「箱根、行ってみたいね」――そう話したあと、少し黙ってしまった。そんな経験はありませんか。
山道の運転は自信がない。レンタカー代も気になる。そもそも家に車がない。
調べるほど「登山電車」「ケーブルカー」「ロープウェイ」「海賊船」と乗り物の名前ばかり増えて、乗り継ぎで疲れ果てる自分が目に浮かんでしまう。その気持ち、よく分かります。
でも実際の箱根は、「泊まる場所さえ選べば、車がなくてもきつくならない場所」です。
結論から言うと、車なしの箱根は宿を4つに絞れます
● 「きつい」の正体は、駅やバス停を降りてからの徒歩と坂、そして乗り継ぎの回数です
● 駅から徒歩数分の宿、バス1本で着く宿、駅から送迎がある宿なら、到着した時点で疲れ切ることはありません
● 全8室の宿もあり、条件に合う部屋の数はもともと多くありません
旅の成否を握るのは「どこを見るか」より「どこに泊まるか」です。初日に坂道で体力を使い切ると、2日目の観光がつらくなります。
車がなくても迷わずたどり着ける宿を、エリアの違う4つに絞りました。
| 宿名 | エリア | 温泉 | 決め手 |
|---|---|---|---|
| 箱根湯本温泉 湯本富士屋ホテル | 箱根湯本 | 大浴場・露天風呂・サウナ | 箱根湯本駅から徒歩3分 |
| 温泉ホテル強羅館 | 強羅 | 無料の貸切露天風呂 | 強羅駅から徒歩3分 |
| 箱根ホテル | 芦ノ湖 | 2つの浴室を男女入れ替え | 箱根湯本駅からバス1本 |
| 水の音(共立リゾート) | 小涌谷 | 2種の源泉・無料貸切風呂 | 小涌谷駅から無料送迎 |
それぞれの中身は、記事の後半でひとつずつ説明します。
箱根が車なしの旅と相性がいい理由
乗り物がパス1枚でつながっている
箱根フリーパスを使えば、登山電車、ケーブルカー、ロープウェイ、海賊船、路線バスをまとめて乗り降りできます。乗るたびに切符売り場へ並ばなくていいので、乗り換えの負担がぐっと軽くなります。
町の観光協会がバリアフリー情報を公開している
箱根DMO(箱根町観光協会)は「箱根ユニバーサルツーリズム」というサイトで、バリアフリー対応施設の一覧や「車いすで巡る箱根旅観光マップ」を公開しています。出かける前に、行きたい場所の設備を自分で確かめられます。
荷物は駅から宿へ送れる
箱根湯本駅の構内には「箱根キャリーサービス」の窓口があり、駅から宿へ荷物を届けてもらえます。オンライン予約にも対応しています。スーツケースを持って坂を歩く場面を、最初からなくせるということです。
「車がないから大変」ではなく、「車がなくても困らない仕組みがそろっている」のが箱根です。
駅・バス停からの近さで選ぶ箱根の早見表
| スポット | 駅・バス停からの距離と坂 | 負担レベル |
|---|---|---|
| 彫刻の森美術館 | 登山電車「彫刻の森」駅から徒歩2分。無休 | とても軽い |
| 大涌谷くろたまご館 | ロープウェイ大涌谷駅から徒歩すぐ | 軽い |
| 岡田美術館 | バス停「小涌園」下車すぐ。展示替期間は休館 | 軽い |
| ポーラ美術館 | 強羅駅から無料送迎バスで約8分 | 軽い |
| 恩賜箱根公園 | バス停「恩賜公園前」から徒歩すぐとされる | 軽い |
| 元箱根港(海賊船) | 路線バスで港まで行ける | 条件つきで軽い |
| 箱根神社 | 芦ノ湖畔から上る参道はいずれも階段 | 重い |
| 箱根湿生花園 | バス停「仙石案内所前」から徒歩8分。冬は休園期間あり | やや軽い |
| 箱根強羅公園 | ケーブルカー駅から徒歩約1分。園内は坂 | 中くらい |
| 大涌谷の玉子茶屋 | ロープウェイ大涌谷駅から600m・徒歩約15分 | 重い |
彫刻の森美術館 駅を出たらすぐ、野外に広がるアート
登山電車の「彫刻の森」駅から徒歩2分で、定休日もありません。「着いたら休みだった」という失敗が起きにくいのは、乗り物の時間に縛られる旅では大きな安心です。展示の中心は屋外なので、天気のいい日に予定を入れるのがおすすめです。歩く距離を減らしたい日の一枠目にちょうどいい場所です。
大涌谷くろたまご館 噴煙を見るだけなら駅前で十分
くろたまご館はロープウェイ大涌谷駅から歩いてすぐで、名物の黒たまごもここで買えます。富士山や噴煙地の眺めも楽しめます。大涌谷は「奥まで歩かないと見られない場所」ではありません。
岡田美術館 バスを降りたら目の前、雨の日の心強い味方
箱根湯本駅から箱根登山バス(H路線)で約19分、「小涌園」バス停で降りてすぐです。屋内の美術館なので、雨の日の行き先にもなります。美術館の利用者は足湯を無料で使えるので、歩き疲れた足を休める場所にもなります。
箱根強羅公園 坂は「上から下る」と楽になる
園内は坂が続きますが、下側には「公園下」駅、上側には「公園上」駅があり、どちらもケーブルカーの駅から徒歩約1分です。ケーブルカーで上まで行き、上の入口から入って下りながら見れば、登り坂を避けられます。箱根フリーパスなどで入園無料になるのも嬉しいところです。
このほか、ポーラ美術館は強羅駅から無料送迎バスで約8分、恩賜箱根公園はバス停から徒歩すぐとされています。箱根湿生花園は冬に休園期間があるため、秋冬に行くなら営業日を確かめてから出かけてください。
正直に書きます 無理をしないほうがいい場所
楽しい情報だけ並べても、実際の旅では役に立ちません。
| 場所 | 理由 | 代わりの楽しみ方 |
|---|---|---|
| 大涌谷の玉子茶屋 | ロープウェイ駅から片道600m、往復で30分ほど歩く | 駅そばのくろたまご館で黒たまごを買い、眺めを楽しむ |
| 箱根神社の御社殿 | 湖畔からの参道がいずれも階段で、車での参拝が基本とされる | 海賊船の上から、湖に立つ「平和の鳥居」を眺める |
| 箱根旧街道の石畳 | 石畳の急坂が多い | 元箱根から恩賜箱根公園へ続く杉並木を少しだけ歩く |
無理のない箱根 1泊2日と2泊3日のモデルコース
「詰め込まない」が最大のコツです。1日に主役を1つか2つ。あとは宿でゆっくり。
1泊2日
1日目は箱根湯本駅で荷物を宿へ預け、登山電車で彫刻の森美術館へ。午後は早めに宿に入り、夕食前にひと風呂。2日目は岡田美術館か強羅公園のどちらか一つだけ回って、昼過ぎに帰路につきます。
2泊3日
1泊目は強羅か小涌谷、2泊目は芦ノ湖に泊まります。2日目はロープウェイで大涌谷のくろたまご館に寄り、芦ノ湖側へ下りて宿で昼寝。3日目は海賊船に乗って湖上から平和の鳥居を眺め、バスで箱根湯本へ戻ります。芦ノ湖は箱根湯本駅からバスで35〜40分かかるため、日帰りで往復するより1泊して翌朝回るほうが体は楽です。
観光地よりも大事 宿選びで結果が決まります
一日でいちばん長くいる場所は宿です。車がない旅では、駅から宿までの道のりまで含めて「宿選び」だと考えてください。
| 確認項目 | 見落とすとどうなるか |
|---|---|
| 駅・バス停からの徒歩分数 | 「徒歩15分」が上り坂だと、到着前に疲れ切る |
| 送迎の有無と時間帯 | 時間外に着くと、タクシーを探すことになる |
| 最終チェックイン時刻 | 観光を延ばしすぎて、夕食に間に合わない |
| 支払い方法 | 現地で現金しか使えず慌てる |
| バリアフリー対応の欄 | 車椅子や介助が必要なのに、部屋や設備が合わない |
楽天トラベルの施設ページで「車なしでも行けるか」を確かめる方法
施設ページの「交通アクセス」欄には、駅からの徒歩分数や送迎の有無が書かれています。さらに「設備・アメニティ・基本情報」のページを開くと、「条件・注意事項」欄に最終チェックインや支払い方法の注意が、「バリアフリー対応」欄に貸出用車椅子などの有無が載っています。プランを選ぶ前に、この3つの欄だけは目を通してください。検索のときは、次の絞り込みが役に立ちます。
- 駅から徒歩5分以内
- 送迎あり
- バリアフリールーム
車なしでもきつくない箱根の宿
冒頭の表で挙げた4つの宿を、ここからひとつずつ見ていきます。
箱根湯本温泉 湯本富士屋ホテル 駅から徒歩3分、玄関へはエレベーター
箱根湯本駅から徒歩3分、全149室の大きなホテルです。楽天トラベルのクチコミは4.34(1,468件)。決定的なのは、駅前のあじさい橋を渡るとすぐ、正面玄関へ上がる外部エレベーターがあることです。高台にある宿でも、坂道を歩かずに玄関まで行けます。
楽天トラベルの「バリアフリー対応」欄には、車椅子可、貸出用車椅子、バリアフリールーム、バリアフリー用トイレが並びます。温泉は大浴場と露天風呂、サウナ。夕食はレストラン、朝食はレストランのバイキングです。バイキングは料理を取りに何度も立つことになるので、杖を使う方は同行者と分担すると楽です。
● 駅から宿まで坂を歩きたくない人
● 車椅子の家族と出かける人
● 初めての箱根で迷いたくない人
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温泉ホテル強羅館 強羅駅から徒歩3分、貸切露天は無料
箱根登山鉄道の強羅駅から徒歩3分、全8室の小さな宿です。クチコミは4.39(210件)。この宿を選ぶ理由は、追加料金なしで使える貸切露天風呂で、大涌谷から引いた白濁の源泉掛け流しを家族だけで楽しめることです。強羅公園までは徒歩10分ほどとされ、強羅エリアの観光の拠点にしやすい場所です。
ただし、荷物は自分で運ぶのが基本で、手伝いが必要なときはフロントに声をかけます。寝具は布団です。クチコミには、駅からの道でアンダーパスをくぐるので少し分かりにくいという声もありました。チェックインの締め切りが早いことと、現地払いが現金のみであることは必ず覚えておいてください(詳しくは末尾の表に)。
● 人目を気にせず温泉に入りたい人
● 強羅周辺だけをゆっくり回りたい人
● 夕方早めに宿へ入る予定の人
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箱根ホテル 箱根湯本駅からバス1本、全室から芦ノ湖
芦ノ湖のほとりに建つ全48室のホテルで、クチコミは4.48(685件)。箱根湯本駅から箱根登山バス(箱根町港行き)で約40分、「箱根ホテル前」で降ります。いちばんの魅力は、乗り換えなしで着けて、全室がレイクビューなことです。部屋で湖を眺めているだけで、観光に出かけたのと同じくらい満たされます。
温泉は「芦ノ湖の湯」と「大観の湯」の2つの浴室を男女入れ替えで使います。夕食も朝食もレストランです。楽天トラベルの「バリアフリー対応」欄に載っているのは貸出用車椅子のみで、バリアフリールームの記載はありません。車椅子で泊まる場合は、予約前に部屋と浴室の造りを電話で確かめてください。
● 乗り換えを1回でも減らしたい人
● 観光より部屋でくつろぎたい人
● 2泊目を湖畔で過ごしたい人
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水の音(共立リゾート) 小涌谷駅から無料送迎、湯めぐりは館内で
全87室、クチコミ4.54(2,352件)の温泉宿です。箱根登山鉄道の小涌谷駅から無料送迎で約5分。決定的なのは、宮ノ下温泉と小涌谷温泉の2種の源泉を、13種の湯処で楽しめることです。無料の貸切風呂もあるので、外へ出かけない日も温泉で過ごせます。
「バリアフリー対応」欄には、車椅子可、貸出用車椅子、バリアフリールーム、バリアフリー用トイレの記載があります。気になる点も挙げておきます。夕食の時間は選べず、チェックイン時の先着順で決まります。クチコミには、送迎車の時刻表がなく、早めにラウンジで待つ必要があったという声もありました。
● 駅から宿まで一歩も坂を歩きたくない人
● 館内だけで温泉を満喫したい人
● 車椅子の家族と温泉を楽しみたい人
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予約したあと宿に伝えておきたいこと
予約したら、電話を一本。これだけで旅の質が変わります。
● 車なしで、電車とバスで向かいます
● 到着は○時ごろの予定です
● 杖を使うので、段差の少ない部屋が希望です
● 車椅子を借りたいです
● 荷物を運ぶのを手伝ってほしいです
宿のスタッフはこうした相談に慣れています。
移動手段と持ち物で旅の疲れは半分になる
移動の基本は、箱根湯本駅まで電車で来て、あとは箱根フリーパスで登山電車、ケーブルカー、ロープウェイ、バスを乗り継ぐ方法です。大きな荷物は駅で宿へ預けてしまえば、観光は手ぶらで回れます。
- 歩き慣れた靴 石段や坂で足が疲れにくい
- 小さめのリュック 両手が空いて手すりをつかめる
- 折りたたみ傘 山の天気は変わりやすい
- 羽織るもの 朝晩や標高の高い場所で冷える
- モバイルバッテリー 乗換案内を使い続けられる
- 現金 現地で現金払いの宿がある
よくある質問
Q. 車なしで大涌谷まで行くのはきついですか
A. ロープウェイの大涌谷駅を降りてすぐ、くろたまご館があるので、ここまでならほとんど歩きません。きついのは600m先の玉子茶屋まで歩く場合です。強羅や小涌谷に泊まれば、ロープウェイ乗り場にも近くなります。
Q. 雨の日はどこへ行けばいいですか
A. 屋内の美術館が向いています。岡田美術館はバス停「小涌園」を降りてすぐ、ポーラ美術館は強羅駅から無料送迎バスで約8分です。水の音(共立リゾート)のように館内で湯めぐりができる宿なら、宿で過ごす時間そのものが楽しみになります。
Q. 車椅子でも泊まれる宿はありますか
A. 箱根湯本温泉 湯本富士屋ホテルと水の音(共立リゾート)は、楽天トラベルの設備欄にバリアフリールームと貸出用車椅子の記載があります。バリアフリールームは客室タイプのひとつなので、希望日に空いているとは限りません。日程が決まったら早めに空室を確かめてください。
Q. 芦ノ湖は日帰りでも行けますか
A. 行けますが、箱根湯本駅からバスで35〜40分かかり、往復すると1時間以上は乗り物に座っていることになります。箱根ホテルのように湖畔に泊まれば、移動は片道だけで済みます。
Q. スーツケースを持って電車やバスに乗れますか
A. 乗れますが、登山電車やバスは混み合うことがあります。箱根湯本駅構内の「箱根キャリーサービス」で宿へ送れば、身軽に観光できます。温泉ホテル強羅館のように荷物を自分で運ぶ宿もあるので、なおさら便利です。
出かける前に確認しておきたい注意事項
楽しい旅にするために、ここだけは目を通しておいてください。
| 対象 | 内容 |
|---|---|
| 4宿共通 | 入湯税150円(1人1泊)が宿泊料金とは別にかかります(水の音は13歳以上)。そのほかの税や料金は予約画面の料金内訳で確認してください |
| 温泉ホテル強羅館 | 最終チェックインは17時、夕食は18時開始。現地払いは現金のみです |
| 水の音(共立リゾート) | 食事は2部制で、時間はチェックイン時の先着順。駐車場は1泊1,500円です |
| 箱根湯本温泉 湯本富士屋ホテル | 3歳〜未就学児の添い寝は、施設使用料2,000円が別にかかります |
| 箱根キャリーサービス | オンライン予約は箱根湯本駅から宿への片道のみです |
| 4宿共通 | 設備の対応範囲は施設ごとに異なるため、予約前に宿へ直接確認してください |
車がなくても、箱根はちゃんと楽しめます
車がないことは、箱根をあきらめる理由にはなりません。きつくなるかどうかは、駅を降りてから宿の玄関までの道のりで決まります。
そこさえ押さえれば、登山電車の車窓も、ロープウェイから見下ろす噴煙も、運転していたら見られない景色になります。
まずは泊まる宿をひとつ決めてください。行ける場所は、そこから自然に決まっていきます。
夕方、窓の外が暗くなるころには、もう温泉につかっている。車なしの箱根は、そんな旅になります。
※部屋タイプ、設備、料金、アクティビティ内容、送迎条件は変更されることがあります。予約前に最新情報をご確認ください。



