テーブルの上に
一個のリンゴがある

私はリンゴに問いかける
 お前はなぜ赤い

リンゴは答える
 私は赤くない

 赤いではないか
 断じて赤くない
不毛な言い合いが続く

しばらくして
リンゴが問いかけてくる

 そもそもお前が見ている赤と
 他人が見ている赤が同じだと
 どうして言えるのか
 確認のしようがないではないか

私は答える

 お前のその色を赤だと言わなければ
 その色を他人に伝えることは
 できなくなるのだ

さらにリンゴは言う

 それでは赤というのは
 人間が勝手に決めた約束事ではないか
 そんな人間の勝手な約束事に
 私が従う義理はない

そしてリンゴは言い放つ

 私の色は私色だ
 他の何物でもない色だ
 他人に決められるようなものではない

何言えなくなった私は
有無を言わさず
リンゴを切って食べてしまった