事業を円滑に運ぶには、一にも二にも人だと考えている。だから現場に立ち、或いは率先してきつい仕事を引き受ける。そうやってはじめて本音に近い声を聴くことができると思う。まず、人だからね。職場の空気を新鮮に保つのは重要だ。ぼくだけ不都合を知らなかったということでは済まされない。

しかし、ぼく自身がしあわせでないと結局よく仕事はできない。奥さんに疑われたままでは、家庭がうまく回らない。

今夜、ぼくは丸坊主になった。

Tシャツをまくりあげ、着ているものを脱がせようとしたら「いや」と花がふくれた。やはりけろけろけろっぴは「No, No, Tシャツ」だった。

「いや。したくない」

「どうして?ぼくがなにかしたか?」

「した。浮気してる」

「してない。するはずがない」

「知ってるんだから」

「なにを?」

エキセントリックに花がわめいた。「秘書って言うけど、寝たんでしょ。何回寝たの、わたしが帰ってくるまで恋人だったのは、あの人なんでしょう!!」

枕につっぷして泣く。

あまりに泣くから、「どうしたら、ぼくを信じてくれる。花の言うとおりにする」と言った。そうしたら花が「ハゲになったら信じる」と泣きながら答えた。ぼくはすぐに洗面所へ行き、バリカンで髪をそり落とした。

花は坊主頭のぼくを見上げて唖然とし、それからしゃっくりが止まらなくなった。

「ぼくはスタッフに手は出さない」

内心、ツナちゃんと関係を持たなかったことに安堵していた。花はぼくの過去を許さないし、いっしょにいても不安でたまらないのだ。花は幼少期に母親を失い、継母との関係がうまくいかず家を離れ、父の営む山の製材所で暮らしていた。

たぶん今の花にとっては、ぼくが唯一の家族だ。挨拶に出向くために花の父親へ幾度も電話をかけるのだが出てもらえず、手紙を書いても未開封のまま送り返されてくる。

問題は多々ある。とりあえず当分、スキンヘッド。