新興株式市場が創設されて以来、猫も杓子も「株式公開」「IPO」を口にするベンチャー、中堅企業が増えたが、一方で大企業ではポッカコーポレーション、ワールドに代表される「非上場化」の動きも活発になっている。
再三述べているように、日本版SOX法による内部統制の厳格化は目前に迫っており、また既に一部の市場を除いては、新規上場の審査も厳しさを増している。正直株式公開が半ば「目的」と化してしまっていたような企業は堪ったものではないだろうと同情するが、時代は「正論」「王道」にフォローの風を吹かせている。
ライブドア等々の上場企業のモラルハザードだけでなく、本来上場が身の丈に合っていなかった企業が、上場後短期間に業績悪化を伴って、株高の中でも株価を大きく下げている状況が続発しているの見れば、いかに新興市場といえども、パブリックカンパニーの「お墨付き」を安易に与えてきた風潮は、是正されて然るべきとの実感がある。行き過ぎた反動は問題だが、ガバナンスを含んで持続的成長のための足腰づくりから取り組まなければ、パブリックにはなれないというメッセージがベンチャー企業に浸透・定着するレベルまでは、あくまで正常化のプロセスだと考えた方が良いと個人的には思っている。
ただそうなると、ベンチャー企業が未公開・非上場でどう成長するか、また1999年から2004年頃にかけて株式公開した企業で持続的な成長軌道にのっていない企業はどうするのかという方策が必要になってくる。
ファイナンス面は稿を改めるが、未公開・非上場ベンチャーの場合、外部環境のマネジメントとしては、IPOに代わる対外的な信頼の醸成、企業ブランディングの策が求められるだろう。また内部環境のコントロールとしては、IPOという目標がモラール(やる気)の源泉になっていたのなら、それに代わる広い意味での新しいガバナンスも必要だ。簡単な事ではないが、顧客満足と真正面から向き合いながら、エッジも効いていて、しかも従業員を含むステークホルダーから見てもグルーブ感があり、「良い会社だよね」「活気があるよね」「伸びそうだよね」という、成長を予感させるビジョンが打ち出され、それを現実のものとする地に足の着いた戦略とマネジメントの仕組みが欠かせない。むしろ未公開・非上場だからこそ、近視眼的な株主に左右されない経営ができていると評価されるような戦略展開が要請される。
既にIPOしていて成長軌道に乗り切れていない企業は、M&AというExitも困難なのだから、「非上場化」というオプションを視野に入れる必要があると思う。上場のデメリットばかりが顕在化し、今後内部統制を含むコストがかさむのに、上場にこだわる必要などあまりない。特に今は、「非上場化」のサポーターにも事欠かないわけだし、再上場というオプションもあるのだから、企業価値創造のために、しっかり足腰を作り直すことを目的とした非上場化は、「戦略的撤退」であるとも言える。
MBOで1985年に非上場化したジーンズのリーバイ・ストラウスは、従業員と地域社会から得られる信頼を経営目標に掲げ、米国のみならず、日本を含む世界各地で社会貢献活動(エイズ対策や女性支援など)を展開。CSR(企業の社会的責任)に関連した活動を通じて、さらに企業ブランドを高めたと言われる。格好よく言えば、「社会が真のオーナー」ということか。
いずれにせよ、ベンチャー経営においても、本質が重視され、本物が生き残り、かつ、価値を高める時代の空気が吹き込みはじめている。