TPP参加表明でもめにもめているが、TPP推進論者の中には、この問題をリカードの「比較優位」で一刀両断にし、反対派を「高校の政治経済のレベルの経済学も理解していない」と罵る輩がいる。おおよそ「国益」にも「人間の尊厳」にも「若者の教育」にも関心のない、ミーイズムの典型のような自称エコノミストがその代表格である。確か大学教授の中にもそんな人がいたように思う。
リカードの比較優位とは、貿易相手国よりも機会費用をかけずに生産できる財の生産に特化し、他の財は貿易相手国から輸入することで、それぞれの国がより多くの財を消費できるという国際分業、自由貿易のメリットを説明した理論だ。
これは確かに理論的に正しい。しかし、このモデルでは失業者の存在を考慮しておらず、現実に多くの価格優位の財を生産する国では完全雇用が実現するが、多くの財で比較劣位の国では失業者が溢れるというのは、現代では常識である。こんな安手の理屈で世の中を欺こうとする似非エコノミストには辟易せざるをえない。
グローバリストの二大欠陥は、「人間が見えていない」ということと、「世の中を一気に変えることの危うさ」に対するセンサーが欠落していることである。エコノミストだけでなく、安全保障を大声で語りながら、食糧安保には目を瞑ってTPP参加を推進するという、ご都合主義のいやらしいロジックを駆使する、言うだけ番長の親米売国政治家にも注意が必要だ。
「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」だが、実際には及ばなければ次がある。「急いては事を仕損じる」という心構えが、TPPというより、貿易体制を考える上では必須だと思う。「TPPという列車に乗り遅れるな」というのはまやかしであって、仮に関税がなくなっても、今の円高水準では、コモディティ化した家電や自動車の国内生産・輸出において勝負になるはずがない。
日銀に強烈なプレッシャーをかけてでも、金融政策を抜本的に見直し、「円売り単独介入」のような安手ではなく、円安誘導するための施策に全力を尽くすのが、どう考えてもTPPよりずっと国民経済的には喫緊の課題だと思うのだが…。
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