてみる。少し寝返りをうつ…。起きない。

ってお前何歳児だよ!!

イカン。ツッコンでる場合じゃない。
発車の時刻はソコまで来てる。
あせって車体を揺らし続けるオレの背後から
プップッと誰かのクラクション(by尾崎豊)。
TAXIだ!あぁ、何て何て都合がいいんだ。
3歳児並の睡眠欲を持つキサマになどもう用はない。
まるで逃亡中の犯人を追う刑事ドラマのお約束のごとき
偶然に感謝し、オレは後ろのTAXIに飛び乗る。
時刻は 5:47a.m.。残り時間6分。
いや、チケットの発券に時間がかかるはずだ。
とすれば、あと・・・

オレは運転手に言った。

「4分で博多駅まで!」




シーズン2へ続く…