朝食はいつものW-ソフトとビフィズス菌SP株を2カップ、それにゆで枝豆を食べた。花が庭の家庭菜園で収穫した青豆だ。ふっくらして、旨かった。
「もっと食べたい」と言ったら、なぜかめちゃめちゃよろこんでいた。
「夕食はなにがいい?」と訊ねるから、
「流し素麺がいいな」と答えたら、
「了解」
目の前にいる妻に妙なスイッチが入った。
悪い予感がする。
花ちゃんはすぐに着替えだし、裏山へ竹を探しにいくと言い出した。
「いい竹あるとこ、知ってるから」
「いやいや、その本格的なのじゃなくて、うちに流し素麺のマシーンがあるから」
「あれは“回し素麺”でしょ?流し素麺じゃないよ」
既にベランダに出て登山靴の紐を結んでおり、カーペンターパンツのポケットに折りたたみノコギリを装着し、背中にアケビの蔓で編んだ籠を背負っている。
さすが山育ちだけはある。出で立ちが熟練マタギの如し。
「行ってくる。わたし、鍵持ってるからアレクス、出かけるときは鍵かけていってね。じゃ、夕食の流し素麺に期待してて!」
「ま、待ちなさい。竹はいいから。な、素麺は回るのでいいから」
「ウィー!ヒャッホー!!」
おさるさんは雄叫びをあげて、行ってしまった。
朝から呆然として、裏山を駆け登る麦わら帽をかぶった妻の後ろ姿を見送る。
コーヒーをまだいれてもらっていなかったので、豆をグラインダーで挽いた。
毎日、退屈しない。ぼくはいい嫁をもらった。
